プール事故調査委員会報告

最終報告書案を市調査委が承認
ふじみ野のプール事故
ふじみ野市の市営プール事故で、5回目の市事故調査委員会が29日、市役所で開かれた。吉野英明教育長に提出された最終報告案を、委員9人全員が承認した。委員長の富田均弁護士は、「来週中にも採集報告書を提出したい」としている。
最終報告書は①事故調が確認した事実②問題点さん再発防止に向けての市に対する提言、の3部構成になっているという。富田委員長は「プールを管理していた太陽管財と京明プランニングに聴取できなかった点で不満も残るが、市民の目線に立った報告書になったと思う」と話した。
島田行雄市長は「改めて遺族におわびした。報告書の内容を厳粛に受け止め、2度と悲惨な事故を起こさぬよう、全力を傾けます」と話した。
朝日新聞9月30日(土)西埼玉版

8月から5回にわたって行われた事故調査委員会は29日に最終報告書をまとめ承認したという。まあまとめたといっても、実際の作成執筆は市役所の職員が行ったのだろうとは思うのだが。
この調査委員会については、いつ行われたかを時系列で列挙しておく。さらに傍聴した市議さんの感想等も当該のウェブからリンク貼ってみる。
第1回 8月22日
山川市議ブログより
http://sumizumi9.tea-nifty.com/yamakawa/2006/08/post_48c3.html
第2回 8月21日
山川市議ブログより
http://sumizumi9.tea-nifty.com/yamakawa/2006/08/post_5d16.html
鈴木市議ブログより
http://www.keitarou.info/klog/index.php?c=14-
第3回 8月30日
山川市議ブログより
http://sumizumi9.tea-nifty.com/yamakawa/2006/09/post_c89a.html
鈴木市議ブログより
http://www.keitarou.info/klog/index.php?c=14-
第4回 9月13日
鈴木市議ブログより
http://www.keitarou.info/klog/index.php?c=14-
第5回 9月29日
鈴木市議ブログより
http://www.keitarou.info/klog/index.php?c=14-
民部市議ブログより
http://blog.livedoor.jp/mimbu_kayo/archives/50874455.html
傍聴者に配布されたのは鈴木市議の記述にもあるとおり、報告書の目次だけだという。ふじみ野市タウン情報の掲示板にも目次内容がアップされていたので、こちらから引用します。
http://www.fujimino.matrix.jp/ooi/cgi-bin/keiji0/wforum.cgi?no=2380&reno=2357&oya=2290&mode=msgview&page=0

投稿者 : FJN  
当該委員会の第5回審議/会議(2006.9.29<金>16:05-16:45)を傍聴しました。
傍聴者への配布資料が3種ありました。
そのうち、最優先で一つ紹介します。
【ふじみ野市大井プール事故調査報告書(案)の目次】↓です(算用数字はページ番号)。

◎ はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・03

●第1章●大井プール事故調査委員会において確認した事実・・・・05
   第1節 本件プールの沿革及び概要・・・・・・・・・05
   第2節 本件プールの構造・・・・・・・・・・・・・11
   第3節 管理運営体制・・・・・・・・・・・・・・・13
        1 市における担当・・・・・・・・・・・13
        2 民間委託・・・・・・・・・・・・・・14
           (1)民間委託の理由・・・・・・・14
           (2)業者の選定方法及びその基準・15
           (3)履行状況のチェック・・・・・18
        3 本年度に至るまでの受託業者・・・・・21
        4 国からの指導と市の対応・・・・・・・21
        5 埼玉県からの指導と市の対応・・・・・22
   第4節 実際の管理運営状況と市のチェック・・・・・・・・24
        1 契約上の報告義務の履行状況・・・・・24
        2 危険箇所のチェックリスト・・・・・・25
        3 吸水口の管理状況とチェック状況・・・25
        4 委託業者の無断丸投げと隠ぺい工作・・26
        5 安全教育・・・・・・・・・・・・・・26
        6 人員配置・・・・・・・・・・・・・・27
        7 市の対応・・・・・・・・・・・・・・28
   第5節 事故当日の事故の経過・・・・・・・・・・・・・・29
        1 入場者、整理体制、責任者等・・・・・29
        2 事故の発生・・・・・・・・・・・・・29
        3 監視員の対応・・・・・・・・・・・・30
        4 管理責任者の対応・・・・・・・・・・31
        5 事故後の対応・・・・・・・・・・・・31

●第2章●大井プールの問題点の整理・・・・・・・・・・・・・・33
   第1節 問題点を整理するに当たって・・・・・・・・・・・33
   第2節 施設の構造上の問題・・・・・・・・・・・・・・・34
        1 プールの構造基準・・・・・・・・・・34
        2 流水プールと起流ポンプ・・・・・・・35
   第3節 管理運営体制上の問題・・・・・・・・・・・・・・39
        1 市教育委員会・・・・・・・・・・・・39
        2 受託業者・・・・・・・・・・・・・・39
   第4節 実際の管理運営上の問題・・・・・・・・・・・・・41
        1 市教育委員会・・・・・・・・・・・・41
        2 受託業者・・・・・・・・・・・・・・41
   第5節 事故当日における具体的対応上の問題・・・・・・・43
        1 市教育委員会・・・・・・・・・・・・43
        2 受託業者・・・・・・・・・・・・・・43
   第6節 問題点の根底にあるもの・・・・・・・・・・44

●第3章●再発防止に向けてのふじみ野市に対する提言・・・・・・45
   第1節 施設の安全対策について・・・・・・・・・・・・・45
        1 プールの安全対策・・・・・・・・・・45
        2 市有公共施設の安全対策・・・・・・・46
   第2節 施設の安全管理対策について・・・・・・・・・・・48
        1 プールの安全管理対策・・・・・・・・48
        2 市有公共施設の安全管理対策・・・・・48
◎ むすびに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52

◆資料編◆
   1:ふじみ野市大井プール条例(平成17年ふじみ野市条例第74号)
   2:埼玉県プール維持管理指導要綱
   3:大井プール管理業務委託契約書
   4:ふじみ野市委託契約約款
   5:大井プール管理業務仕様書
   6:ふじみ野市大井プール事故調査委員会設置要綱
   7:ふじみ野市大井プール事故調査委員会審議経過
   8:ふじみ野市大井プール事故調査委員会委員名簿

添付された資料編にもプール自体の設計図等がないことや本文でプールの構造自体についての記述が2ページであることから、あまり多く議論されていないのではないかと思う。
プール事故についての考えるにあたって、いろいろなブログ、ウェブサイトを閲覧してきたが、その中でもっとも参考になったのが、元大阪府職員で水問題の専門家である有田一彦氏のサイトだ。そこで有田氏は今回のプール事件の原因は、業務委託された業者の問題に矮小されることなく、もともとのプール自体の構造上の問題もあるのではないかと指摘している。http://www.arita.com/ar/archives/2006/08/23/poolOut.html
有田氏は大井プール事件の原因や責任について幾つもの的を得た指摘をされている。なぜ出水口に格子があるのに、より危険なはずの吸水口に格子がないのか。それはプールの建設業者と設備業者の間の責任分界が明確でなかったことによるのではというのが有田氏の見解だ。

一般に、ポンプなどの機械電気設備工事は土木建築業者とは別の業者が行うのが公共工事の通例です。このプール工事でも吸水管設備はポンプ設置業者の担当工事になっていたのではないでしょうか。その工事の責任分界が設備業者と建築業者との間で明確でなかったため、建築工事の方はプール壁面にあった出水口の安全柵だけ施工し、設備業者は自分の担当かどうかもわからないまま、吸水口側の安全対策は取り残されてしまった

そうなると施行責任者であるふじみ野市=旧大井町の責任は大であることは明白なる。

もし施工図面に吸水口の安全対策がないのなら当初から「悪魔の穴のプール」だったことになり、設計施工業者とオーナーのふじみ野市の責任はきわめて重くなります。

そのうえで有田氏は市の調査委員会の議論の方向性が市の責任を回避する方向性での原因追求に向かっていることへの危惧を表明している。

ふじみ野市が始めた事故調査委員会をみていると、プール本体の問題には一切触れず、受託業者やプール管理の問題に責任を押しつけようという気配が出てきましたので、敢えて私の考え・推論をここに公開する次第です。

問題はプール自体がいつ人を吸い込んで死に至らしめてもおかしくない欠陥を抱えた殺人プールであった可能性があり、もしそうであるなら、それを施行し、長い間放置してきた自治体の責任が問われる可能性があるのだと思う。なのに、調査委の報告書目次から浮かび上がってくるのは、業者をメインにしたプール管理運営責任だけに歪曲しようという意図のようにも思える。市にも責任の一旦はあります。しかし悪いのは管理運営を行った業者です、というような言い逃れだ。
しかも調査委員会の報告は、ある意味では市の原因追求、責任追及の端緒であるべきだと思うのだ、なんとなく流れとしてはこの報告が行政上の幕引きになりそうな予感がある。そんなことがなければいいのだけど。
7月31日におきた事件はすでに二ヶ月を経過している。県警による捜査状況はどうなっているのだろうか。プール管理の委託された業者(太陽管財、京明プランニング)や市担当者への刑事訴追までいきつくのだろうか。県警は業務上過失致死傷罪での立件を目指しているのだろうか。捜査に二ヶ月というのは長いのか、これだけの事件だからまだまだ時間がかかるのかどう、そのへんのところが実はわからない。
しかし市関係者はどうにも県警の捜査を理由に、原因追求、責任追及という自浄行為から逃げを打っているような気がしてはならない。そのうちに人の噂も○○日とやらで、風化されるのを待っているかのようだ。そしてそしてもういい加減忘れ去られた頃に、業者および市の担当者あたりが起訴される。最終的に業者に執行猶予つきの懲役刑、市担当には50万の罰金あたりで本当の幕引き。後は遺族への損害賠償、場合によっては民事訴訟みたいなことなのだろうか。
大井のプールの歴史は、現ふじみ野市長、島田氏の大井町長在任期間とほぼ重なっている。彼に最終責任があることは明白だし、行政のトップとしてきっちり落とし前をつける以外にはないのではないかと思う。もし業者や市担当が訴追された場合は、引責辞任をするだろうという観測もあるようだが、どうだろうか。辞任よりも今後の再発防止策を徹底させることがより重要だという意見もたぶんにあるだろうが、問題のすりかえだと思う。ふじみ野市には島田氏に代わる人材がいないという話もあるだろうが、もしそうだとしても一度辞任したうえで再度立候補すればいいだけのことだと思う。
今回の事件は偶発的な事故ではなく、市の公共施設に対する施行管理、運営管理のずさんさから生まれたまさしく事件であり、自治体の犯罪だ。将来ある小学生の娘さんの命が奪われているのだ。市のトップが引責辞任しても余りあるような重大事件だと思っている。
被害者の親御さんからすれば、どんな形で市が責任を究明しても、それでもけっして払拭さることのない悲しみ、憤りがあるあるだろうと思う。
同じくらいの子どもを持つ親としては、なんともやるせない事件だ。最近は川口での園児死傷事故など胸を痛める事件が続いてもいる。小さな子どもたちがいきなり命を奪われていく。そんな事件をもう耳にしたくない。そんな気持ちでいっぱいだ。しかし耳をふさぎ、目をつぶってやり過ごすわけにいかない。自分たちはこれらの事件をけっして忘れてはいけないのだろうし、原因や責任が追求されるように問題意識を持ち続けることが必要なのだと思う。それなくして再発防止がなされるわけがないのだ。悲劇が繰り返されていく。現代を生き抜いていくということは、そうした悲劇を見つづけていくことでもある。あるいはいつか自分が、自分の家族が悲劇の当事者になるかもしれないということだ。
自分にとっては、今回のプール事件に関心を寄せたのは、たまたまふじみ野という自分の住む町で起きた事件であったからだ。さらに被害にあった女の子が自分の娘と同年代だったことで親御さんに感情移入する部分もあったのだと思う。でも理由はなんにしろこの事件をとにかく忘れないことが一市民の自分にとっては必要なことだと思う。もう子どもが公共の施設での事故で死ぬことがないように、安全な町作りが徹底して計られることを心から望む。そのためにもこの事件が風化されてはならないと思う。