就業規則説明

先週、社労のところで改定就業規則の最終打ち合わせ。今回はもろもろ4本の改定ありで都合半年くらい継続して作業してきたのだが、その最終段階まできた。
ほんでもって本日は社員への説明会、これがまたしち面倒くさいことに、従業員別に回を分けて行う。午前中に職制、パート、午後にその他従業員。マチネーかよと心の叫び。
そのたびにほぼ同じことを話す。一回30分くらいで、原稿を見ながらだけど、けっこうかったるい。もっとも三度も同じこと話していると、なんとなく内容もこなれてくる。場数踏むというのは文字通りこういうことなんだろうか。
今回の改正のポイントは4月に改正施行された高年齢者雇用安定法と労働契約法に基づくもの。たぶん多くの会社はここ半年くらい、どこも右往左往してたんじゃないのかなと推測。いやこういうのは既定のことだから、粛々とルーチン的にこなすことなんだろうか。まあ、こっちは素人だから大変なんですけどね。
高年齢者雇用安定法の改正はというと、これまで60歳以上の継続雇用にあたっては、労使協定に基づいて基準を設けることができた。やれ健康だの、技能がどうのみたいなやつですな。この基準の適用が原則駄目になったということ。ようは継続雇用を希望する場合は、みんな65歳まで努めさせなくちゃいけないよということ。
ただし、法の抜け穴じゃないけど、継続雇用者の年齢に応じて何年までは基準を適用してもいいという経過措置もあるという。ようは年金支給年齢までは働かせなさいとそういうことらしいんだけど。

http://www.lcgjapan.com/pdf/lb05289.pdf
<平成25年4月1日から希望者全員の雇用確保を図るための高年齢者雇用安定法が施行されます!>

なんで年金支給時期に連動した面倒臭い措置をとるんだとか、そもそもなぜ65歳までの雇用を企業に実質義務づけするのかとか、もろもろ疑問もあるにはある。ようは年金支給年齢がどんどん引き伸ばされ、高齢者が無収入状態に陥るのをさけさせようということなんだろう。ただそのツケをすべて企業に押し付けるというのもなんだよなと思う部分もあるにはある。
だいたいにおいて、高齢者ばかり就労させるとどうなるか、うちのような零細はというと、若い人がとれなくなる。ただでさえ逆三角形で中高年ばかりの職場を少しでも変えていきたいと考えているのに。企業の存続を思えば、若い人間を定期的にとりたい。でも高年齢者の雇用が伸びればどうなるか、けっこう自明のことなんだけど。
さらにいえば、これまでも一応労使協定で継続雇用にあたる基準を作ってはいるけど、だいたいにおいて緩くて一般的なもの。端から基準使って振り分けようなんて気さらさらなかったりもするんだな、これが。でも調べてみると、けっこうこの基準をブンブン振り回しているところも多いようで、調べてみると大手家電メーカーとかでも継続雇用される人が希望者の2〜3割にとどまっているとかという話もあったりもする。ようはいろいろと難癖つけて働かせない方向で動いているみたいだ。
まあ、世間の実態がそういうことだから、わざわざ法律改正して基準適用もまかりならんということになったということなんだろう。今回の改正によって企業はどう動くかというと、よく話題にのぼるのがNTTのこと。たぶんこれが一般的なモデルになりかねないのかなとも思うが、ようは現役社員の賃金を抑制して浮いた分を継続雇用者の人件費の原資にしようというものだ。
http://takai-sr.blog.so-net.ne.jp/2012-12-18
なるほどねと思いつつもあっちは大企業、うちのような弱小はあんまり参考にならんわねとも思った。ただし法改正に伴って就業規則は変えなくてはならんし、そのために制度設計とかは考えたよ一応。もともとうちは継続雇用の受け皿を嘱託社員としていたんだけど、誰とは言わないけど制度決めるときに月収いくらで雇うみたいなことまで決めたたりもした。それはちょっと前に改正してたんだが。
今回の法改正についてはいろいろ情報収集もした。何人か同じように中小の経営者やっている友だちとかとも飲みながら、お互い「どうよ」みたいな話をしたのだが、流通系のところはたいてい雇用延長の受け皿をパート、アルバイトにしてた。「それって、ありか」みたいに問うと、「お前そりゃ、金ありゃ別だが、みんな嘱託とかで雇ったら会社もたんぞ」みたいな話だったかな。
それでいくつか調べたり、社労とかに話聞くと、表に出てくる雇用延長の例は、大企業中心でだいたい嘱託とかが多いが、中小だとパート、アルバイトもけっこう多いとか。さらにいえば、小さいとこだとまともに法律守ることもなく、継続雇用してないとこもけっこう多いのだとか。まあなんか理由つけて、仕事はないということで門前払いみたいなことしてるんだね。まあそうだろうな、業績伸びているとこは別だけど、どっちかといえば余剰人員とか抱えていて、毎年何人定年でそうすれば少し楽になってみたいな算段しているとこが多分多かったはずだから。
それはそれとしてとにかく順法が基本だから、法律に即してルールは作らなくてはね。さらにいえば、こういう時にこれまで不備だったものとかも整理もする。で、継続雇用についていえば、これまで嘱託だけだった受け皿をパート、アルバイトまで広げた。人件費の抑制ももちろんあるが、逆に多少健康に不安があっても、週労働が2〜3日であっても、働ける環境を作るみたいなところも作った。もちろん得意の意味不明<総合的勘案>を付帯条項にするとかもろもろあるにはあるけど。
ようはね、就業規則とか、その手のルール作りは、これから組織をどうしていくかということを踏まえた制度設計だとは思うわけ。だからただ単に法律が変わったからという対処療法じゃなく、5年後、10年後を見据えてどうするか、そこに対応できそうな形を作ることなんだろうなとは思ったりするわけだ。なんか、あまりにももっともらしく、当たり前過ぎて、面映いというか、「お前がそれをいうか」みたいな心の声もありでちょっとしんどいかなとは思うが。
労働契約法の改正についていえば、幾つかのポイントがあるにはあるのだが、一番目をひくのはやっぱり無期雇用転換ルールだと思う。これは有期雇用の方々(嘱託やパート、アルバイト)が、契約更新を5年続けた場合、無期雇用に変更を希望した場合、企業は無期雇用に転換させることを義務づけたというもの。けっこうたいへんなことを実は決まったんですな。今まで安易に正規雇用から非正規雇用にどんどん切り替えて、人件費圧縮をはかってきた会社はどこも涙目みたいな感じだというような、ある種画期的な施策ではあるわけ。
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/
でも法律の抜け穴とか以前に、ザルな法でもあったりすんだなこれが。一つには、5年間の始期が法律施行時からということ。ようはこれまで何年勤めていたかに関わらず、今年の4月から5年継続して初めて無期雇用転換希望の声をあげられるということ。
さらにはクーリング制度というのがあって、5年間の間に1度でも6ヶ月間お休み期間があれば契約更新の継続はチャラになるというもの。そうするとどうなるか、会社はね、3〜4年勤めたAさんに向かってこう言うわけよ。
「Aさん、悪いんだけど次の更新勘弁してくれる。半年したらまた申し込んでよ。悪いようにはしないからさ」
Aさんが6ヵ月後に求人の申し込みすると、会社はたぶんこんなことを言うわけよ。
「悪いね〜、今、空きがなくて、本当申し訳ないけど、他あたってくれるか」
そもそもAさんの6ヶ月の生活はどう保障されるのかだよ。非正規雇用の人が雇用保険だけで生活できるか。当然他を探すだろう。そしてたいていの場合、新しい職場は以前よりも待遇その他もろもろは悪くなる。
そしてもう一つ、無期転換された場合の賃金はというと、これがまた噴飯ものなのだが、有期雇用時の賃金のままでいいというもの。これはどういうことかって、まあ普通に考えて有期雇用から無期雇用に転換されれば、それは正社員化ということじゃないですか。しかし法律に即していえば、有期雇用の時の待遇のままでそのまま無期雇用させればいいというもの。平たくいえば、時給800円週4日、4時間勤務だったら、そのままの条件で無期雇用に転換させればいいということ。でもね、たぶんいうよ企業の担当者は、「無期雇用になったんだから、今までよりも責任もって仕事してもらわなくては」。ようは条件同じで労働強化はするぞということだな。
こういう法律作ったやつの顔がみてみたい。たぶん非正規雇用の現実なんぞまっくた理解できない奴等だと思う。親方日の丸で、将来も含めてこと雇用に関してはまったく心配のないお役人の考えなんだろうなとは思う。
今回の就業規則改訂では実はあまりこの労働契約法のことは俎上に乗せなかった。どう整合性とっていくか整理できなかった部分もあるから。でもねうちだけじゃないみたいだな。社労も言ってた。どこも模様眺めしてるみたいで、すぐに就業規則改正に動いていませんと。なので、ここ数年は意見交換しながら、じょじょに制度化やっていきましょうかみたいなことでスルーしたんだが。