障害者施設での殺傷事件

 とんでもない事件が起きた。
 朝一番でtwitterに流れてきたのがこれ。

施設に刃物男 19人心肺停止 | 2016年7月26日(火) - Yahoo!ニュース

 19人心肺停止というのが、今一つの呑み込めないというか。
 慌てて朝のニュースショーを繰り返すが、情報錯綜しているみたいで、相模原の障害者施設に男が侵入して、障害者を次々に襲ったという情報が繰り返し流されるだけ。1日経って事件の全貌が報道される。

重度障害者、標的か 相模原19人刺殺、容疑者「意思疎通できぬ人刺した」:朝日新聞デジタル

 相模原市緑区千木良(ちぎら)の障害者施設「津久井やまゆり園」で26日未明、刃物を持った男が入所者らを襲い、19人が死亡、26人がけがをした事件で、神奈川県警に殺人未遂などの容疑で逮捕された元職員の植松聖(さとし)容疑者(26)が、「意思の疎通ができない人たちをナイフで刺した」と供述していることが県ログイン前の続き警への取材でわかった。県警は植松容疑者が身勝手な動機から、重度の障害者を狙って事件を起こしたとみて調べる。県警は27日、容疑を殺人に切り替え、横浜地検に送検する。▼2面=凶行、予兆あった 9面=海外も速報 12面=社説 38面=無抵抗の人をなぜ 39面=部屋から部屋へ
 警察庁によると、平成元(1989)年以降、最も死者の数が多い殺人事件となった。消防や県などによると、亡くなったのはいずれも入所者で、41〜67歳の男性9人と、19〜70歳の女性10人。けが人のうち、重傷者が13人という。けが人には職員2人も含まれていた。
 植松容疑者の逮捕容疑は、26日午前2時ごろ、同園で入所者の女性(19)を刺して殺害しようとしたというもの。県警の調べに対して容疑を認め、「障害者なんていなくなればいい」とも話しているという。
 植松容疑者は東居住棟の1階東側の窓をハンマーで割って施設に侵入し、結束バンドを使って施設職員を拘束。所持していた包丁やナイフを使い、次々に入所者を刺したという。
 津久井署には午前3時ごろ1人で出頭。持参したかばんには、血が付いた刃物3本が入っていた。また、乗ってきた車の後部座席からは、少量の血液が付いた結束バンドも見つかった。
 同園は県が設置し、指定管理者である社会福祉法人かながわ共同会が運営。神奈川県北西部にあり、東京都や山梨県との境に近い。県などによると、知的障害者ら149人が長期で入所中。敷地は3万890平方メートル、建物は延べ床面積約1万1900平方メートル。2階建ての居住棟が東西に2棟あり、20人ずつが「ホーム」と呼ばれるエリアに分かれて暮らしていた。
 ■2月に施設退職
 捜査関係者によると、植松容疑者は今年2月15日、衆院議長公邸を訪ね、土下座で頼み込んだうえで大島理森議長にあてた手紙を渡していた。手紙は「私は障害者総勢470名を抹殺することができる」として、今回の事件を示唆するかのような内容だった。
 手紙は「標的」にやまゆり園を含む2施設を挙げ、「作戦」として、夜間に事件を起こすことや結束バンドで職員の動きを封じること、事件後は自首することなどを記していた。いずれも事件時の実際の行動と同様の内容だ。
 手紙では障害者について「車イスに一生縛られている気の毒な利用者も多く存在」するとし、「私の目標は(複数の障害がある)重複障害者の方が家庭内での生活、及び社会的活動が極めて困難な場合、保護者の同意を得て安楽死できる世界です」などと自分勝手な考えを示していた。
 神奈川県や相模原市によると、植松容疑者は2012年12月から同園に勤務していたが、今年2月18日、園の関係者に「重度障害者の大量殺人は、日本国の指示があれば、いつでも実行できる」などと話したため、話し合ったうえで19日に退職願を提出してもらった。市は精神保健福祉法に基づいて植松容疑者を措置入院させた。
 入院中には植松容疑者の尿と血液の検査から大麻使用が判明。その後、症状が改善されたとして、家族と同居することを条件に、3月2日に医師の判断で退院させていたという。退院を受け、県警のアドバイスで4月、同園の防犯カメラが16台増設されたという。

 最初に感じたことは、19人もの人を短時間に殺害するという計画性、その計画を実行する意思の強さといったことだ。犯人はなんの躊躇もなく犯行に及んでいる。わずか45分足らずでこれだけの犯罪をしでかしている。しかし伝わってる情報ではほとんど精神的に病んだ若者の強行としか思えない。
 次に思ったのは、介護を必要とする障害者や高齢者を「いなくなればいい」という犯人の言葉に同調するような風潮がでてくるのが怖いということ。その行き着く先にあるのは、役に立たない弱者にコストをかけること不要。社会的に処分すべきだという究極の優生思想であり、それが国家的に実践されたのはナチスドイツだった。
 あのアウシュビッツに象徴されるユダヤ人の大量殺傷、ホロコーストは最初、障害者への処分から始まったと確かNHKのドキュメンタリーで観た。
http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/summary/2015-08/25.html
T4作戦 - Wikipedia
 
 そして今日一日はなにかずっと喪に服していたい気分だった。被害に遭った人々のために祈りたいとも思った。それは身近なかな族に障害者がいるという部分ももちろんある。自分たちが精一杯生活してきたことを総て否定されるような、いきなりハンマーで叩かれるような衝撃でもあり、ある意味思考停止状態でもあった。
 19人の無垢な命が一瞬の強行により奪われたということ。それはもうほとんどテロ行為にも等しく、事件としては国際的にも関心を呼ぶようなそういうレベルの事件だとも思った。現に各国でもトップニュースとして報道されているとも聞く。そういう意味では、バラエティとかも自粛してもいいのではと思った。19人も命が奪われているのだ。どうしてこんな事件が起きたのか、もっと考えて問いかけるべきだとも思った。
 重度障碍者を多数殺害するなんてことは、先進国にあっては絶対に起きてはいけないことだ。社会的弱者である障害者を処分するといった思想はあってはならないという社会通念が基底にあるのが文明の到達点のはずだ。だから欧米でも衝撃的に報じられている。戦後の欧米社会は、アウシュビッツへの反省を出発点にしている。なぜジェノサイドが起きてしまったのか、なぜそれを止めることができなかったのか、と。
 翻って日本にはそういう負の歴史を出発点とする視点があるのか、そんなことを考えてみたりする。歴史を改竄したり、多民族の存在を否定するような汚い言葉が公然と飛び交っている。今回の強行にはそうしたものに影響を受けた部分はないのだろうか。憎悪を増幅させていったということはないのかどうか。
 社会から疎外された者が、政治的、経済的強者や権威に心理的に同化して、より弱い者、弱者に対して一方的な暴力を振るう。そうしたことのよりグロテスクに具現化されたのが今回の事件なのではないかとも思った。
 報道される犯人のプロフィールからはほぼ異常な病理を思わせる部分が多々ある。単なる躁鬱とは異なる、また薬物による影響とも異なる病理、分裂症的なものを感じさせる。おそらく今後はその責任能力も問題視されるだろうし、周到な計画性と手際の良さ、それらを支配するものが異常な精神との繋がりにも争点となってくるかもしれない。
 知的障害者の権利擁護と政策提言を行う組織、全国手をつなぐ育成連合会がこの事件について声明を発表している。総ての共感を込めて引用させていただく。

一般社団法人全国手をつなぐ育成会連合会について | 全国手をつなぐ育成会連合会全国手をつなぐ育成会連合会
http://zen-iku.jp/wp-content/uploads/2016/07/160727stmt_ruby.pdf
 津久井やまゆり園の事件について

(障害のあるみなさんへ)
7月26日に、神奈川県にある「津久井やまゆり園」という施設で、
障害のある人たち19人が 殺される事件が 起きました。
容疑者として逮捕されたのは、施設で働いていた男性でした。
亡くなった方々の ご冥福をお祈りするとともに、そのご家族には お悔やみ申し上げます。
また、けがをされた方々が 一日でも早く 回復されることを 願っています。

容疑者は、自分で助けを呼べない人たちを 次々におそい、傷つけ、命をうばいました。
とても残酷で、決して 許せません。
亡くなった人たちのことを思うと、とても悲しく、悔しい思いです。

容疑者は「障害者はいなくなればいい」と 話していたそうです。
みなさんの中には、そのことで 不安に感じる人も たくさんいると思います。
そんなときは、身近な人に 不安な気持ちを 話しましょう。
みなさんの家族や友達、仕事の仲間、支援者は、きっと 話を聞いてくれます。

そして、いつもと同じように 毎日を過ごしましょう。
不安だからといって、生活のしかたを 変える必要は ありません。

障害のある人もない人も、私たちは 一人ひとりが 大切な存在です。
障害があるからといって 誰かに傷つけられたりすることは、あってはなりません。
もし誰かが「障害者はいなくなればいい」なんて言っても、
私たち家族は 全力でみなさんのことを 守ります。
ですから、安心して、堂々と 生きてください。

平成28年7月27日
全国手をつなぐ育成会連合会
会長   久保  厚子