「帰ってきたヒトラー」

 「帰ってきたヒトラー」をDVDレンタルで観る。現代に蘇ったアルドフ・ヒトラー、本人はいたく真面目に自己主張するのだが、周囲は彼をソックリに真似た芸人として扱う。彼は70年前とまったく変わらぬ主張をしているだけなのに、それが現代ドイツにあっては大うけにうけてしまう。さらに民主主義社会の閉塞状況の中で彼のかっての排外的な主張はある種の支持をさえ集めてしまう。現代の先進主義国に流行る右翼的思想、排外主義と人種差別、それらとまったく共時性をもっている。
 彼を商売のネタにしようとするテレビディレクターは彼を恋人の家に連れて行く。そこにはすでに認知症となっている老婆がいるのだが、彼女はヒトラーを見たとたん正気に返ってこう言い放つ。「ここはあんたのいるところじゃない」「あの時も、最初はみんな笑っていたんだ」と。
 多分我々は、石原慎太郎安倍晋三を、橋下や大阪維新のことを最初笑っていた。でも今は笑えるような状況じゃなくなりつつあるような気もしている。同じようにアメリカ国民はドナルド・トランプのことを笑っていた。まさかあのアホな成金不動産屋芸人が大統領選に出るなんて思いもいなかった。その男が今大統領として君臨することになっているのだ。
「最初はみんな笑っていたんだ」