横浜美術館メアリー・カサット展

 35年ぶりの回顧展だという。
メアリー・カサット展 / 2016年6月25日(土)~9月11日(日) / 横浜美術館
 メアリー・カサットは、初期のパリのアメリカ人、印象派アメリカ女流画家だけにとどまらず、アメリカに印象派を紹介した功績もあげられる。印象派の女流画家といえばベルト・モリゾの名があがるが、モリゾとカサットは1歳違い。カサットはモリゾの絵も購入してその筆致を研究したともいわれている。
 テレビを引退してから世界の美術館巡りをして美術ガイドを数冊執筆するまでにいたった才人大橋巨泉に言わせると、「美人度では負けても、画家としての腕は、モリゾに勝っていると思います」と絶賛している。画力はモリゾより上というのに素直に賛成はできないが、ドガに師事したというカサットは確かにデッサン力、構図への意匠を感じさせる作品が多い。マネのモデルをしていたベルト・モリゾはマネから多大な影響を受けている。ドガとマネ、ある意味対局的ともいうべき意匠の違いは、カサットとモリゾの違いにも確かに影響があるかもしれない。とはいえ後は好きか嫌いかという問題になる。
 カサットは浮世絵の収集でも有名で、自らも多色刷りの連作版画をものにしている。浮世絵の影響は大胆で計算された意図ある構図の作品が幾つもある。そうした新しい構図への実験的な取り組みは、なんとなくカイユボットを連想させるところもある。彼もまた浮世絵からの影響で、大胆で突飛な、印象から来る誇張された構図の作品を幾つも描いている。
<浜辺で遊ぶ子どもたち>

 第8回印象派展にも出品された作品。二人の子どもを大きくクローズアップさせ。背景をやや省略気味に描く。印象派らしい作品、どことなくルノワールを想起させるものが。
<家族>

 やや古典手的な手法、ピラミッド型に配置された人物、母子の傍らに女子だけが妙に平面的に描かれているなどやや不思議な趣がある。

<果実をとろうとする子ども>

 「家族」同様、すでに印象派とは決別したような感じもする。どちらかというと象徴性を帯び、少しだけナビ派的な雰囲気や装飾性も見て取れるような気がもしないでもない。

<沐浴する女性>

 浮世絵の影響で多色刷りを実験的に行った貴重な作品群の一つ。美しい絵だと思う