100分de名著「野生の思考」テキストからのメモ

● レヴィ・ストロースの反「歴史主義」
1.唯物史観あるいはソヴィエト流歴史主義
「歴史」は客観的に進行していき、その客観的な歴史の運動に人間の実践を客観的に合せ
ていくのがソヴィエト流の考え方。
2.サルトル実存主義
 それに対してサルトル実存主義の立場から人間の主体性を論じた。
人間の主体的な決定性とそれを支える個人の自由によらなければ、「歴史」は展開しない。
3.サルトルの未開社会観
 未開社会には「分析的理性」しかなく、「弁証法的理性」、すなわち世界を歴史的に動かしていくような思考方法はない。同様に未開社会は同じようなことを「習俗」として繰り返している社会=実践的惰性体である。
4.レヴィ・ストロースの「歴史」観
 レヴィ・ストロースは、19世紀から20世紀半ばに至るまでの政治思想は、「歴史」というものをめぐる合理的な思想であるように見えながら、実際には自身の内部に閉塞した西欧の神話であることを明らかにしようとした。
 つまり西欧的世界が自分自身の中に自閉して、その自閉的な意識を表現したものが「歴史」である。

● レヴィ・ストロース構造主義の着想
 ・人間の思考は自然が作り上げたものであり、そのメカニズムは宇宙の全体運動の中から地球が生まれ、地球に生命が発生し、生命の中から脳がつくられ、そこに精神が出現する。その精神には独特の秩序が備わっている。
  人間の精神の秩序と自然界の秩序には相似的な連続性とそれを隔てる非連続性があり、この連続性と非連続性を構造という概念によって同時に捉えることができないかとレヴィ・ストロースは考えた。

● ヤコブソンの情報理論の取り込み
 ・言語を含むあらゆるコミュニケーションには発信者と受信者がいて、共通の「コード」(符号)を使って「メッセージ」を伝達する。それがコミュニケーションの基本となる。
  ヤコブソンはこの「コミュニケーション」の概念を言語だけでなく、植物や動物を含む自然界や宇宙の進化・変容にまで広げることができないかと考えた、物理学でいう「量子」の過程まで一種のコミュニケーションとして理解した。こうしたコミュニケーションの全体系の中で人間の言語を位置づけた。

● レヴィ・ストロースの「親族の基本構造
 ・レヴィ・ストロースは「親族」というものをコミュニケーションの一形態として考え、集団ごとに「記号」としての女性が「交換」され移動していく。その過程を通じて、共同体がお互いの間にコミュニケーションを開くのが婚姻ではないか。さらに親族構造は婚姻を規制している。
  女性を記号として、結婚のコードを使って、集団にメッセージが伝達される、それが親族構造の意味である。

● ヤコブソンの詩的言語観
 ・ヤコブソンは言語学詩学を基にしていると考えた。これはロシアで発達した構造言語学の基本的な姿勢であり、「隠喩」(メタファー)や「換喩」(メトニミー)を通じて、全体が共鳴し合っている小宇宙をつくるのが詩であり、そこでは音響と意味が一体となって響きあっている。これが人間の言語のベースであり、日常言語が言語の基礎ではないという考えとなっている。

● レヴィ・ストロースの言語観
 ・レヴィ・ストロースジャン・ジャック・ルソーの『言語期限論』に影響を受けた。それは、人間の言語は最初、詩として生まれ、人間は詩的な言語をしゃべり合い、伝達し合い、それがのちに日常言語に変化していったというもの。人間の精神の根源で動いている構造に最も近い表現形態は、詩であり、音楽であり、神話だと、レヴィ・ストロースは考察した。

● レヴィ・ストロースの思考法
 ・レヴィ・ストロースは講義形式によって、口頭で自分の考えをまとめていく方法を好み、あらかじめ用意した原稿を読み上げるのではなく、簡単なメモや資料を手にしながら、半ば即興で思考しながら講義していった。

● 「双子は鳥である」
 ・レヴィ・ストロースは、双子は人間と霊の中間存在であり、そのことによって大地と天の中間状態を生活場所とする鳥と象徴的に同じ位置に立つことをになると分析する。双子と鳥は相似的であるのではなく、比喩の関係で結ばれている。
  それゆえ「双子は鳥」であるという表現は、世界に対する分類思考から生まれたものであり、分類は相関と対立のシステムとして人間の言語の基礎をなす原理とつながっている。