バーン・アフター・リーディング

バーン・アフター・リーディング [DVD]
詳しいあらすじ、解説はこのサイトあたりで。
http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tydt/id331863/
コーエン兄弟作品である。ジョージ・クルーニー、ブラッド・ビットという人気スター。これにジョン・マルコビッチフランシス・マクドーマンドティルダ・スウィントンといった名優がからむ。コメディだというが、コーエン兄弟モノである。どうせアクの強い、無意味な暴力や殺伐、ブラックユーモア系なんだろうなと漠然と思っていた。正直いうとコーエン兄弟の映画は実は好きになれない。なんつうか観終った後の感触が今ひとつというか、ようは後味が悪いんだよなよくも悪くも悪趣味だし。
というわけでとりあえずTSUTAYAで借りてようやく観たのだが、正直期待まったくしていなかった。事前の知識もほとんどなく、ブラッド・ビットが筋肉オバカを演じるらしいということくらいしか知らなかった。
で、感想を一言でいうと、すげ〜バカバカしい。赤塚不二夫のキャラクター的に言わせてもらえば、「く〜だらない、く〜だらない」。かくも大スター、名優を集めて、よくもこれだけくだらない映画を作ったものだと感心してしまうくらい。出演料だけでもたぶん半端ない金額だろうし、けっこう制作費かかっているだろうと思う。それでこのくだらなさである。
登場人物のほとんど総てが色ボケ、欲ボケした阿呆揃い。その阿呆たちが入れ替わり、立ち代り絡み合う。そこにやれ国家機密だのCIAだのがありである。役者さんたちもそれぞれの阿呆な役どころをかなり過激かつ強調しつつ演じている。このへんも面白い。
個人的にはけっこう好きな映画である。お下劣でバカバカしいナンセンスを真面目に撮りきっちゃうような映画は大好きである。例えばすでにパロディモノの古典になりつつあるイギリスのモンティ・パイソンとかも大好きではあった。でもねあえて言わせてもらえば、モンティ・パイソンとかにはどこかインテリジェンスがあった。良くも悪くもイギリス知識階級の鼻持ちならないような知性みたいなものが背景にあったようにも思う。でもコーエン兄弟のこの映画にはそういうものが一切ない。本当にお下劣、低級なわけ。そのへんが違和感として若干あるかもしれない。
あとこの映画、観終わった後になにも残らない。観ているときは阿呆くさ〜と思いつつ、大笑いして楽しめる。でも観終わると本当になにもない。アメリカを代表する監督がスター、名優を集めて、かくも低級なコメディ映画を作る。そして観終わった後にはなにも残らない。これってけっこう凄いことかもしれないな。
そう思ってタイトルの意味を考えると「バーン・アフター・リーディング」=読後焼却である。なにも残らないっていうこと。この無意味性を狙ってやったっていうことか。それって凄くないか。コーエン兄弟恐るべし、侮るべからず、といったところである。
役者さんでは筋肉バカ役のブラビも面白かったし、ジョン・マルコビッチも相変わらずすごい。でも一番はティルダ・スウィントンのかっこ良さかな。この人というと「ナルニア」の冷たい女王様役が一番に頭に浮かぶけど、凛とした美しさがあるな。プロフィールとかを確認すると、1960年生まれだからもう49歳になるのだとか。でも綺麗だね本当に。そしてなんと身長が180cmもあるのだとか。なんかすごくないか。
映画の中ではジョン・マルコビッチの奥さん役で、ジョージ・クルーニーと不倫している。ヒステリックで性格超きつい感じの役をけっこう過剰に演じている。仕事はお医者さんでどうも小児科医らしいのだが、診察するシーンで子どもを脅かすところなんかえらく凄みがあって、こんな女医さんだったら患者さんつかねだろうと思わせる。こんなに怖い小児科医はありえないだろうと、へんな突っ込みいれたくなった。