プール事故について

http://www.saitama-np.co.jp/news07/31/25x.html
http://www.asahi.com/national/update/0731/TKY200607310376.html?ref=rss
なんともはや、とんでもない事件=事故によってふじみ野の名前が全国区になってしまった。職場などでも、例のプールにいったことがあるかなどとも聞かれる。冗談半分に世間を騒がせたことを一市民として遺憾に思うなどとのたまっている。しかし、なんでこんな普通あり得ないだろうというような事件が起きてしまったのだろう。被害にあった女の子のことを考えると、また親御さんのことを考えると、本当に月並みな表現で薄っぺらな言葉でしかないけれど、居た堪れない気持ちになる。
このプールには一度だけ、子どもが3〜4歳くらいの時に行ったことがある。それほど大きくない市民プールだ。まあ売りといえば、今回の事件が起きた流れるプールくらいというところだ。しかしなんでこんな事故が起きたのだろうとはつくづく思った。事件の一報から当日夕刻のテレビなどでの報道を見るにつけ、なんで流れるプールの吸水口のふたがとれるのかということ、またふたがはずれた段階でなぜプールから人をすべてあげるよう緊急の指示が出せなかったのか、などというまあ月並みな疑問を並べ立てていた。市民プールはたいていの場合、安全と健康管理のため、一時間に1回休憩時間をもうけて、プールから人をあげるようにしているくらいだ。安全のためにそうした指示を出すのが当たり前だろうと思った。
するとだ、それ以降の報道によって出るわ、出るわ。月並みな疑問に一つ一つ答えが出てくるように、そのずさんなプール管理の実態がでてきた。曰く、プール管理を入札した企業が別企業に管理を市に無断で丸投げしていたこと。下請けの管理会社には安全管理マニュアルなど一切なかったこと。吸水口のふたはボルト留めなどされていず、すべて針金で留められていた。学校のプールやそれに準じる市民プールに対する国の管理基準を市が見落としていたこと、などなど。これはまさしく人災というか、起こり得るべく起こった事故=事件だったということだ。プールの吸水口のふたは何年にもわたって、針金留めだけで固定されていた。ということはいつ今回の事件が起きてもおかしくない状態が続いていたということだ。たまたまあの日、被害者の女の子が遭遇しただけで、それがもっと前に市内、町内の別の子どもであってもなにも不思議はなかった。そして明日、遊びに行った私の娘であっても何の不思議もないということだ。
市は内部調査委員会を作って事故の実態を調べていくという。しかしどこまで踏み切れるかはクエッションだ。何年にもわたって丸投げが行われていたというのに、それを市あるいは旧大井町の職員が知らないでいたということがあり得るのかどうか。入札企業からのキックバックを含めた利権もあった可能性だってある。役所の職員の誰かが小銭を儲けていた可能性だってある。責任の所在、不正、そういったところまで踏み込んだ調査が出来るのかどうかというと、これも疑問なところだ。
http://www.city.fujimino.saitama.jp/info/detail_157.html
しかしすべての小中学校のプールが安全が確認されるまでの間使用禁止になるという過剰反応はまたすごい。この余波はじつはわが娘が通っている認可保育園の学童保育にも影響を及ぼしている。グランドに夏だけ儲けられた、仮設のプール(ちょっと大掛かりな水遊び用プール)すらもが使用禁止になってしまったということだ。たぶんお役所仕事だろうから、今年のプール使用はないだろう。ふじみ野市の小・中学生や保育園児たちはプール遊びや水遊びを今年はもうできないということだ。これもどうかな〜とも思う。
お役所仕事にしては今回のプール使用禁止は素早い対応ではあると思う。原因調査や安全確認も重要だ。内部調査委員会にも期待したい。でもね、出来れば期限を決めて仕事を行って欲しい。調査委員会を立ち上げました。でも、だらだら議論して、人の噂も75日、いい加減耳目関心が薄れたころに、今後の安全確保のため来年夏に向けて安全マニュアルの策定を行うくらいのいい加減決め事でしゃんしゃんになりそうな気もするのだよ。
しかし旧大井町、そしてふじみ野市の対応について改めていえば、ミニマムな町というぬるま湯的な環境で、まあいい加減な管理対応でやってきたということなのだろう。旧大井町は近隣地区に比べてあまり借金がなかったらしいとも聞く。それはというと実はとにかく金のかかる事業、政策をかなりのところ先送りしてきたためとも聞いた。ハコ物も少ない。民間活力導入にはけっこう積極的だったとも。まあ金けちってきた挙句の事件という部分もあるのかもしれないなとも思った。
ちなみに幾つかこのプール事件について書かれたブログではこの人のものが最も参考になった。http://rikonzuma.blog66.fc2.com/blog-entry-27.html#pagetop
実際、今回の事故はあまたあるだろう民間委託による経費節減の果てに起きたという部分もあるだろうとは思う。民間委託すれば行革につながる。民間は民間で下請け孫受けを徹底化する。下請け業者が利益だすためにすることは人件費の削減だね。人件費削れば、まあまともな人材は揃わない。そうした人によって行われる安全管理がどういうものになるかというと、吸水口のふたを針金留めしちゃうということなんだろう。この手の図式はある意味、小泉改革が推し進めてきたことの負の部分でもあるのだろうとは思う。
でも、すべての民営化、民間委託が駄目出しされるということについては疑問もある。硬直化したお役所仕事よりは遥かにスムーズで質の高いサービスを提供し得ることも民間ならではというところもあるのだ。例えば保育民営化についても、保育の質の低減等を声高に叫ぶ人もいる。でも民間による認可保育園や無認可保育園でも質の高い保育を行っているところだって多数ある。
うちがずっとお世話になっている風の里保育園などはその典型的な存在だと思う。8時まで子ども面倒みてくれる。うちみたいに8時過ぎが常態化しても文句らしい文句いわれたこともない。これがお役所保育園だったらどうだっただろう。何人かの知り合いによると延長保育の7時を過ぎようものなら公務員保育士の先生に目くじらたてて怒られることざらだとも。保育の質のほとんどが保育士の人件費イコールであるといわれる中で、年功序列で給料のあがる公務員保育士が常に質の良い保育サービスを提供しているのかは、ちょっと疑問でもある。
まあ民間企業は原則利潤追求が原則だから、サービスの質と費用は反比例することはなかなか難しいのだろう。質の高いサービスをチープに提供するとなると、結局どこかで人が割りをくっているのだろうとも思う。志の高い保育士の先生が低賃金で長時間労働を強いられているのだろうから。
話はかなり脱線。でも今回のふじみ野のプール事件(あえて事故とはいわないよ)だけは、責任等を徹底追及してもらいたい。とにかくね、管理会社の責任だけに終わったら駄目だよ。やっぱり市の責任を徹底しなくちゃね。