これもBSプレミアムを録画したもの。年末年始にかけてBSではミュージカルものが続けて放映されていて、ちょっとワクワクするような感じだった。
この映画は3人の水兵がニューヨークで24時間の自由時間中に観光名所を見物し、3人の娘と出会い恋に落ちるというボーイ・ミーツ・ガールの典型的なお話。大都会ニューヨークの名所が魅力的に紹介されており、ミュージカルであるとともに観光映画的な性格も帯びている。
若い水兵役をジーン・ケリー、フランク・シナトラ、ジュールス・マンシンが演じている。女優陣は、ジーン・ケリーの相手役がヴェラ=エレン、シナトラの相手はベティ・ギャレット、マンシンの相手はアン・ミラーである。
ヴェラ=エレンというと『ホワイト・クリスマス』でダニー・ケイの相手役を演じたのが有名。女優としてよりもダンサーというイメージが強く、アン・ミラーと同じようなイメージがある。彼女の経歴をみると意外なことに1957年に引退しており、ショービジネスでのキャリアはわずか12年である。ウィキペディアの記述によれば、当時ハリウッドでもっとも細いウェストの女優といわれたとも。均整のとれたプロポーションはこの映画でもそのダンスシーンで見ることができる。
アン・ミラーはこの映画での準主役で見せ場となるタップダンス・シーンがある。この人は『イースター・パレード』にしてもそうだが、常に準主役ポジションでワン・シーン見せ場となるダンス・ナンバーを披露している。50年代後半ミュージカル映画が下火となるにつれて活動の場をスクリーンから舞台に移している。最後の映画出演は意外にもデヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』。
シナトラの相手役で女性タクシー運転手を演じているベティ・ギャレットは、コメディエンヌにして歌手、ダンサーでもある。彼女が『ジョルスン物語』のラリー・パークスの夫人であるというのはちょっと驚き。二人とも民主党支持者のようで、赤狩りで一時期活動の場が制限されたとも。ラリー・パークスとは生涯添い遂げている。
この映画は初めてオールロケ=屋外撮影によって撮られたミュージカルとしても有名。ロケでのダンスナンバーなどに新味があったのだろうし、当時としては革新的な映画だったのかもしれない。監督、振付はジーン・ケリーとスタンリー・ドーネンが担っている。撮影のハロルド・ロッスンとともに新機軸のミュージカルを作ろうという意気込みがスクリーンからも伝わってくる。
しいて注文をつけるとすれば、若い水兵3人の群像劇という設定のため、一人一人の見せ場、持ち味が発揮されているとは言い難い部分がないでもない。特にジーン・ケリーのダンス・ナンバーがもう少しクローズアップされてもいいのではと思ったりしないでもない。
さらにいうとアン・ミラーはいつものタップ・ダンサーなんだが、役柄が人類学者の卵というところがどうにもしっくりこない。同様にシナトラ扮する若い水兵を口説きまくる積極的な女性タクシー運転手役のベティ・ギャレットも、ちょっとこんな娘いないだろうみたいな現実離れしていたりする。まあMGMミュージカルなので、そこにそこそこのリアリティを求めても仕方がないのだろうけど。
今回は『イースター・パレード』と続けて観たのだが、やはり映画としての出来は『イースター・パレード』の方が数段上かもしれない。その理由はやはり一にも二にも主役のアステアとジュディ・ガーランドにあるのかもしれない。この映画の後、MGMミュージカルを背負うような大スターとなるジーン・ケリーをアステアとそのまま比較してはいけないのだろうと思う。二人は共に超一流のミュージカル・スターではあるが、そのスタイルはまったく異なる。アステアのソフィスティケートに対してケリーはアグレッシブ。そういうことなのだろう。あとはやはりジュディ・ガーランドの存在感も寄与しているところがあるのかもしれない。