ミシェル・ルグランが死んだ

 朝、twitterのタイムラインを眺めていたら、フォローしている方のツィート「ミシェル・ルグランさん、ご永眠」にびっくりして、調べていくとすぐに訃報にいきあたった。

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 86歳という年齢からすれば大往生かもしれない。いつか来る訃報なのかもしれない。でも悲しい、ただただ悲しい。自分にとっては20世紀を代表する音楽家、作曲家、編曲家、ピアノ奏者、マルチ・コンポーザーというべき人である。彼に比肩する作曲家で思い浮かべるとしたら、バート・バカラックポール・マッカートニーあたりだろうか。

 ミシェル・ルグランといえば映画音楽、60年代のフランス映画、ジャック・ドゥミとのコンビによる「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」、さらにハリウッドに進出してからも「華麗なる賭け」「思い出の夏」などの名曲。

 さらには50年代からアメリカのジャズ・ミュージシャンとの交流から生まれた洒落っ気があり、情感と抒情生に溢れた都会的なジャズの名曲。ソフィスティケートされたその演奏はビル・エバンスを想起させるが、自分などはエバンスがルグラに影響されたのではないかと思ったりもしていた。一言でいえばエスプリ・ジャズ。

 映画音楽の部分ではその美しいメロディラインからフランシス・レイとともに語られることも多かったが、トータルな才能はルグランが凌駕していたと思う。フランシス・レイは美しいメロディを口ずさむアコーディオン弾き、ルグランは総合芸術家みたいな感じだろうか。けっしてレイを悪くいうつもりなどはない。そういえば確かフランシス・レイも昨年鬼籍に入った。20世紀を彩った、美しい調べを作り出した人々がみんな亡くなっていく。

 ルグランのジャズで1枚選ぶとすればなんだろう。やっぱり初期のこのアルバムじゃないかと思う。1958年、26歳のルグランが新婚旅行でアメリカに行った際に、アメリカのトップ・プレイヤーと繰り広げたビッグ・バンド・ジャズ。マイルス・ディヴィス、コルトレーンハンク・ジョーンズアート・ファーマーポール・チェンバースそしてビル・エヴァンス綺羅星のごとくである。

 ディジー・ガレスピーのアレンジをしたフランスの才気溢れるミュージシャンを当時の売れっ子ジャズメンが歓迎している様子が手にとるように伝わってくる。 

ルグラン・ジャズ+3

ルグラン・ジャズ+3

 

  当然、持っていると思ってCD棚を探したのだが見つからない。どこかに紛れてしまったのだろうか。試しにルグランで手持ちはと出してみるとこの4枚が見つかった。今日はずっとこれを聴いているか。

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 あとはYouTubeで懐かしい映画のシーンと音楽に浸ることにする。


Les Demoiselles de Rochefort -- Scène d'ouverture


2 l'arrivée des camionneurs


Les Demoiselles de Rochefort

 そして最後にこの甘く切ない調べ。自分はこの映画をもう久しく観ていない。というのはこの映画のセンチメンタリズムを許容できなくなっているのではないかとそんな気がしているから。この映画に感動した時の自分の若さ、甘さ、稚拙さ、そういう部分がもうとっくに消え失せてしまっているような、そんな気がするからだ。


Summer of '42( おもいでの夏 )- Michel Legrand