ジョン・メイヤー「Battle Studies」

BATTLE STUDIES

BATTLE STUDIES

  • アーティスト:MAYER, JOHN
  • 発売日: 2010/01/15
  • メディア: CD
そういえば最近、ジョン・マイヤーもあまり聴いていないな。iPodに入っているのはデビュー版の「ルーム・フォー・スクエア」が中心。車に積んだiPodで聞き流す程度か、たまに自室でトリオのライブとか引っ張り出して聴くくらいか。
最近はどんなものをやっているのかと思いつつも、積極的に追いかけることもなく。そういえば去年の5月くらいだったか、来日公演やったんだっけね。少し興味はあったけどスルーしてしまった。
先日、ご近所のTSUTAYAの貧弱な洋楽コーナーをぶらぶらしていて、何気に見つけたのがこの一枚。いちおう2009年作の最新作とある。ネットで調べると30代になって初めての作品なんだとか。今年はメジャー・デビューして10年、もうこの人も32歳になるという。時代は凄まじい速さで進んでいるとういことか。
といいつつこの人を最初から聴いていたわけでもなく、たぶん聴き始めてから5年くらいなんじゃないかと思う。ネットで若手でアコースティックな有望株みたいなものを探していて誰かが紹介しているのみてみたいことで知ったんじゃないかな。「ルーム・フォー・スクウェア」を聴いたときは、才能というかそのタレント性に脱帽みたいな感じだったかな。歌、作曲の才能もさることながら、ギターもバカテクだという。すげえタレントが出てきたものだとは思った。
もっともこの手のタレントが綺羅星のごとく輩出するのがアメリカのミュージック・シーンなわけで。たぶんバークリィとかにはこの手のタレント予備軍がわんさかいてチャンスを狙っているのだろうとも思った。例えば女性だけどエスペラサ・スポルディングとかだってそういうクチだろうとも思うわけだ。
やっぱりどこかのサイトでの解説を見たのだが、ジョン・メイヤーの歌い方は、デイヴ・マシューズの影響受けているみたいな記述があり、それでDMB聴き始めたとかそういう派生した話も私の場合あったりする。ある意味私の偏った2000年以降のアメリカ・ポップス聴きのなかでメイン・ストリームに位置するのがジョン・メイヤーだったりもする。
さてとこのアルバムである。トリオのピノ・パラディーノやスティーヴ・ジョーダンが参加しているということもあり、聴く前のイメージでは例によってガチガチのブルース・ナンバーやっているのかなとも想像したのだが、まったく違っていた。
とにかく静的なフォーク・ロック中心なのである。どこまでアコースティックに音数を少なくして。最近のポップルにありがちな騒々しさがない。70年代〜80年代の良質なフォーク・ロック、それも間違いなくウェストコースト系の香りが漂う。まさしく私のストライク・ゾーン、ど真ん中という感じである。
このややもすれば古風なオーソドックなアルバムがどういう風に受け入れられたのかというと、2009年11月ビルボード初登場1位という風にアマゾンでも解説されている。ようはジョン・メイヤーがそれだけの大スターということなんだろう。
とにかく1曲目から最後まではずれなし、クォリティの高いアルバムである。全体としてとにかく静的なイメージではあるが、例えば泣きのスローバラードとかは1曲もない。どこかドライな感がある。レコーディングをカリフォルニアの一軒家で行い、ジョン・メイヤーは6ヵ月にわたってそこに住み込んでアルバムを制作したという。リラックスしながらも、どことなく作り出す音楽への客観性みたいな、どことなく冷めた部分がある。クールなイメージだ。それがウェストコーストの乾いた雰囲気とうまくマッチしている。
クールはウェストコースト・ミュージック全体を現すイメージではあるが、どことなく実験性というか、あえてカリフォルニアの地でそうしたウェスト系をあえてやってみたみたいなそういう感想をもつ。静かなイメージをもつ音楽とあえてタイトルにある「バトル」という言葉に違和感がないのはそういう部分かなとも思う。うまくいえないが、もともとこのアルバムにはイーストコースト出身のジョン・メイヤーによるウェストコーストサウンズへの挑戦みたいなそんな感覚がしてならない。このアルバムは買いである。