娘の誕生日

朝、いきなり「今日はどうする」と妻に聞かれる。
「ええ、何だっけ」と聞き返すと娘の誕生日だという。そうなのである。横で娘は「え〜、忘れたの」とすかさずつっこんでくる。忘れるものですかと弁解しながらも見事に抜けていたな。それで夕食は例によってステーキがいいか刺身がいいかと聞くと、当然のごとく娘は「りょうほう」と。
プレゼントは休みの日にするか、いや、ここんとこ勉強もあまりしていないし、成績もあまりあがっていないから、なしにするかみたいなことを話すと、娘はここ数年誕生日のプレゼントもらっていないみたいなことを言ってくる。
Wiiはなんだっけ。あれは2〜3年前のクリスマスだっけ。2台目のDSは?あれはお年玉代わりだっけ。なんか四六時中、けっこういろんなもの買い与えているせいか、イベント的な形でのプレゼントの記憶があまりない。うちの場合はなんつうか、プレゼントとかについていうと、メリハリというかハレとケみたいなものがないのだろうね。
でもって何が欲しいのかと聞くと、実を言うと娘もあんまり欲深くなかったりもする。思いつきでなんか言っても、実際に買い与えると、意外と利用しない、大事にしないみたいなこともあったりする。
学校でも使うメトロノームが欲しいっていってたな。そういうのはプレゼント的ではない。そりゃそうかも。学習ドリルとか参考書の類は。いらない。そういう小ネタ的な会話のやりとりの後で、DSのソフトがいいかなという。例えばなにと聞くと、「お茶犬」とか「スーパーマリオ」とかと。まあ考えておくというところで、娘は通学タイムとなった。
夕方、会社はけっこう早めにあがって速攻帰宅。娘も帰っていたがすぐに塾へ。私も買い物にダッシュ。まず一番近い脚折のシャトレーゼに行き、娘の好きな生チョコ仕様のデコレーションケーキを購入。次にスーパーで一番安めのステーキ肉とマグロの刺身を購入。この二つだと私と娘は好物だが、妻があんまり喜ばない。そこで妻も喜びそうな料理をもう一品考えねばと思い、熟考数分、勢いでビーフシチューでも作るかということになり、具材をゲットする。
さらにそれからゲームソフト屋に行きソフトを物色。質より量だなと考え、中古ソフトの中から「お茶犬」もの、「スーパーマリオ」ものの日本。さらに半分嫌味で「えいご漬け」英語トレーニングソフトを購入した。
ちなみ後で娘に渡すと購入した「お茶犬」「スーパーマリオ」は見事に娘が欲しいやつとは微妙にずれていたみたい。例えば「お茶犬」は欲しいのはパート2だったのが、パート3だったとか、「ニュー・スーパーマリオ・ブラザース」か「マリオ・カート」かと悩んで前者にしたら、娘が欲しいのは「パーティー」だったとか。とはいえそれほどがっかりした様子もなく、こいつ本当はそれほどDSソフト欲しくなかったなと、実は思ったりもしてみた。
夕食はやや遅めだったがステーキを焼いた。マグロはサラダにし、きちんとビーフ・シチューも作った。そこそこ豪華な食卓となった。相当食べたのに、最後にケーキも食べた。さすが別腹である。
ケーキにさした13本のロウソクを娘は、一息、二息で消した。そう13歳になったのである。早いものである。人の子の成長も早いが、自分の子のそれも相当なものである。毎日のあたふたとした生活の中ではしみじみとした感慨などというものもわいてこない。誕生日だといっても、やることは様々だし、とりあえずイベントとはいえ、段取りして一つずつこなしていくのである。とにもかくにも13年が過ぎたということ、まだまだこれから山あり、谷ありである。それを思うとほんの一里塚というところなのである。
深夜、寝る前に自室のTVで娘が2〜3歳の頃のビデオを引っ張り出して観てみる。こたつの上で踊ったり歌ったり、台所で妻が家事をする足元で長ネギをかじっていたり、カメラを出し入れするのに夢中になっていたり、呼びかけるとピースサインをしてみたり。本当に可愛いかった頃の映像だ。
もともと8ミリカセットやDVカセットで撮りだめしておいたものを、ある時期に気合でDVDにダビングした。だから小学生にあがる前の娘を撮ったものは10数枚ある。たぶん何度もダビングするだろうし、きっとこんな風に夜中に酒飲みながら繰り返し観ることになるんだろう。娘酒っていうやつですか。