「デトロイト・メタル・シティ」

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14日の日曜日に家族で観た。前日は「パコと魔法の絵本」を観たし、ある意味三連休は映画三昧だった。家族で映画というのはなんとなくいい感じだと思う。特に小学生の娘にとってはとてもいい思い出になるのではないか。
自分自身のことでいえば、小学生の頃によく父親と二人で映画を観にいった。記憶的にはほぼ毎週連れていってもらったような気もするが、どうだったのだろう。まあそれほど回数重ねていたということもないのかもしれない。横浜関内、馬車道や横浜西口の封切館から伊勢佐木町の二番館、三番館まで何度となく行った。観た映画の記憶とその時の情景がセットになって心に残っている。
自身の映画好きはあれがあったからだったんだろうとも思うし、映画を通じて人格形成した部分もあるだろう。小学生時代に「風と共に去りぬ」「サウンド・オブ・ミュージック」「眼下の敵」「史上最大の作戦」とか観ているのだから、映画好きにならないわけがないな。
今でも憶えているのだが、東京京橋で「風と共に去りぬ」と「2001年宇宙の旅」が隣り合わせの映画館二軒でそれぞれやっていた。私は「2001年〜」が観たかった。確か「少年サンデー」か「マガジン」なにかで紹介されていて興味があったからだ。それに対して父は「風と共に〜」を観ろと勧めた。しぶしぶ私は従った。ずいぶん後になってから、「風と共に〜」を観ておくことが大切なことなんだよと父が飲みながら語っていたのも憶えている。まああんまり根拠のあることではないのだろうが、なんとなく頷けたな。小学生には「風と共に〜」の良さのすべてを理解できるわけでもないだろうが、面白い映画、スケールのでかい映画として認識はされた。実際あの映画には映画の醍醐味の総てがあるといっても過言じゃないとは思うけど、それがわかったのは随分後のことだ。
それでは「2001年〜」はどうか。高校生くらいで初めて観て、ものすごい衝撃を受けた。「風と共に〜」とは別の意味ではあるが、やはりすさまじいスケールの映画だ。でも小学生の時にこの映画を観てどうだっただろうか。この映画の面白さの20〜30%も受け取れなかったかもしれないかなとも思う。
父が「風と共に去りぬ」を勧めたのは、単純に父自身がこの映画を大好きだったということもあるのだろうとは思う。戦後すぐだか、あるいは戦前だったか最初にこの映画を観たときはなんてすごい映画だろうと思ったとよく語ってくれていたから。でもそれとは別にこの映画には映画のスペクタクルが凝縮されているとは思う。この映画を子ども時代に観たことで映画好きになったんだろうなとしみずみ思ったりもする。
話は脱線した。「デトロイト・メタル・シティ」だ。うん、笑えた。ある部分、涙流しながら笑えた。実に面白い映画ではあった。でも、なんだこのストーリィ、この荒唐無稽さ、漫画そのものだなと思った。実際、コミックが原作である。コミックをそのままスクリーンにもってきただけ、実にお手軽である。でもまんま映画化というのはけっこう至難のわざな部分もあるにはある。コミックの超現実性と実写によるリアリティ。コミックの映像化の難しさという部分だろうか。
例えば「20世紀少年」、あれは原作コミック自体が設定、描写の部分で現実的なディティールを積み重ねている。前半部分や60〜70年代の子どもたちの描写については特にだ。だからこそ主題としての世界征服とか細菌テロとかの荒唐無稽さがある種の必然性を帯びてそうに受け取れたりもする。そういう設定のコミックだから比較的映像化は容易いといえば容易い。
一方でギャグ漫画はどうかというと、設定自体がすでにリアリティを逸脱している場合が多いから逆に実写化はつねに難しい、無理な部分を背中合わせに抱えているように思う。だからたいてい失敗する。たいていは超リアリティ部分を捨象したりすることが多いんだろう。
例えばヒットしたドラマ「のだめカンタービレ」なんかは音楽ドラマとしてのリアリティ部分とは別にのだめのコミック的キャラをギミックに強調することで、ある程度コミックのノリを面白おかしく実写化して成功しているようにも思う。それで今回の「デトロイト」なんだけど、なんつうかこうまんまコミックなんだよな。で、そう思って受け止めないとけっこうつらい部分もあったりもする。実写のリアリティ部分をぜんぶ目つぶって、とにかくシチュエーションとしての荒唐無稽さをまんま受け入れる。これはギャグ漫画だと、そう思って観ているととても楽しめる。まあそういう映画だと思った。
役者さんでは松ケンはいつものように無個性的でうまいなと思う。ノーメークの素の根岸クンが妙に気持ち悪くて、こういうのを過剰に演技できる部分もいいなと思う。そしてなにより松雪泰子の怪演ぶり。笑える。なんか全部もっていってしまったような、まあそういうインパクト。松雪のぶっ飛んだ演技見るだけでも一見の価値ありと、まあそのような映画でした。
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デトロイト・メタル・シティ - Wikipedia