ふとスティービー・ワンダーのハーモニカインストアルバムってあるのかと検索してみたら、バート・バカラックのナンバーを表題作にしたものが見つかった。さっそく試聴してみると、思っていた以上にいい演奏だった。
普通ならここでアマゾンあたりで中古か海外盤を物色するところなのだが、すぐに全部聴いてみたかったのでダウンロードしてみた。それにしても便利な時代である。
ウィキペディアからトラックリストをみると以下のようで、バカラックナンバーは1のアルフィーと3のA House Is Not a Homeの2曲である。
- "Alfie" (Burt Bacharach, Hal David) – 3:14
- "More than a Dream" (Henry Cosby, Stevie Wonder) – 3:48
- "A House Is Not a Home" (Burt Bacharach, Hal David) – 3:32
- "How Can You Believe" (Stevie Wonder) – 3:04
- Medley: "Never My Love/Ask the Lonely" (Don Addrisi, Dick Addrisi/Ivy Jo Hunter, William "Mickey" Stevenson) – 2:30
- "Ruby" (Mitchell Parish, Heinz Roemheld) – 6:48
- "Which Way the Wind" (Stevie Wonder) – 2:47
- "Bye Bye World" (Stevie Wonder) – 3:21
- "Grazin' in the Grass" (Philemon Hou) – 2:57
さらにパーソナルをみてみる。
Stevie Wonder – harmonica, piano, clavinet, drums, bongos, percussion
Benny Benjamin – drums
Uncredited – guitar, strings, orchestration
なんとスティーヴィー・ワンダーはハーモニカだけでなく、ピアノ、エレクトリック・ピアノ、ドラムス、パーカッションを担当している。このアルバムは1968年の作品、スティーヴィーは1950年生まれだからまだ18歳である。恐るべき神童だと思う。
ドラムスのベニー・ベンジャミン、ベースのジェームス・ジェマーソンはモータウンのスタジオ・ミュージシャンとしてその筋では大変有名なプレイヤーらしい。モータウンの社長ベリー・ゴーディーは、「ドラムはベニー・ベンジャミン、ベースはジェームス・ジェマーソンでないとレコーディングしないと」と語ったとさるブログに書いてあった。実際、モータウンのヒット曲、マーヴィン・ゲイやシュープリームス等のそれらにはたいていこの二人がリズム・セクションを担当していたといって過言ではないらしい。ジェームス・ジェマーソンのプレイはあのポール・マッカートニーも影響を受けているという話もあるらしい。
ギターとアレンジ、オーケストラ指揮はクレジットがないが、なかなかいかしたアレンジである。さらにギターも8曲目の「バイ・バイ・ワールド」ではなかな渋いオクターブ奏法を聴かせてくれる。クレジットがないのは契約の関係かもしれない。
スティーヴィーのハーモニカのプレイはすでに完成の域といっていい。スローナンバーではエモーショナルに、アップテンポの曲ではリズミカルなハイテンションな演奏だ。一部テクニックに走って高音部ではキーキーといった耳障りな風もなきにしもだが、それでも破綻なくギリギリのところで押さえている印象だ。
常々ハーモニカ演奏は、ジャズ系のトゥーツ・シールマン、ポップス系のスティーヴィーと思っているが、18歳にして彼はもうそういう域に達しているようだ。
ふいに思い立って入手したアルバムだが、これは愛聴盤になると思う。50年も前のアルバムではあるがまったく古さを感じさせない。スティーヴィー・ワンダーの偉大さを改めて思い知らされた。
最後に彼の少年時代のパフォーマンスを。有名なフィンガー・ティップスだけど、本当神童だったんだと思わざるをえない。スティーヴィー、偉い奴や。
Little Stevie Wonder - 1963 Fingertips Part II