ブルックリン

ブルックリン [DVD]

ブルックリン [DVD]

  • 発売日: 2017/06/09
  • メディア: DVD
映画『ブルックリン』オフィシャルサイト| 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント
 これもずっと気になっていた映画。1950年代のニューヨーク、ブルックリンにアイルランドからやってきたティーンエイジャーの女の子が仕事や恋、そして一人の女として成長していくお話し。
 最初にいろいろ仕入れた情報では、ブルックリンでの女の子の青春物語みたいなものを想像していた。いわば「ブルックリン物語」の女の子版。この手の映画はある意味みんなフェリーニの「アマルコルド」が大本にあるような気もするのだが、そういうただただ懐古的なお話では全然ありませんでした。
 この映画は田舎から出てきた女の子が都会で健気に生きていくお話し。でも田舎にはいろいろしがらみがあって、都会と田舎、どっちにも幸福があるかもしれない、そこで煩悶するというような物語。どうもイメージとは違い過ぎた。
 主演のシアーシャ・ローナンは美人で聡明なイメージ。演技も上手い。引っ込み思案だけど芯の強い主人公を好演してる。こういう割と静的な感じの役柄は上手そうだが、もっと動的な役柄だとどうだろうか。まだ23歳でこの映画の時は20歳くらいだから、たいへん早熟な女優さんなので、これからが楽しみかもしれない。
 その他思ったこと、最初アイルランドから単身ニューヨークにやって来るというので、戦前の話だと思っていたのだが、それが1950年代というのにちょっとびっくりした。劇中でも主人公がクリスマスに教会で身寄りのないアイルランド移民達持て成すシーンがある。会を催した牧師は老人達を、彼らが橋やビルを建てたという風に表現していた。いわば移民一世なのだろうか。アイルランドではないが、「ゴッド・ファーザー」のイタリア移民の第一世代ドン・コルレオーネと重なるような気がする。
 それからするとこの映画の主人公達はすでにニューヨークに移民社会が成立し、受け入れが整った上でアイルランドからやってくる。なんとなく集団就職組みたいな感じなのかもしれないと思った。
 アイルランド移民で50年代ということもあり、もっとジョン・フォードやジョン・ウエィン的なものも想像したのだが、そこは女性映画なのでまったくイメージされない。劇中で女の子たちが映画の話をする時に「静かなる男」が話題になったりもするのだが。
 アイルランドというのはイギリスの辺境地で、イングランドに収奪される貧しい北国であり、そうした地の女性ということでは、この映画の主人公のような無口で大人しい、芯の強い女性というのが正解なのだろう。全体として静的なイメージそのまま。
 とはいえこっちのプロトタイプなアイルランドの女性というと、これはやっぱりフォード一家のモーリン・オハラなんだよな。赤毛で気の強い女。「静かなる男」や「長い灰色の線」に出てくる女性だな。ああいうイメージでやったら多分、映画は全然別のものになっていたかもしれない。
 さらにいえば相手役の男性エモリー・コーエンはイタリア系移民という設定なんだが、なんだかマーロン・ブランドの劣化版みたいな感じがした。そういやブランドは「ゴッド・ファーザー」のイメージが強いけど、本当は何系なんだろうね。
 映画「ブルックリン」はまあまあ良い映画だとは思う。特に色の使い方が50年代のニューヨークの感じを良く出していたように思う。緑とか茶色、赤を使いながらも全体的にちょっとセピアっぽい感じとか。映像がしっかりしている、場面場面が絵画のように美しいというのは映画の基本なんだけど、そういう点でも及第点以上の映画だ。自分なら最後のクレジットには「アイルランドの女」を流すけどな。ボブ・ジェームスのやつなんかがいいと思う。