避難者帰宅「長期困難に」汚染土壌「県内に中間貯蔵」菅首相フクシマで表明

asahi.com(朝日新聞社):「長期居住困難」「がれき当面県内に」首相、福島知事に - 東日本大震災

 菅直人首相は27日、福島県庁で佐藤雄平知事と会談し、東京電力福島第一原発周辺で長期間住めない地域が生じるとの見解を伝え、陳謝した。また、放射能に汚染された土壌やがれきを保管する中間貯蔵施設を福島県内につくるよう要請したうえで、福島県外に最終処分場を設置する考えを示した。
 居住禁止が長期化するのは、原発から半径20キロ圏内の「警戒区域」内で、高い放射線量が観測される一部の地域。首相は「長期にわたって住民の居住が困難な地域が生じる可能性は否定できない」と述べ、「大変申しわけない」と陳謝した。ただし、どの地区が対象になるかは示さなかった。
 首相は汚染土壌について「中間貯蔵施設を県内に整備するようお願いしたい。この施設を最終処分場にすることは考えていない」と表明。佐藤知事は「中間貯蔵は突然の話。非常に困惑している」と反発した。
 これに先立って、細野豪志原発担当相は地元自治体との協議会で、年間の積算放射線量が100ミリシーベルトの地域は、除染しなければ避難住民が帰宅できるまでに10年かかり、200ミリシーベルトだと20年以上かかるとの試算を示した。また、避難民を支援する特別措置法案を次の通常国会に提出する方針も伝えた。
 菅政権は原子炉が冷温停止する今秋から来年1月以降に警戒区域の解除を検討・実施する方針だが、解除の一部先送りは不可避だ。
 一方、最終処分場については、地元自治体が早期に見通しを示すよう要望。除染作業で大量に生じる汚染土壌について、首相は県外へ搬出することを約束し、県内の処分地は中間貯蔵施設との位置づけにした。ただ、最終処分場設置のメドはなく、辞任する首相の約束が次の政権に引き継がれるかどうかは不透明だ。

昨日の朝日朝刊に載っていた。フロントには「増税・小沢氏処遇で論戦」という民主党代表選の記事が大きく載る中、その左側に掲載されているのだが、内容的には民主党代表選、実質的な次期首相を決める選挙よりも実はもっと本質的に重要なことなのではないかという気もしないではない。
原発から半径20キロ圏内の「警戒区域」を中心にとりわけ放射線量が高い地域については、たぶん避難民がいつ帰れるかといったレベルの問題ではないのだろうとは、実は誰しも思っていたことだとは思う。あの1号機、3号機などの爆発の映像を見た瞬間にある種直感的にそれは私なども感じていたことではある。原発事故の実態がじょじょに明らかになってきてからは、それこそこれは5年、10年の話ではすまされないとも思っていた。フクシマのチェルノブイリ化はある種自明のこととも考えていた。
避難している方や、日々高線量にさらされている福島県内の住民には申し訳ないことではあるが、これが3.11以後の現実なのである。この事実を踏まえたうえで、原発をまだまだ必要悪、あるいは日本の産業のために必要であると語る人々はこの現実をどんな風に見ているのだろうかも思う。
ただ問題は、こうした事実が常に後だしジャンケンのごとく、too lateな形で出てくること、もしくは小出しに小出しに出てくることなのである。今回も民主党代表選という大きなイベントごとに隠れるような形で、しかも翌日には首相の座から離れる人の口から表明されてきたことである。これまでの経緯からすれば、またまた菅首相が思いつきのようにして発表したと、そういう文脈でかたずけられそうである。
しかし、これはかなり容易周到に発表された部分もあるのだと思う。高濃度に汚染された避難区域が、今後数十年にわたって人が住むには値しない場所になることを、どこかで国民に周知させる必要がある。そのうえで除染作業をしていくことも必要である。そしてこれも重要な問題となる除染作業によって出てくる汚染された土壌等をどこに貯蔵保管するかという問題である。
これについてもひそひそ話的には、貯蔵場所は高濃度に汚染された福島第一原発周辺しかないだろうとは語られてきた。福島県知事やその地域周辺自治体の首長からは、今回の首相の表明に対して、反発や非難の声が相次いでいる。しかし、原発誘致に伴う恩恵を受けてきたこともこれら自治体にあって共通の事実でもあることも、すでに誰もが知っていることなのである。
そしてここからが問題なのだが、汚染土壌その他を今後日本国内で受け入れるべきところがあるのかどうかという問題だ。まあ地域エゴうんぬん以前の問題として、どの県、市町村でそんな奇特なところがあるというのだろう。いまや膨大な誘致マネーを用意してもたぶん住民のコンセンサスなど得られないだろうことは容易に推測できる。もはや原発事故で汚染された土壌、ガレキその他もろもろ受け入れるところなど国内にはまったくありえないのである。
まあしいていえば、原発推進を盛んに主張する政治家が自らの責任において、自身の選挙区内に誘致するといった気骨あることを言ってくれればいいと思う。ぜひ与党民主党、野党自民党を問わずご検討されてはどうか。
さらにいえば、威勢のいいご老体、我らが石原都知事あたりに、東京都で受け入れるという気風のいい発言を期待したいところでもある。国としても東京都が受け入れてくれれば、国をあげてオリンピックの誘致に全力をあげるとかのバーターを提案して。いや、もう石原のたぶん見果てぬ夢であろう、首相の地位を与えてもいいかもしれない。
くだらないジョークにもならない話はさておきである。汚染により長きに渡って人が住めない空間となる高濃度汚染地域、端的にいえば福島第一原発周辺地域を汚染土壌の貯蔵地域にというのは、きわめて現実的な提案といわざるを得ないのである。ただし、それこそここからは、児玉龍彦氏が提案するように、それを単なる土建屋的な公共事業レベルで終わらせるのではなく、国家レベルで膨大な資金を投入し、研究者、民間企業の総意を結集した一大除染センターを作り、実用的な研究を行っていくということが必要になるのだろう。菅首相の表明にはこれがないために、唐突かつ、自治体側からもただただ当惑するという形での反応をせざるを得ないということになるのだろう。
しかしこれとは別に警戒しなければいけない動きがさらにあるのだと思う。原発維持推進を続けるいわゆる原子力ムラ、電力会社、財界、通産省、政界の一大グループは、この機を利用して全国の原発で貯蔵される核廃棄物の最終処分場を、福島に受け入れさせようと狙っているのではないかということだ。考えてみよう、青森の六ヶ所村にしろ、すべて中間的施設であり、いまだ日本の原子力政策にあっては核廃棄物の最終処分場は決まっていないである。
すでに汚染されてしまったフクシマであれば、しかも福島第一原発周辺はすでに住民が避難している無人地帯である。ここを国が買い上げてしまえば、後は好きに使うことができる。これでこれまで先送りしてきた問題が一挙解決するではないかと。すでに通産官僚や電力会社のお偉方、あるいは政界の上のほうあたりでは、こんな図面がじょじょに出来上がりつつあるのかもしれない。
さらにその先もあるかもしれない。実は世界中で原発による核廃棄物の最終処分場はどの国でも実は決まってはいないのである。フィンランドだの北極周辺の地下数千メートルにそうした施設を作るという計画も進行中だというが、これもずっと先の話である。
アメリカだのフランスだのという原発推進国が、自国の核廃棄物の処分場所をフクシマにしてはと考えても、あながち荒唐無稽でもなんでもない話である。もちろん無償ではないから、国を売り渡す覚悟で政治家、役人、電力会社などが、一大ビジネスとして絵図面描いている可能性は十分に想像できる。
しかしあの地震多発地帯に世界中の核のゴミをもってきた日には、もう亡国というかそういうレベルの話にすらならないようにも思える。
政治に期待するもの、とにかく福島の地に除染センターを作り国の総意をあげて除染技術の研究、実施を行うこと。そしてなによりも、この国から原発、核廃棄物を根絶する方向性を示していくことだと思うのだが。