モーリン・オハラ死去

米女優のモーリン・オハラさん死去 ジョン・ウェインらと共演― スポニチ Sponichi Annex 芸能

 95歳、大往生なんだろうが、なにかとても淋しい気分だ。燃えるような赤毛、勝気なアイリッシュ娘。ジョン・フォード作品で、ジョン・ウェインとの共演や、タイロン・パワーとの「長く灰色の線」での共演。いい女優さんだった。モーリン・オハラといえばジョン・ウェインとの夫婦役、町中を巻き込む盛大な夫婦喧嘩。あれは「静かなる男」だったか。あるいはかなり後の「マクリントック」だったか。ちょっとユーモラスで、今のPC的にはアウトな男尊女卑を底流にしたユーモラスなシーンだった。
 田舎の勝気だが可愛らしさのある、一目を引く美人。強い男のパートナーとしてあるときは共に働き、あるときは男の帰りをじっと待つ健気さ。強さと弱さと美しさを兼ね備えた魅力的なキャラクターだった。
 彼女の死につきまとう淋しさの理由は、きっといつもの20世紀が遠くなるという思いとは別に、ジョン・フォードが描いた、あるいはジョン・ウェインが演じた古き良き時代、男は強く優しく、女は逆に優しく、それでいてときに強くて、男は女愛し、女も男を一途に愛し、家族を大事にし、自分の出自に誇りを持ち、そういう伝統的な世界。多分最初から幻のようなものかもしれない、すでに失われてしまっている価値観、そういう世界が永遠に失われてしまうことへの淋しさなのかもしれない。モーリン・オハラはジョン。フォード的世界、ジョン・ウェイン的世界の最後のワンピースだったのではないかと、そんな思いがする。