バート・バカラック

painted from memory

painted from memory

バート・バカラック・サウンズを60年代に体現したのは、ディオンヌ・ワーウィックだっただろう。それはたぶん万人が認めるところだ。それでは90年代のそれは。たぶん間違いなくそれはエルビス・コステロということになるだろう。それを証明するのがこの一枚のアルバムである。
いちおうバカラック好きの末席をけがすような立場でいた自分だが、このアルバムの存在はまったく知らなかった。コステロバカラックのコラボレーションはなんとなく風の便りみたいな感じで知ってはいたけれど、こんなアルバムが出来上がっていたとは思いもよらなかった。
たまたま偶然、ショップで手にしてすかさずゲットした一枚である。素晴らしい!1曲目からまさしく完全なバカラック・サウンズである。曲調、アレンジ、総てが60年代のバカラック・サウンズそのままである。それをコステロが見事に昇華している。完璧なバカラック・サウンズのアルバムである。
それを10数年した現在始めて手にし、耳にしているわけだ。ここ数週間我がオーディオを占有している一枚である。なかなか時間がとれない日々が続いているのだが、部屋で短くても時間があると必ずかけている。
アレンジは古風である。ストリングス、コーラス、ホーン、どれをとっても60年代そのもののバカラックサウンドである。それで時代の寵児コステロが歌うとなんとなく新しいもの、90年代のエッセンスが感じられる。
コステロの歌い方自体はきわめてオーソドックスである。それこそ40〜50年代のシナトラあたりを彷彿とさせるような、クラシックな歌い方である。それでもなぜか新しいものを感じさせる。そのへんがコステロの彼らしさということか。
このアルバム全体が60年代のバカラックサウンドへのオマージュのような趣がありつつも、まさしく90年代的な妙味を感じさせる。バカラックコステロのコラボの見事な完成型とでもいべきか。
そこそこ入手可能な1枚のはずである。へたすればTSUTAYAあたりでも簡単に入手可能かもしれない。誰かにバート・バカラックってどんな曲やっていたのと聞かれたら、とりあえずこの1枚を聴いてみればと勧めたい。
とにもかくにも優れたアルバム、最良の1枚である。と、現時点で思い込んでいる1枚である。