テデスキ・トラックス・バンドのライブに行ってきた

 先週の土曜日、東京ドームシティ・ホールでのライブに行ってきた。このバンドのライブは単独での初来日の渋谷公会堂、2回目の人見講堂、3回目の武道館と、なんだかんだで全部行っている。こういうアーティストは多分初めて。

 どこかそれほどいいかというと、とにかくライブ演奏のクオリティの高さに尽きる。12人編成のビッグバンドだが、やはり主役はデレク・トラックスのスライドギター。もう神技に近いと思う。手弾きなんだけど、どんな親指してるんだろうと思ったりもする。

 手弾きのギタリストは沢山いるし、まあ古くはジャズのウェス・モンゴメリーなんかもそうだ。ロック系ではニルス・ロフグレンなんかがお気に入り。ウェスもそうだが、ピックではなく手弾はちょっと柔らかい音になるんだと思う。まあニルスはサム・ピック使っているからけっこうソリッドだけど。

 でもってデレク・トラックスはというと基本はやっぱり柔らかい音なんだが、柔和というのではない。いかにもサザン・ロック風な音、やっぱりどこか出自のオールマン・ブラザースっぽい。そのへんが好きななんだが。

 このグループは、デレクとスーザン・テデスキ夫婦の双頭バンドなんだが、そこにデレクが以前バンドを組んでいたデレク・トラックス・バンドのメンバーを中心にとにかく芸達者なメンバーで構成されている。ギター2、ベース、キーボード、ドラム2、バック・コーラス3、さらにホーン隊としてサックス、トランペット、トロンボーンという編成である。デレク・トラックスサイドギターとスーザン・テデスキのボーカルをメインにしながら、そこに重厚なグループサウンドが絡む。レコードを凌駕するようなパフォーマンスが堪能できる。

 結局のところ、ライブパフォーマンスがすべてなんだと思う。かってのジャズメンたちも秀逸なスタジオ・レコーディングとは別に、何百、何千という数のライブを高いクオリティでこなしていた。得てしてスタジオよりも素晴らしい名演奏を繰り広げてきた。さらにいえばスタジオ・レコーディングさえ、ある意味スタジオ・ライブの様相であったりした訳だ。

 熟練のテクニックに裏打ちされた瞬間としてのパフォーマンスというライブ演奏の本質部分が毎回展開されている。それを味わえるところがこのバンドのライブを繰り返し観る理由なんだと思う。

 このグループの演奏には、かってエリック・ドルフィーが言ったという言葉がよく似合うような気がする。

When you hear music,after it's over,it's gone in the air. You can never capture it again.  

  ライブのレビューはこの方のブログが参考になった。

 セット・リストもそのまま引用させていただく。

1. Anyday(デレク&ザ・ドミノス

2. Laugh About It(アルバム:『Let Me Get By』)

3. Hard Case(アルバム:『Signs』)

4. Don’t Drift Away(アルバム:『Made Up Mind』)

5. Get What You Deserve(デレク・トラックス・バンド『Already Free』)

6. I’m Gonna Be There(アルバム:『Signs』)

7. Sweet Inspiration(デレク・トラックス・バンド『Already Free』)

8. Don’t Keep Me Wonderin'(オールマン・ブラザーズ・バンド

9. Let Me Get By(アルバム:『Let Me Get By』)

10.Just As Strange(アルバム:『Let Me Get By』)

11.How Blue Can You Get(B.B.キング

12.Idle Wind(アルバム:『Made Up Mind』)

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<アンコール>

13.Shame(アルバム:『Signs』)

14.Space Captain(ジョー・コッカー

  残念ながら大好きな「ミッドナイト・ハーレム」の演奏はなかった。これは大阪、名古屋とライブを続け、東京での3回の公演の2日目ということで、少しセットを変えてきたからなのかもしれない。アンコール曲でもいつものスティービー・ワンダーの「Uptight」でも、スライの「I Want To Take You Higher 」でもなかったし、なにやら3日目にはやったジョー・コッカー仕様の「With A Little Help From My Friends」でもなかった。もちろんジョー・コッカーの「Space Captain」はよくアンコールでやるということは聞いていたので、生で聴けたのはラッキーだと思う。

 あと、ライブでは定番である「Bound For Glory 」、「 Made Up Mind 」もなかったのもレアといえばレア。以前、多分2回目か3回目のライブで聴いた「Idol Wind」が聴けたのも嬉しかった。

 メンバーはウィキペディアにあったので引用しておく。

テデスキ・トラックス・バンド - Wikipedia

 このグループの中核メンバーである、キーボードのコフィ・バーブリッジは今年の2月に亡くなったのだという。ゲイブ・ディクソンはその代役として参加しているという。

 また改めてプロフィールを確認すると、デレク・トラックスは1979年生まれで今年40歳となる。天才ギター小僧も立派な中年オヤジになるということ。そしてスーザン・テデスキは1970年生まれ、姉さん女房とは聞いていたが9歳も上だとは。49歳になるというが、美貌も含めライブスタイルはまったく変わらない。

 あと、スーザン・テデスキの英語のウィキペディアをみると、二人の間には子どもが二人いるとか。長男はチャールズというのだが、その名はチャーリー・パーカーチャーリー・クリスチャンからとったのだとか。そして長女の方はなんとネイマという。もちろんコルトレーンの最初の妻、あのネイマからである。二人の音楽趣味の広さ、意外とジャズ・ファンであることが垣間見えて、ますます好きなった次第だ。