妻の買い物

先日の駅までの初めての散歩で妙に自信をつけたみたいで、デイにいかない日で天気がいい時には散歩に行きたがるので、最初のうちは家の近所でという条件をつけて一人で散歩してみるように行った。家にこもっているよりもいいだろうし、もともと買い物好きだから近所のドラッグストアあたりへ行くなら気分転換になるだろうとも思った。さらにいえば、未だにクエッションではあるけれど、職場復帰なりの訓練にもなるだろうとも思った。
まあ、本心からすれば妻の職場復帰は相当に難しいだろうとは思っている。片麻痺、左腕、左足の機能全廃、一級障害者ということだけとっても相当なハードルなのに、それにさらに注意障害等のもろもろ。やはり国リハに入院していた頃と同様、長い時間をかけて主婦として、母親としての役割を果たしてもらえれば、それでいいじゃないかとも思う。それだって相当に高いハードルではあるのだから。
そういう意味では買い物もけっこうな訓練にもなるだろうとも思った。脳の左側をやられているわけではないので、言語はまったく問題ない。計算とかに関しても常人と変わりない。厳密な意味での記憶障害もないのだから、買い物とかで支障があるということもないだろう。ただしやっぱり注意の部分とか判断力、状況把握とかに問題がある。例えば片麻痺の状態で自分がどれだけの荷物を持てるかみたいなことも実は妻にとっては重要なことなんだと思う。
普通に人は買い物とかしても、自分が持てる量とかはある程度把握しながら物を選んでいるはず。まあ、キャベツと大根とジャガイモと玉ねぎを買って、さらに米5キロ買うみたいなことはまずないだろうとは思う。妻もそのへんはわかっているとは思いたいのだが、幾分かそのへんに若干怪しい部分があるようにも思っている。
月曜日には近所のトップというスーパーへ行ったらしい。行く前に職場に電話してきたし、帰ってきてからも電話があった。やっぱり心配だったから電話するようにとは言っておいた。妻の日記だか日誌によると往復ともそれぞれ20分かかり、厚揚げ、しらたき、アーモンドを購入したとのことだった。トップまでは、私なんかが早足で5分程度かかっている。まあ普通には6〜7分、女性だと10分近くかかるだろうか。とすると大体妻の場合は倍くらいかかっているということになる。まあ、これは片麻痺、杖歩行ということでいれば万々歳というところだろう。
日記についていえば、妻には入院している頃から、日々のこと記録するのも訓練になるからとノートを渡してある。入院中は小さなメモ帳に書いたり、書かなかったりだった。退院してからも最初の1〜2ケ月はあんまりつけていないようだったが、それでも夏を過ぎた頃からけっこうマメにつけるようにはなってきている。記述はたいてい何時に起きたとか、朝飯に何を食べたとかそういうことが中心。そういう意味じゃほとんど毎日同じような内容のまさしく日誌だ。思ったこと、感じたことなどを綴るとかいうことはほとんどない。でも、これもまた訓練だとは思うし重要なことだとは思っている。
そして今日は妻の話によると近所のドラッグストアに行き、それからさらにまたトップまで足を延ばしたという。やっぱり職場に電話かけてきたので、あんまり買い過ぎてしんどい思いしたとかなかったよね、と聞いてみると、案の定たいへんだったとか。買ったのは牛乳だとか野菜系などけっこう重いものだったらしく、妻の日誌にも以下のような記述がある。

初めにバイゴーに行って帰ってきてから家に荷物だけ置いてそのままトップまで行って来た。両方共重いものを買ってしまったので帰りに苦労して後悔した。もう一人の時はあまり重い物は買わない様にしよう。

やっぱりというかなんていうか。電話ではまあ仕事中ということもあり、あまり細かく聞かなかったのだが、家できちんと話をして、とにかく片麻痺、杖歩行だから買い物も軽いものを数品程度にしないと駄目と諭した。そしてこれは妻には言わなかったが、キャンバス地かなにかで、比較的軽めのショルダーバッグみたいなものを買わなくては駄目かなとも思った。左手がまったくきかず、そのうえで利き手は杖をもっている。そういう状態で買い物袋を手に持つというのが土台無理があるわけだ。たぶん軽いものなら手首に下げてという風にしているのだろう。でも、牛乳とかそういうのになるとこれはもうけっこうしんどいだろうとは容易に想像がつく。そうなるとやっぱりショルダー系を肩から斜めにかけてという風にするしかないのだろう。リュックやデイバックは麻痺した側に一人で手を入れるのは難しいだろうしということで、ショルダーバッグを今度の土日にでも物色しようか思った。