娘のいない夜

 前夜、義理の弟と深酒をした。妻のこと、娘のこと、長野の実家のことなど様々なことを語り合った。気がつくと4時を回っていた。さすがに飲み過ぎ、睡眠不足だから、仕事はかなりは辛かった。もう歳なんだから、こういうのは止めなくてはな〜と実感する。マジに体壊すことになる。こういう状況だからシャレにならない。
 前回、弟が泊まりに来たときもけっこう長い時間酒を飲んだが、その時に万が一自分になにかあった時には、娘のことを頼んだ。具体的な話としてではなく、漠然とだが娘を養女として引き取ってもらいたいと頼んだつもりだった。実際のところ、妻がこういうことになって、万が一私になにかあったら娘はどうにもならない状況になる。一人っ子で小さな娘は、それでなくても妻と私が死んだら天涯孤独の身になる。子どものいない弟夫婦に育ててもらうのが一番良いとずっと考えてはいた。
 今回、弟はその話を自分の妻にも伝えてある。妻もそのつもりだと言ってはいるが、とても重要なことなのでもういちど自分の妻の前でも話して欲しいと語った。もっともなことだと思うし、とてもそういう態度には好感が持てた。改めて娘のことをお願いした。ただしあくまで自分に万が一のことがあった時ということでの話しとしてだ。
 この日は弟夫婦は娘を連れて病院へ行き、その後そのまま長野へ向かった。娘は今日から4〜5日の間、長野の実家で妻の両親の世話になることにしてあったからだ。それというのも今日、明日はまだ学童が朝から子どもを預かってはくれるのだが、厨房の掃除とかもあるので、弁当持参することになっていた。毎朝弁当作るのもしんどいし、これまでずっと正月は長野で過ごしていたが、今年は妻のことでそれも難しいので、せめて娘だけでも長野へ行かせてはどうかと思った。娘は祖父、祖母が大好きだし、家を継いでいる独り者の長男のことも慕っている。娘に聞くとぜひ行きたいということだった。そういうわけで、もともとは娘は私が長野へ連れて行き、トンボ帰りするつもりでいたのだが、私のことを気遣って弟夫婦は忙しない年末の時期にわざわざこちらまで来てくれたのだ。
 仕事を終え妻を見舞ってから家に帰ったのだが、娘のいない家はしんとしていて、なにかとてつもなく大きな欠落感につつまれている感じがした。長野の実家に電話をすると、娘は元気一杯の様子だ。祖父、祖母に歓迎されてハイになっている様子で父親を恋しがっているところなど微塵もない。
 前夜の寝不足もあり、私は食事をとることもなく、TVをつけて二時間近くぼーっとしていた。何を観ていたのかもあんまり定かではない感じがした。たぶんスマップの特番をやっていたような気もするな。
 なにか腹に入れなくちゃと思い立ったのは10時過ぎのことだったけど、飯作る気力も萎えていたので近所のラーメン屋に行き遅い夕食をとった。欠落感とともにとてつもなく孤独な気分の夕食だ。久々一人でなにか趣味的なことを、そう読書したりDVDで古い映画を観るという気もならなかった。