「原発死守」のシナリオ

『AERA』’11.5.30号掲載の記事である。
aera-net.jp
表題には「経産省野望の隠れ蓑 日本の英知を結集したエネルギー政策賢人会議は、経産省原発推進派』の隠れ蓑だった。原発推進としう結論は、会議発足前から決まっている。」とある。
この「エネルギー政策賢人会議」とは海江田経産相が4月28日に発表した「今後のエネルギー政策に関する有識者会議」というもので、メンバーには有馬朗人(元東大総長)、佐々木毅(元東大総長)、立花隆(ジャーナリスト)、寺島実郎日本総合研究所理事長)、大橋光夫昭和電工相談役)、橘川武郎(一橋大教授)、薬師寺泰蔵(慶応大名誉教授)とそうそうたる面々である。ただし、それぞれの原発に対する立場はというと、概ね推進論者のようでもある。このへんはこちらが詳しい。
エネルギー政策の「賢人会議」は今すぐ人選を見直すべきだ - エネルギー革命研究−電力独占と原発からの脱出
この会議の流れをリードすべき経産省がシナリオを描いているというのが本記事の内容である。それを経産省の内部メモとして紹介している。

(1) 原子力
IAEA国際原子力機関)の安全基準の整合化にとどまらず、世界最高の安全基準の適用宣言。
・新増設にかかわる安全審査の凍結→島根、大間は生かす
(2) 電力改革の3原則
・民間活力を最大活用し、電力安定供給を強化。
・事業者と国の責任の明確化(買取、原賠サーチャージ、連係線)
・過度に事業リスクの高まる見直しは避ける(発送電分離は避ける)

ようは原発推進経産省主導の電力秩序の維持であり、電力会社の独占の堅持、電力利権の確保といったことだろう。
経産省は管政権が打ち出す可能性のある、東電に対する「懲罰的な再編」や原発推進からの後退、自然エネルギー推進といったものへの予防線を張ろうとしていると記事は論を進める。そして最後に原発事故によってこれまで進めてきた施策に対する内省が必要なはずなのに、それにきずかない点を大きく批判している。

守旧派省庁の国土交通省でさえ、政権交代後は日本航空JAL)の保護をあきらめ、JALの法的整理を容認し、オープスカイ政策など空の自由化に踏み込んだ。それなのに、経産省原発事故の被告席に座らされていることに、まだ気がつかない。東電ともたれあい、旧秩序維持に汲々とする。