妻をきびしく叱ってしまった

今日は、1時半過ぎに国リハへ行く。外出予定を出していたのですぐに車に。妻は100円ショップに行きたいといっていたので三芳のウニクスへいく。最初に娘をゲームセンターに行かせ、私と妻TUTAYAへ。先週借りたCDを返してからマイルス・デイヴィスを3枚、ジョニ・ニッチェルを2枚借りる。それからダイソーへ。妻は特に欲しいものもないようで、すぐに出てからヤオコーで娘と私の昼食用の弁当を購入。妻は病院での食事用にふりかけが欲しいというのでパック入りのものを買う。妻が少し小腹が減ったというのでヤオコーの中にあるベーカリーでカレーパンを買う。
その後は自宅に向かう。杖と手摺を使ってなんとか2階に上る。妻は前よりも少しいいでしょうと階段への昇降を自画自賛していた。確かに妻も介助する私も少しだけ慣れてきた部分もある。2階で娘に弁当を妻にカレーパンを食べさせ、私は洗濯物を干したり、食器の洗物をしたりしてようやっと自分も弁当を食べようと妻の横に座ると、妻はカレーパンのカレーを衣服にてんてんとこぼしている。私はおもわず声を荒らげて、なんで注意して食べないのかと妻を叱ってしまった。そして五分の一くらい残っていたカレーパンを取り上げて捨ててしまった。妻は「全部食べたいのに」とか、「ごめんなさい、次からは注意する」とか一生懸命言い訳をしていた。
私は「歩くとかは少しづつ良くなっているけど、注意の方は全然改善されていないじゃないか。こんなことでは退院できないよ。一人で家に置いておくなんかできないじゃないか。もっと注意がすすまないと、5月末には別の病院に転院みたいなことも考えなくてはならないよ」
妻はほとんど泣き顔で、「ごめんなさい。今度から注意するから」と繰り返していた。
今思うと、こんなにきつい言い方をする必要はなかった。でも汚れた妻の衣服を見た時に、天気もあまり良くなかったので深夜に洗濯をして浴室乾燥機で時間をかけて乾かしやっと病院に持っていったばかりのルーム・ウェアをもう洗わなければならないとか、そんなことを思って怒りふつふつとなってしまったのだ。
妻の注意障害も以前に比べればだいぶ良くなっている。病院でも食事の際にエプロンをすることもなくなっている。それでも食べこぼしはほとんどなくなっている。以前ひどかった涎とかもない。でも、ちょっと気を許すとこんな風に食べこぼしたりも多少はある。でも、それは病気だからいたし方ないことなのに、片麻痺で家族に全面的に依存せざるを得ない妻にひどくあたってしまう。それだけこちらにも余裕がなくなっているということなんだろう。仕事をしながら、こうやって妻の見舞いやら介護をする。娘のことも考えなくてはならない。最低限の家事だのなんだの。様々な事務手続き。妻の汚れた衣服を見た瞬間に、また洗濯だよ、カレーだから跡が残るかもしれないとか、そんな煩雑な手間隙がまた一つ増えたことに対してどうしようもない憤りが一気に出てしまったんだろう。
片麻痺という過酷な病の現実にある妻に対して圧倒的に優位な立場にある自分が残酷な物言いをしてしまうこと。立場が逆だったら言われる側はつらいだろう。病気のせいなのに物凄い言われようをされてしまうこと。でも、怒ってしまう側にもやっぱり理由はあるわけなのだ。もうほんと一杯、一杯でやっているのに、なんでもう少し注意してくれないのか、また手間が増えるよう、勘弁してくれよみたいな物言いだ。
小さな子どもを持つ母親が、子どものそそうに必要以上に怒ってしまう心理、けっこうわかるような気もする。一生懸命母親として頑張っているのに、さらに手間隙が増すことへの苛立ちとかそういう心理。たいていの場合そういう状況に対しては、もっと大らかに子どもに接してやればいいのにとかそんな大人の言葉がかけられる。子どもはそそうしたり、衣服を汚したりするのが仕事みたいなもんだよ、それでいいじゃないかみたいな訳知りの物言い。その通り、おっしゃる通りではあるのだが、でも汚れ物の後始末は誰がするのか、誰かが代わってやってくれるのかみたいなそんな悲鳴が心の中でこだまする心理状態なんだ。
妻の現実をそのまま受け入れてあげたい。そうでないと彼女は辛すぎる。わかってはいることではあるのだけど、出来れば今よりもう少しだけ、もう少しだけ改善がすすんでくれればと無理目の希望を抱いてしまう。少しだけ改善が進めばさらにもう少しの改善をと、どんどんと希望のハードルは高くなっていく。でもどこまで行っても彼女の失われた身体や精神的な機能が健常な時のように戻ることはけっしてないのに。
妻の状態がちょっとづつでも良くなっていけばいい、それと同時に家族もまた妻の現実にちょっとづつでも慣れていくこと、ちょっとづつ受け入れていくこと、そしてちょっとづつでも大らかになっていければ、そんな風にいけばと思ってはいる。張り詰めて頑張ってもどこかでパンクしてしまったら、しょうもないわけなのだから。
病院を7時過ぎに出てから、娘の春物の衣服を数着、靴を2足購入。新学期なのだから。二人で久しぶりに回転寿司を食べる。10時頃に帰宅。それから娘の部屋の片付け、1〜2年時の教科書、ノートなどをしまい、明日もって行くものを整理した。娘は11時前に就寝。一人で娘の部屋で作業している自分がなんかあほらしくもなってくる。三角巾、新しい雑巾などを用意。寝たのは3時少し前か。