自慢できることって

 ネットを見ていて「自慢できること」というワードの検索結果を眺めている。特にそれを調べたかった訳でもなく、ある種の偶然みたいなことでダダっと検索結果が並ぶ。たいていは就活関係の自己PRだ。リタイアした自分にはまず関係がない。

エントリーシートの記入事項「あなたの自慢できること」

自己PR対策「自分の長所の見つけ方」「アッピールの仕方」

自慢できること欄に何を書けばいい

etc、etc、etc

 今の就活生や転職活動中の人たちは大変だなと思ったりする反面、自分たちがそういう境遇だったときには、今ほどマニュアルとかはなかったかなと思ったりもする。自分が就活生だったのは遥か昔のこと、40年以上も前のことだ。転職活動はというと、まあ何度か書いたことあるとは思うが、これまでに6度転職している。20世紀の良き時代だったせいか、中小零細ばかりだったけど全部正規社員だった。

 自分の転職活動ってどうだったかなと思い返すと、人の紹介だったのが2社、あとはだいたい新聞の求人広告だった。転職系の雑誌とかネットのサイトなどまだなかった時代だ。求人広告をチェックして履歴書を送り、面接や採用試験を受ける。まあそういう手順だったか。

 自己PRとか自分の性格とか何を書いただろうか。「忍耐強い」とか。転職繰り返しているやつのどこが「忍耐強い」だろうか。まあいいや。転職理由はだいたいステップアップとか新しいことやりたいだっただろうか。

 まあ6度も転職繰り返すなんて、ある意味ろくでもない奴かもしれない。これも大昔、知人に「お前、いつまで根無し草みたいなことしてるんだ」と叱られたことがある。多分、その時の自分はへへへと笑っていたかもしれない。

 その知人はというとだいぶ前に体を壊して亡くなってしまった。最後の頃は仕事や人間関係のストレスでアル中状態だったと聞く。そんなにしんどければ逃げ出しちゃえ良かったのにとか思ったりもしたもんだ。通夜にかけつけた自分はというと泣いた、なんか訳もわからないが涙が止まらなかった。

 まあいいか。根無し草みたいな自分はというと、たまたまというか巡り合わせというか、あるいは星巡りみたいなことか、最後に務めた会社でサラリーマン双六を上がった。最後の7年くらいは代表権をもった。けっこう問題山積みの会社だったので、焦りまくっていたせいもあり、幹部とかには怒りまくっていた。別にそれでうさを晴らしてみたいなことではなく、とにかく次から次へと問題が押し寄せてきたからか。

 中小零細とはいえ権力を握るとそれまで出来なかったことが出来るようになる。会社の金で酒が飲めるとか。違う!仕事で使う端末のシステムアップとか簡易サーバーの導入とかなんとか。職制には全員に端末を与えたり。結局そういうことの積み重ねで、コロナ化の取引先とのリモートワークとかも割とすんなり出来たりもした。

 仕事で自慢できること。まあほとんどが自己満足の部類になってしまうし書いていてもなんか嫌味のような気がする。小声でつぶやくようにしていえば、唯一自慢できることは、ずっと派遣やパートで10年くらい、あるいはそれ以上勤めていた女性を5〜6人だったか正規社員に転換した。あれは多分、代表権もっていないと出来なかったかもしれない。

 厚労省のガイドブックだか指針だかに載っていたものを元に、派遣社員やパートを有期雇用の嘱託=多様な正社員化し、それから無期雇用に転換した。段階を踏むというやつだ。もちろん転んでもタダでは起きない。ちょうどその頃ハローワークがやっていたキャリアアップ助成金を申請して一人当たり○十万円の給付をもらった。変わったばかりの社労と二人三脚でいろいろと資料揃えてけっこう面倒臭い手続き踏んだ。

 あとで社労からギリギリセーフだったけど、ちょっと後だったら要件的に難しかったかもしれないいわれた。それからしばらくして別件でハローワークに行った時に担当者に挨拶したときにも同じようなことを言われた。

 非正規から無期雇用に転換した人たちは簡単には雇い止めされない。10年も勤めてきたのだから当然といえば当然のことだ。多分、自分が自慢してもいいかなと思う唯一のことかもしれないなと少しだけ思っている。