フィル・スペクター

最近話題になった事件、記事について簡単な寸評というか、ちょっとした感想を。まずはフィル・スペクターについて。

米音楽界大物に「有罪」
【ロサンゼルス=堀内隆】ビートルズのアルバム「レット・イット・ビー」を手がけた米国の音楽プロデューサー、フィル・スペクター被告(68)が13日、自宅で女優を殺害した罪で、ロサンゼルス郡地裁で有罪評決を受けた。米メディアが伝えた。5月に言い渡される量刑は最短でも禁固18年になるという。
 スペクター被告は03年にロサンゼルスの自宅で女優のラナ・クラークソンさん(当時40)を射殺したとして起訴された。被告は「自殺だった」として一貫して無罪を主張していた。

朝日の15日の朝刊33面に小さく載っていた記事であるからもう10日以上も前のことだ。あのフィル・スペクターがこんなことになっていたなんて。68歳、もうそんな歳かと思う部分もあるが60年代から活躍していた人だから、まだ70前なのかと思う部分もある。
どういう人物かというとまあこんなかんじかね。
フィル・スペクター - Wikipedia
アメリカン・ポップスのアレンジャー、プロデューサーとしては、もっとも個性、特徴のあるタイプというか、作家性をもった人だったのではとも思う。どんなタイプの音楽というと一言で説明するのは難しいのだけど、やたらエコーかけまくりで楽器というか音を沢山つかうアレンジみたいな感じか。今ひとつ有効な説明にならないな。この人の音楽をどれか一つというとやっぱりザ・ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」あたりかなとも思う。
さらにいうと実はこの人の音の特徴といっても実はよくわかっていなかったりして。だって「レット・イット・ビー」がほとんどこの人のアレンジ、編集によるといわれていても、元々のオリジナル演奏については断片的にしか伝わらないもんだから、私のような凡人はまんまビートルズのものとして聴いていたようにも思う。
逆にこのフィル・スペクター風アレンジとかを実は私なんかは大瀧詠一の「A LONG VACATION」あたりから類推していた部分もある。曰く大瀧はフィル・スペクター風の音作りをしているみたいな記事を当時ずいぶん読んでいたせいなんだろうな。そういう意味じゃフィル・スペクター・サウンズの実態なんていうのは実はなんも理解しちゃいなかったのかもしれん。
でも、ジャズ聴いていたせいもあるのだろう、アレンジャーやプロデューサーの作家性、個性、特徴みたいなものに対する意識があったもんだから、なぜポップスにはそういうものがないのだろうみたいなこと思っていた節もある。そういう時にアメリカン・ポップスにもフィル・スペクターみたいな存在がいるではないかということで、「オー」みたいな感じで崇め奉った部分も実はあったりするのだろう。
ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」というと思い出すのはデ・ニーロのたぶん主演第一作であるはずの「ミーン・ストリート」だ。この映画のオープニング、クレジットにかかるのがこの曲だ。監督はマーティン・スコセッシ。この映画ではデ・ニーロよりもハーベイ・カイテルのほうが印象的だった。後の名優、名監督が才気あふれる若手として、その才能の萌芽を感じさせた佳作といったところか。なんとなく心に残る映画だったけど、妙にこのオープニングとこの曲が記憶に残っている。ユーチューブで簡単にヒットしたので貼っておく。

Mean Streets - "Be My Baby"