食品の放射能検査「独自基準やめて」

http://www.asahi.com/politics/update/0421/TKY201204200862.html

食品の放射性物質検査をめぐって、農林水産省は20日、スーパーや食品メーカー、外食産業などの業界団体(270団体)に対し、国が設けた放射性物質の基準を守るよう求める通知を出した。国よりも厳しい独自基準を設けて自主検査を実施し、「『放射性物質不検出』の食品しか売りません」などとする動きに歯止めをかけるのが狙いという。

http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/ryutu/120420.html
典型的な日本のお役所の動き方だ。3.11以来この国の政府官庁が行っていることは、とにかく原発事故と放射能の影響を過小化させることだけだ。その一環の農水省による食品ヴァージョンということなのだろう。
しかし、食への安全を求める傾向は、別に3.11以前から消費者の間には普通に進んでいる意識である。それを商品への付加価値として企業は、自社品の差別化、ブランド化として取り組んできているはずだ。
まして福島第一の原発事故による放射能被害は、現時点ではどれほどの影響を及ぼすかがまったく分からない状況にある。外部被曝に依拠した年間何ミリシーベルトやらなんとかベクレルよりも、今後問題になってくるのは、内部被曝である。汚染された食品を体内に取り込むことで、今後の何十年かのスパンでどんな影響を及ぼすかは現時点ではまったくわからないのである。そうなると、たぶん安全だという国の基準も完全に科学的に立証されたものであるのかはおよそ疑問である。
だいたいにおいて、これまでの様々な公害等による被害、水俣病イタイイタイ病、砒素ミルクにしたって最初は国的には安全だったんでしょう。そして被害が多発しても最初は因果関係を認めず、多くの患者が長いこと苦しむことになった。同じことの繰り返しのような気がする。
たぶん何十年かして放射能汚染による健康障害が様々に現れてきても、この国の政府、官庁は最初は因果関係は科学的に立証されていないの一点張りでいくのだろう。それからさらに何十年もの歳月を通して、ようやく因果関係が認められる頃には・・・・・。
この国は結局、チェルノブイリからなに一つ学ぶこともないまま、原発政策を進めてきた。原発は絶対安全だというデマゴーグをばらまくことで、自らも自己暗示にかかって、何一つ事故対策、放射能汚染被害等への対策をとることなくずっときてしまった。その終着点に福島第一原発事故がきちゃった。何も対策たてていなかったから最初の一月くらいはもうパニクリまくっていた。その中でもとにかく事実を「見ざる」、聞かざる、言わざる」で、隠蔽と被害を過小評価することだけに腐心してきた。
やれ「ただちに健康に影響ない」、やれ「風評被害」だの。今回もたぶんその一環なんだろう。でもね、これはTwitterとかでもいろいろ出ていたけど、より安全な基準を独自に設けて商品に付加価値をという企業活動への明らかな介入、制限なのである。さらにはより安全を希求することを阻害する行為でもある。ようはより安全な車を作るな、より耐震性の高いマンションを売るな、作るなといっているに等しい。
なかには過剰に厳しい独自基準など設けると、放射能に汚染された商品を安全であると偽装することにもつながるみたいな異論を出してくる人もいるようだが、ナンセンスな話だと思う。それは完全に犯罪行為だし、露見した場合は社会的に抹殺されるだけだ。
以前、中国産の食品は安全性に問題があると様々に報道された。その結果消費者がどういう行動をとったか。多少割高でも中国産を止めて国内産にシフトしただけである。厳しい基準を設けてそれがクリアされたということを売りになんとか福島産商品を売ろうとすることに、今回の農水省の通知は水をさすようなことになるのだと思う。
国の決めた安全基準だけに依拠していたら、たぶん我々は普通に福島産商品の購入を簡単に控えるだけだと思うのだが。