「私は二歳」

私は二歳 [DVD]

私は二歳 [DVD]

  • 発売日: 2015/10/30
  • メディア: DVD
 BSで以前録画しておいた市川崑監督の『私は二歳』を観る。原作はいわずと知れた『育児の百科』の著者松田道夫による岩波新書『私は二歳』である。赤ちゃんの視点から幼児の成長とてんてこ舞いとなる親のことを描いた名著である。私も『育児の百科』とともに子育ての最中に読んだ記憶がある。これを昭和の時代の中でのライフサイクル、若い夫婦のやりとり、団地生活といった風俗面を取り入れて描いている。時代性と共に、子育ての普遍性をより強く感じる面白い映画だと思った。
 主演の山本富士子は美しく艶かしさもある。ちょっと生活感に欠けるかなという位に美人で今風にいえばエロっぽい。彼女の演技を観ているうちに思わず団地妻という言葉を思い出してしまった。あの言葉をロマンポルノの一ジャンルに定着させた日活の監督、脚本家たちの中には、この映画の山本富士子のイメージがあったのではないかとさえ思える。だんな役は船越英二も当時は二枚目だったのだと思う。少しユーモロラスな二枚目半という感じか。2時間ドラマの帝王然としている船越英一郎の父親といっても今では伝わらないかもしれない。
 演出面ではカットバックでアップ、ハーフショットで話者を交互に写す会話シーンも懐かしい表現だ。当時は斬新だったかもしれない。多分この頃にはヌーベルヴァーグゴダール等の映画で盛んにこの表現が多用されていたようにも思う。そしてこの映画価値減じてないし、翻案すれば今でもイケるとも思う。ひょっとすると市川昆の最高傑作かもしれない。