妻が会社で仲良くしていたお友だちが家に遊びにきた。妻は自宅近くのファミレスで待ち合わせをしたらしく、たぶん初めての単独での外出をした。一人で一階に降り、車椅子を出して玄関におろす。それから車を止めてあるので人一人通るのがやっとの狭い車庫を通って道路に出てから、杖を膝の上に乗せて車椅子で自走していったらしい。待ち合わせのファミレスの近くまではなんとか車に気をつけながらうまくいけたのだが、ファミレス前の歩道のあたりの段差でうまく歩道に上がれず右往左往していたところ、通りかかった若い女性に押してもらってなんとか歩道にあがったのだとか。またちょうどそんなことをしているところに友だちがタクシーで通りかかったとも言う。
まあとにもかくにも何事もなかったのでよしとしたいところだけど、後でこういうことを聞くとけっこう冷や汗ものだ。妻の車椅子での自走練習は病院での平坦な廊下に限られていた。退院後の外出では杖歩行と車椅子が半々ではあるのだけれど、車椅子はたいてい私や娘が押していることが多くてあまり自走をしてはいない。ましてや一般の道路を自走となるといろいろと制約も多くてという部分も多い。実際のところ歩道というのがけっこう曲者なのでもある。まず道路と歩道との間の段差がけっこうきつい。しかもふじみ野のこの辺りは区画整理地内でけっこう綺麗な風ではあるのだが、歩道の大部分がインターロッキングのオシャレな模様がついていたりするのだが、これがまた小さな段差となって障害者の車椅子、杖歩行の障碍になっている部分もあるのだ。
私自信はもちろん健常だからあまり細かいところはわからない。でも妻の車椅子を押しているだけでもけっこう世の中のバリアーに気づくことも多い。小さな段差のために車椅子ごとこけそうになったことも一度や二度じゃない。川越街道沿いの歩道で入間警察入り口あたりから亀久保方面へ向かうところで、たしかトヨタのディーラーがあるあたりにきつい段差があって、実際二度ばかりこけたこともあったなあ、などと具体的な場所まですぐに出てくる。車椅子を押していてさえそうなのだから、車椅子での自走での危険な箇所はどのくらいあるのだろうとまで思ってしまう。
車椅子での自走練習も、本当にきちんとやるのであれば、転倒した場合の自力での車椅子への復帰とかそういうことも必要なんではないのかなとも思う。そういう練習をする場とかもあるのだろうか。国リハでは足の不自由な若者たちが、スポーティーな車椅子で闊達に移動、行動をしていた。彼らのように頭がしっかりしていて、若く上半身の筋力を発達していれば、たぶん車椅子での転倒とそれからの回復といったことも訓練されているのかなとも思う。それに対して妻はというと、やはり脳血管障害での片麻痺、車椅子ということになると、基本は介助や見守りが前提ということになるのかもしれない。ベースの部分が違いすぎるということもあるのだろう。
それでも妻にとっては一人で数百メートルを自走していったことは相当の自信にもなったようだ。後から今回の話を聞いて、私としてはやっぱり冷や汗ものなので、休みの日に車椅子の自走訓練をかねた散歩とかもやるから、今のところは一人での外出、車椅子自走はかんべんしてくれと話をした。やっぱり危ないものは危ないわけで、けっして妻の自立を妨げているわけではないのだけれど。
妻は友だちと一緒にファミレスで楽しい午後の一時をもったようだ。それから家に帰ってきて、夕食の時間まで一緒にいたらしい。なんでも午前中のうちから妻は下ごしらえしてたらしく、クリームシチューを手伝ってもらいながら自力で作ったということだ。まあ妻にしてみれば、久々に友だちと長い時間を過ごせたようで、いろいろな意味で気分転換もできてよかったらしい。