100000年後の安全

100,000年後の安全 [DVD]

100,000年後の安全 [DVD]

  • 発売日: 2011/12/23
  • メディア: DVD
映画『100,000年後の安全』公式サイト
TSUTAYAでレンタルした。フィンランドに建設中の核廃棄物最終処分場オンカロに潜入したドキュメンタリーフィルム。静的で圧倒的な美しい映像と単調なBGMはある意味きわめて単調である。正直に二度ばかり途中で落ちかけた。内容的には興味深く、衝撃的でさえある。しかしどうにもこの単調さは・・・・。
高レベル放射性廃棄物を地中深くに埋設する。安定した地層があるフィンランドで深く岩盤を掘り進め、さながら地底都市のような保管スペースを作る。放射性廃棄物の埋設が完了するのは約100年後。その後、この施設は完全に封鎖して外部からの進入ができないようにしてしまう。
そして放射能が無化されるまでにかかる年月は100000年。未来にツケを回す究極のエゴイズムの産物とでもいえばいいのか。しかしこうした最終処理施設の建造が可能なのも、あくまで安定した地層という前提があるからである。日本はどうか。来日したマイケル・マドセン監督はインタビュー等でこう語っている。

オンカロの取材をしたとき、学者たちに「最終廃棄物処理場が作れない国があるとしたらどこか」という質問をしました。その答えは日本でした。現在の科学では放射性廃棄物の処理は地層処理しかないと言われていますが、地層処理場ができないのに原子力を持っている国である日本は、火山があり地震があり、常に地層が安定していません。チェルノブイリは壊れた原子炉をコンクリートで覆いましたが、チェルノブイリは完全にカバーしてしまえばよくても、福島は次の地震が来ない保障がない。中華の回転テーブルの上に放射性廃棄物が入った容器を置いたようなもので、いつ動くか解らない。日本はそういう状況にあるのです。

「福島原発は地上のオンカロになるだろう」マドセン監督インタビュー|「日本の原発への対処が世界中に大きなインスピレーションを与えるでしょう」と提言 - 骰子の眼 - webDICE
日本では再処理施設として建設された六ヶ所村も様々なトラブル等により本格稼動されていない。いや端から再処理施設自体が技術的に難しいのである。あれはたぶん絵に描いた餅みたいなものだ。原発が稼動し続ける限り、放射性廃棄物は溜まり続ける。さらにはフクシマの事故により様々なものが汚染され続けている。その中間的あるいは永久的な保管処理施設さえ決まらない。
マドセン監督が言うように、福島はなし崩し的に地上のオンカロとなってしまうのかもしれない。絶望的な状況が所与の現実として出現している。
そもそも原子力の民生利用など行われるべきではなかった。あれは軍事利用、核兵器開発のための方便でしかなかったのだ。軍事としての国策であるからして、放射性廃棄物の処理などは二の次にならざるを得ない。あくまで国力維持のための大量殺傷兵器の保持が最重要課題となるのだから。それに派生することなどはある意味、副次的な細目の一つ程度のことなのである。あくまで軍事なのだから。
その軍事を全面に出せないための方便として、やれ原子力の平和利用だの、新しい低コストのエネルギーだのという話しが出てきた、ようはそういうことなんだろうと思う。
 映画の中で技術者の誰かがこんなことを語る。原子力も過渡的なエネルギーでしかない。なぜなら石油と同じようにウランも埋蔵量に限りがあるから。近い将来、限りあるウランを巡って戦争が起きる可能性もあるかもしれないとも。
そんな過渡的エネルギーにして、将来に渡って長く、大きな影響を与えるような放射性廃棄物を生み出す原子力がなぜ新しいエネルギーとして持て囃されたのか。答えはいつも同じだろうと思う。軍事利用のため。
美しいスタティックな映像を見ながら、眠い目をこすりつつそんなことを考え続けていた。
映画「100,000年後の安全」地下500㍍ 核のごみ隠すオンカロ/原発から出た放射性廃棄物を10万年後まで保管 - 来栖宥子★午後のアダージォ
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