総選挙雑感

http://www2.asahi.com/senkyo2009/news/TKY200908300212.html
予想されていたとはいえ、民主党がこれほどに勝ち、自民党がかくも大敗をきっするとは、ある種青天の霹靂みたいな印象である。これからしばらくは報道や新聞、雑誌の記事とかを読みながら自分なりに今回の現象を読んでいきたいとは思う。それとは別にまったくの印象を驚きとともに羅列してみる。
・正直長生きして良かったと思う。自分の目が黒いうちに日本において選挙を通じて政権交代が行われるとは思ってもいなかった。口を開けば政権交代の必要性とかを酒飲んだりするとクドイくらいにくっちゃべるのだが、それでいてけっこう本人的には懐疑的というか悲観的というか、たぶん自分の生きているにはあかんだろうくらい気持ちでいた。とりあえずそれを同時代的に体験できていることに率直に嬉しいと思う部分もある。
・同時に自分が生きているうちに、選挙を通じて自民党が大敗北するのを目の当たりにできたことも嬉しい。唯一の政権党であり、それが唯一のレーゾンデートルである政党が政権からずり落ちたのである。それもかってない大敗北である。過半数を大きく割り込んで200議席前後とかそういうレベルではなくなんと119議席である。これはかっての社会党のポジションである。この結果により自民、公明の両党はかっての護憲政党の位置と同じところにまで転落してしまったのである。しかし119議席って、昔であれば田中派、福田派の議席数だろう。一派閥と同じレベルまでの転落。この歴史的現象を目撃できたことは大変愉快である。
・前回の小泉郵政選挙のときの自民党の圧勝とは真逆の結果を見るにつけ、これが小選挙区制の実際であるということを改めて痛感した。小選挙区制にあっては0か1かなのである。勝者か敗者のいずれしか存在しないのである。全国的に一つの政党が優勢となればそれが必ず結果となってあらわれる。まさし「live and die」的ワールドなのである。
民意が成熟していない社会でこの選挙制度はかなり危うい部分をもっている。大衆迎合的な形から危険な政党が大躍進する可能性もあるのである。それも勝利を収めるときは必ず大勝利なのである。かってのナチスが勝利するような可能性もけっしてないわけではないのである。
日本では本格的な政権交代はおそらくはじめての経験である。民主党自民党もこれから政権交代という制度に慣れていく必要があるのだろうが、同じように国民もまた学習していく必要があるのだ。そうでないとある種のエートスによる投票行動から、政権のぶり返しみたいなことが頻繁に行われることになる。それはそれで政治の流動化、不安定要素ということになる。
民主党の圧勝、自民党の大敗北、政権交代。政治的な言語、キーワードとしてはポンポンと威勢よく口にすることはできる。しかしこの歴史的現実は我々にとってほとんど初めての経験なのである。様々な混乱、ある種の政治的カオスような情勢が現出してくる可能性が大だ。それに対して政治家同様に国民も徐々に慣れていくというような段階を踏まえたアプローチができるだろうか。
それとも一つの失敗を増幅させてまた次ぎの選挙時の投票行動のキイとするのだろうか。
・今回の選挙結果から我々は様々な政治的経験をつんでいく良い契機を得たと、そう国民一人一人が考えていけば、たぶん日本の民主主義というようなものに大きな変化が、良い意味での変化が生まれていくのではないかと思う。
とにかくあまり性急な判断はすべきではないのだろうとは思う。
・それにしても自民党の負けっぷりといったら。歴史にもしもは禁物ではあるけど、解散の時期をもっと以前に設定できていたら、これほどの大敗北をきっすることはなかっただろう。たぶん最初は安倍政権発足直後、次は参院選の敗北の後。このあたりで総選挙を実施していたら国民のバランス感覚からいっても自民党の負け幅はかなり少ないものだっただろう。
その次は当然、福田政権時代。そして最後は麻生政権発足直後。どの時点での解散であれ自民党議席を200以下に割り込ませることはなかったと思う。なのになぜ総選挙ができなかったのか。結局小泉郵政選挙で得た300近い議席という数字への驕りと、それを減らすことへの恐怖。それが冷徹かつ現実的な政治感覚を失わせたということなんだろう。負けは負けでもその負け幅を出来るだけ抑える。そういう現実的な政治的感覚をもったプロが実は自民党にはいなくなっていたということなんだろう。
民主党については。いろいろと書きたいことはあるがそれはまた次に。しかし政権交代政権交代といってみても、民主党自体がかっての自民党からの分離派である。新進党や「さきがけ 」、新党日本のメンバーが主力であり、そこに社会党右派や民社党系がくっついている。そういう意味では基本保守系であり、政権交代といっても同じ自民党同士の争いであった部分もあるにはあるのだろう。日本の政治風土が総保守化した状況、アメリカの共和、民主による二大政党制と同じ土壌のうえで、ようやっと行われた政権交代なのである。