「ジャーヘッド」を観る

ジャーヘッド 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]
ジャーヘッド (映画) - Wikipedia
アバター」を観て、海兵隊の実際とはどんなものだろうと思って、その手の映画がないか探してみた。これまでの私のアメリ海兵隊、マリーンの知識というと、例えばスタンリー・キューブリックの「フルメタル・ジャケット」。前半の訓練キャンプでの厳しい訓練の数々と、教官役の汚いののしりが印象的だった。同じ映画では初めて海兵隊に入隊する女性兵士を描いた「GI・ジェーン」なんていうのもあったか。デミ・ムーアがやたらマッチョで厳しい訓練をこなしていくところを妙に覚えている。
小説ではなんといってもスティーブン・ハンターが描いた海兵隊の狙撃兵ボブ・リー・スワガーだろうか。海兵隊の兵士としての最良の部分を集めたようなスーパーなソルジャーだ。彼は自分が気に入った男に対して呼びかける。「おまえさん、海兵隊にいたことはないのかい?」
いずれも海兵隊が厳しい訓練を課すこと、その訓練を通じて屈強な兵士が生み出されていく過程とかがよく描かれていた。実際アメリ海兵隊のキャンプでの訓練は半端じゃないらしく、例えば海兵隊員が除隊後陸軍とかに再入隊しても訓練は免除されるが、その逆の場合は最初から厳しい訓練を受ける必要があるということもあるらしい。
アメリカ海兵隊 - Wikipedia
 まあいい海兵隊の話はこのくらいにして。映画「ジャーヘッド」の話だ。一風変わった戦争映画である。戦闘シーンはあまり出てこない。映画のほとんどが海兵隊の訓練キャンプでの厳しい訓練、中東に派遣されてもほとんどが基地での待機と訓練という形で展開される。通常であれば、それこそキューブリックの「フルメタル・ジャケット」のごとく前半は訓練、後半は戦闘シーンみたいな作りになる。でもこの映画はほとんどが訓練、待機、訓練である。
こういう映画を作るの監督は?サム・メンデスだ。「アメリカン・ビューティ」を撮った監督だという。実はこの映画観ていない。確かケヴィン・スペイシーが出ていた、アメリ中産階級の退廃とかモラルの崩壊とかを描いたとかいわれていた映画だったか。オスカーとった映画だとは覚えているのだが、なんとなくそそられなかった。
アメリ中産階級のなんとかなんとかみたいな映画は実はちょっと苦手だったりもする。「泳ぐ人」も観ていない。「普通の人々」は劇場で観たけど、たぶん二度と観たいとは思わない。なんとなくそういうのはもういいという感じがある。でも今回の「ジャーヘッド」を観て、この監督の映画なら一度は観ておくべきかなとは思った。
映画自体について。この映画は1990年の湾岸戦争を舞台にしている。1990年、すでに20年を経過している。もはやあの戦争は現代史の一部を形成するようになっているということだ。その事実に、歴史的事実に少しだけとまどいを覚える。
映画の中の湾岸戦争はある意味事実に忠実である。イラクがクェートに侵攻することで始った戦争。アメリカは多国籍軍を形成してサウジアラビアに進駐する。しかしそこから実際にクェートやイラクに侵攻するまでに相当な時間があった。そして最終的には空爆によるハイテク攻撃。まるでコンピュータ・ゲームのようなテレビでの空爆の模様を映したニュースを観ながら、なにか遠い国の戦争をおよそ現実味のないものとして受け取っていたのを覚えている。
あの戦争をより身近な現場で体験する兵士たちの日常を映画をとてもうまく捉えていたように思う。
主役を演じたのはジェイク・ギレンホール。「デイ・アフター・トモロー」の高校生役。「ブローク・バック・マウンテン」ではヒース・レジャーにおかまほられる男を熱演してた。「ソデアック」では新聞記者役だったけ。けっこうこの人の映画を観ているかな。若くて、甘いマスクの優男系という感じだが、今回の「ジャーヘッド」でマッチョな海兵隊員を好演していた。なんか短期間にやたらマッチョに肉体改造したために、ステロイドを服用したという疑惑もでたとか。