事故調査報告書の資料編に添付されていたふじみ野市大井プール管理業務仕様書を読んで思いついたことをいくつかあげてみる。
まずこの仕様書には別記したとおり、安全点検についての項目が一切ない。女児を飲み込んだ吸水口についての点検も防護柵についても点検項目等になっていない。それ以前にとにかく清掃についてのみ細かい項目を設けているだけだ。この仕様書をみるかぎり、プール管理業務の主たる仕事はお掃除だったんだねと思いたくなる。
次に8.受託者の責務についての項目をみると「(4)事故が発生し、その原因が受託者の故意又は過失による場合は、受託者が責任を負うこと」とある。今回の事故についていえば、吸水口の防護柵の針金留めを常態化させてきたことの主たる責任は、受託業者である太陽管財にあるだろう。しかし、下請けしていた京明プランニングは警察の捜査等に対して、「ふたを針金で固定することは6、7年前、合併前の旧大井町側が了承し、作業には町職員も立ち会ったと聞いている」と証言している(読売オンライン8月6日)。もちろん市側はそれを否定し、針金による固定がいつからかは不明だとしている。
もし旧大井町の了承のうえではじまったことであれば、受託業者だけの責めというわけにはいかないことになるだろう。それ以前に今回の事件が委託業者の安全管理の不備だけでなく、そもそもプール自体の構造上の問題に原因があるとすれば(それは吸水口に格子状の吸い込み防止金具がないことでも明らかではあるのだが)、今回の事件の主たる過失責任はふじみ野市にあるということになる。
さらに仕様書の10.委託金額の支払い方法で、「委託金額については、2回(1回目は、8月中に委託金額の2分の1、2回目は、業務完了後とする。)に分けて支払いをするものとする。」とある。そこでふと思った疑問なのだが、ふじみ野市と太陽管財との間の今年度のプール管理業務委託契約はまだ生きている=継続されているのだろうか、ということだ。
山川市議はブログで、太陽管財がふじみ野市との間で幾つもの委託業務契約を行っていること、そしてふじみ野市がその解除を申し出たのだが、逆に違約金を持ち出されて拒否された経緯を報告している。
http://sumizumi9.tea-nifty.com/yamakawa/2006/09/post_b8e1.html
http://sumizumi9.tea-nifty.com/yamakawa/2006/10/post_b560.html
他の業務についてはわかりました。それでは本件のプール管理業務契約はどうなっているのだろう。事件の後すぐに契約解除となっているのかどうか。これは市にでもメールで問い合わせてみればすぐにわかることなのだろうとは思う。よもやとは思うけど、まだ契約が解除されていず、さらには8月中に1回目の支払いなんていうものが完了されているなんてことはないだろうね。アハハ、まさかね。
最後に11.その他で「この仕様書に明示されていない事項については、市の指示に従うこと」とある。この単純な1行が実はひじょうに重たいものになってくるのではないかと思う。仕様書には吸水口の防護柵についての明示がない。当然、防護柵のねじ留めについても、針金留めについてもだ。ましてや定期的な点検、安全管理についての記述もない。となると、別途市が受託業者に指示を出すべきであり、業者はその指示に従うことで業務を遂行することになるわけだ。
報告書での安全管理についての市の基本的な立場は、報告書26Pにあるように「プール管理業務は委託であるので、業務を受託した業者が必要な点検作業を行い、市教育委員会(体育課)は履行の確認をすることで十分であるとの認識」なわけである。しかし、それはまず管理業務仕様書に規定された安全管理項目が前提になるのではないかとも思うのだが、どうだろうか。
これでは市の過失責任はまず確実にまぬがれないのではないかと思う。今後女児遺族から請求されるだろう賠償問題に対して市はどう対処していくのだろう。賠償額がどれほどのものになるかはわからないが、これは当然公費で対応せざるを得ないのだと思う。
今回の報告書でも最初に作成の主眼が「原因関係者の責任追及にあるのではなく、二度とこのような痛ましい事故が起こらないような再発防止策の提言にあり」とされている。こうした論調は市議会の与党議員の間でもよくでてくる。「私はこの事故調査を特定の誰かの責任問題にし処罰を与える内容であってはならないと考えています。」(民部市議のブログよりhttp://blog.livedoor.jp/mimbu_kayo/archives/2006-10.html#20061020)
しかしだ、賠償問題等が生じた時にそれが公費によって賄うことになるとすれば、納税者としてはそれを責任問題として俎上にのせざるを得ないのではないかと思うのだがどうだろう。そのへんに無自覚なまま、血税使って無意味な委員会を立ち上げ、無意味な報告書を作ること、責任問題を棚上げにして、さらに税金をつぎ込むことになる、総花的な安全対策をでっちあげることを簡単によしとはできない。
役人も議員も他人の金(税金)を使ってしのぎを行っていることを再確認したほうがいい。党派性丸出しの流会騒動、臨時議会と議案の否決、さらなる臨時議会の召集、それらにもそれぞれコストがかかっている。それもまた税金が使われているのだから。責任問題の徹底追及、責任者の処罰、これもまた納税者としては当然要求すべきことだと考えるところだ。