「ドラゴン・タトゥーの女」

ドラゴン・タトゥーの女 - Wikipedia
デヴィッド・フィンチャー - Wikipedia
そこそこネットとかでも評判がいいというのでTSUTAYAで借りてきたのだが、ほとんど予備知識なし。しいていえばミステリーでデヴィッド・フィンチャー監督作品ということくらいか。デヴィッド・フィンチャーは比較的観ている方かもしれない。彼の監督作品9本のうち「パニック・ルーム」以降は全部観ている。といっても特に好きな監督ということもなく、単なる巡り合わせみたいなものだ。印象に残っているのは「ゾディアック」「ベンジャミン・バトン」あたりか。色調を抑えたダークな一見モノトーンに近い画面を作る人みたいなイメージ。さらにいえば何を撮っても猟奇的な雰囲気がしてしまう。それこそ「ソーシャル・ネットワーク」にしても何か主人公のザッカーバーグが変質的な感じがしたのは私だけだろうか。
さてと本作はというとスウェーデンのミステリー小説で世界的ベストセラーの映画化。舞台もスウェーデンで、そのモノトーンの映像が北欧の寒々とした風景によくあっていたりしている。お話はというと、大雑把にいえば虚偽報道を訴えられた経済記者が財閥一家の40年前の少女の失踪事件を探るみたいなもの。その真相を探るにつれなんとも猟奇的な事実がじょじょに抉り出されていく。
さらにこの経済記者に絡んでくるのがパンキッシュで反社会的な女性ハッカー。見た目は皮ジャンに顔面ピアスにドラゴン・タトゥーという強面ながら、ネット情報を駆使して巧みな情報収集能力を見せる。さらに未成年時代の犯罪のためか独立を許されず後見人をつけられていて精神面にも問題ありというえらいこと特異なキャラ設定。この女はおそらく幼少時代から虐待を受けており、その反社会的な性格もそこからきていることがなんとなくわかるようになっている。さらに本作の中でもショッキングな暴力的レイプにさらされたりもする。
経済記者はこのパンク娘をアシスタントとして雇い、そこから調査はどんどん進んでいくのだが、二人が会うまでは、それぞれのお話が交互にカットバックされる。そのへんの流れは人好きずきだとは思うが、私はちょっと流れに載れなかったかな。最初の30分くらいはえらく退屈な感じがしたし、例のレイプシーンはとにかく陰惨なもんでちょっと正視に堪えない部分もあり、この映画はしんどいかなと思った。
二人が出会ってからは一気にテンポアップする。そして真相は・・・・・。まあ個人的には猟奇モノはあんまり好きではないので、今一つな結末かもしれない。ただしクールだけど一方でほとんど崩壊寸前のところでなんとか留まっているような繊細さも持ち合わせているパンク娘が、ラストに妙に乙女チックになるところがけっこう好きでもある。そうこの映画はこのパンク娘のキャラがある意味総てかもしれないなとも思った。ヒロインを演じたのはルーニー・マーラ。エキセントリックなパンク娘をよく演じきったと思う。オスカーあげてもいいくらいに魅力的だったな。
ちなみに主人公の経済記者を演じたのはダニエル・クレイグ。現在のジェームズ・ボンドである。この人もまたうまいと思った。特に世の中に絶望したような心象風景を本当にうまく演じているなと思った。そうやってみるとこの映画の主人公二人は互いに共通項はないのだけれど、それぞれが深い絶望感につつまれているように感じられた。もちろん絶望の種類はまったく異なるのだけれど。その絶望感が北欧のモノトーンの色調とうまくあっているというか、なんつうかそういうタッチの映画なんではないかと思ったりもしたわけである。