退院

予定通り退院となる。
午後最後の採血の後、医師から検査結果の説明を受けるということだったので午後休みをとって病院へ行く。妻は病室で採血待ち。検査が終わらないと昼食がとれないという。こっちも会社から自宅へ戻ってすぐに車で向かったので同様に昼食がとれない。
2時過ぎにようやく妻は最後の採血を終える。それから医師との面談までずっと待ち。当初は2時頃の予定で3時には退院できるということだったのだが、やっぱり大病院である。どんどんとずれ込んでいく。そしてひたすら待ち、待ち、待ちなのである。
3時をだいぶ回ってからようやく医師2名がやってきて面談となる。これまでにも断片的な説明は受けていたのだが、それ以上に新しい内容はまったくなし。結局どの検査からも妻の状態はまったくの健康体であるというお墨付きをもらっただけだった。医師の話では、これだけの大きな脳梗塞を引き起こしたのはなんらかの理由で血栓が生じて、それが内頸動脈で詰まらせた。その血栓が起きる原因として、血管に問題がないか、もしくは心臓に何らかの原因がないかを中心に検査を行ったが、いずれの検査でも問題となることはなかったという。
そうなると考えられるのは、突発的な不整脈が生じ、それにより血栓ができて血流をとめたのではないかということくらいなのである。それも仮定の問題としてとのことだ。
結局高い費用と2週間の期間をかけて分かったのは、妻が現在の状態が片麻痺や注意障害という問題を除けば、きわめて健康体であるということ。そして当面再発の危険性はパーセントとしては低いということだった。まあ100%再発がないということはありないが、とりあえず安心してもいいということなのだろう。ようはそこそこに費用をかけて安心を買ったみたいなことに落ち着いたということだ。
それではどうしてあんな脳梗塞になってしまったのかという一番最初の疑問に戻ってしまう。戸山の国際医療センターでも結局原因不明ということだったが、その時の医師からは、もともと内頸動脈が少し細いため何らかの要因で血流がストップしたというような説明があった。それでその話を今回の医師にしてみたのだが、確かに内頚動脈は少し細い部分があるが、それは逆に脳梗塞で壊死した脳細胞部分に血流を送る必要がなくなったために細くなったと考えるほうが普通であるという。ようはもともと血管が細いのではなく、病気のために細くなったというのだ。さらに医師は、多少血管が細いとしてもそれだけで血流が止まることはありえない。ようは血栓が生じて血流をストップさせたということに戻るというのだ。
確かにその説明を聞いていると、なるほどと素人的には納得せざるを得ない。結局、なんらかの理由であの時あのタイミングで妻の体内に血栓ができて、血管を塞いでしまったということなのだろう。もうそこからはもはや医学とかそういう問題ではなく、たまたま、運悪く、みたいな話に流れていく。結局、蓋然性や運命論みたいな範疇のお話になってしまうということだ。
妻が発病するその時期、妻の会社は決算期であり、経理事務をしていた妻は忙しい日々を過ごしていた。発病する前一月くらいは、土日とかも出勤することが続いた。疲労とストレス、結局はそういうもろもろが原因なのだろう。とはいえ残業時間でいえば直近の1〜2ヶ月でも80時間までは達していなかったから、労災適用などはありえないことだったけど。凝縮された過度な労働による強いストレスと疲労で体内に異変が生じたということなんだろう。
まあいつまでのその時のことを振り返っても、あるいはその時点に留まっていても、どうしようもないということだ。片麻痺、左上肢、左下肢機能全廃でもとりあえずなんとななっているのだ。本人も家族もそれを受け入れて、そういうものとして折り合いをつけてやっていくということだ。まだまだ長い年月つ続いていくのだ。臭い物言いかもしれないが、少しでも前向きにということなんだろう。、