ボストン美術館の至宝展

 急遽、午後私用で都内に出ることになった。四時半くらいに都内某所で着き用事は30分足らずで済んだので、そうそう都内に出ることもないので、上野まで足を運んだ。
ボストン美術館の至宝展-東西の名品、珠玉のコレクション|東京都美術館
 ボストン美術館は、西洋美術の膨大なコレクションがあり、さらに日本の美術品の所蔵点数も多いので、けっこうな頻度で企画展が行われる。最近でも2014年に世田谷美術館で「華麗なるジャポニズム展」を観に行ってもいる。モネの大作「ラ・ジャポネーズ」も観たのは壮観だった。
 名古屋には提携している名古屋ボストン美術館があり、去年だか一昨年だったか、淡路に行った帰りに寄っている。ルノワールの「ブージヴァルのダンス」を観た。
 そういう意味では日本人にとっても大変馴染みのある海外美術館だ。今回は、ボストン美術館にコレクションを寄贈して、美術館の発展に貢献した篤志家、コレクターたちにスポットをあてた企画展だという。まあ、それはそれで興味深いのだろうが、所詮アメリカ資本主義発展期の大金持ち、ボストン財界の名家の人々のお話なので、あんまり関心はない。それよりも今回展示される作品、それもフランス絵画の数々を観たいというのが率直な思い。
 とはいえボストン美術館の日本美術コレクションの基礎を築いたのは、モース、フェノロサ岡倉天心となると、ちょっとは興味を惹かれる。モースはあの大森貝塚のモースだし、フェノロサ岡倉天心とともに日本の古美術を再発見した人。まあいずれもお雇い外国人で、それなりに権限もあっただろうから、日本中回って買い占め(もとい)、大人買いしていったんだろうね。
 まあその辺は置いといて、気に入った作品をいくつか。
ゴッホ:「子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人>

 今回の企画展の目玉であろう、「郵便配達夫ジョゼフ・ルーラン」とともに夫婦揃っての出品というものらしい。夫人の絵はアルルでの例の耳切事件の後に描かれたということらしい。ここにはゴッホのオリジナリティ、印象主義表現主義を加えたようなあの厚塗り表現はなく、全体に平面的な、そうゴーギャンの影響が大だ。装飾的な背景などもゴーギャンやそのフォロワーたち、ナビ派のそれに近い。さらにいえば、浮世絵の影響も大きい。
 前年に描かれた夫の方の絵も手が大きく強調されているところなんかが、明らかに浮世絵の影響なのかなとか思ったりもするが、夫人の絵とではなんか全く別人の作品のようにも思えたりもする。ゴッホにとってゴーギャンは憧れだったのか、あるいはこの夫人の絵を描くことでゴーギャン超えを狙ったのか。いずれにしろとても魅力的な絵ではあると思う。
シスレー:「サン=マメスのラ・クロワ=ブランシュ」>

 凡庸な印象派の画家シスレー、しかしその凡庸さ、一途に風景画を描き通したシスレーは、愛してやまない画家の一人だ。印象派の絵を家に飾るとしたら、ピサロシスレーと常々思っている。この絵も構図、色使い、ほぼ完璧という感想。細い木の影を見ると、岸田劉生を思い出したりもする。彼もまたシスレー等のこういう絵に随分触発されたのかと、適当に思ったりもする。
<ジョン・シンガー・サージェント「フィスク・ウォレン夫人と娘レイチェル」

 ただただ見事としか言いようがない。ドレスの表現は印象派的、正面を向く夫人の顔はちょっとロココっぽい雰囲気、母親の肩にあごを乗せた娘の表現は現代的な感じで、売れっ子肖像画家でもあったサージェントの真骨頂のようにも思う。まあ全部門外漢の感想。