毛越寺周遊 (10月16日)

 中尊寺の後に向かったのは毛越寺。まあ中尊寺から毛越寺というのは平泉観光の定番中の定番。ここも三度目になるのだが、最初の時のことはまったく記憶にない。ただし2012年に行ったときのことは、けっこう鮮明に覚えている。美しい大泉が池の周囲を巡り庭園を散策するのはけっこう印象に残る。ここは日本最古の作庭書『作庭記』の技法を伝える浄土庭園だが、東北の地に平安記の寺社の遺構や庭園が残されているのは、奇蹟に近いことなのではないかと思えたりもする。

天台宗 別格本山 毛越寺

毛越寺 - Wikipedia

 そもそもこの毛越寺(もうつうじ)が最初は読めなかったな。まあ普通に読もうとすると「もうえつじ」くらいに読んでしまう。パンフレットに読みについて解説してあるが、越は慣用音で「オツ」と読む。そのため「もうおつじ」が「もうつじ」となり「もうつうじ」に変化したのだという。日本語で同じ言葉、漢字が様々な読み方をされることが多く、多分に外国人の日本語習得の障壁になっているのではないかと思ったりもする。まあ日本人でもけっこうこの行く通りかの読みには頭を抱える。

 

 久々に訪れてみると庭園内の雰囲気が前回の記憶と少し異なっている。美しい庭園であることには変わりはないのだけれど、どこか10数年前の記憶は美化されていて、それこそ絵にも描けない美しさみたいな感じがしていたのだが。

 多分、前回はよく晴れていたせいで、青空とそれが映る池の水面や光にきらきらする部分などで、美しい庭園というイメージが倍加されたのかもしれない。今回はというと、天気もすっかり回復していて、青空ものぞかせていた。でも快晴とまではいかず、雲もまだ多い。そして時間も3時過ぎで夕方に近くなってきつつあった。そういう部分が前回とはだいぶ違っていたかもしれない。

 

 

 中尊寺もそうだったけれど、毛越寺でもまだ紅葉は進んでいない。でも一部ではオレンジ色に染まった木々もあり、水面に映ってなかなか美しい。

 

 池を巡っていてちょうど対岸の方までいくと、遣水(やりみず)の遺構という小さな水路の跡を見つける。これは山水を池に取り入れるための水路であり、谷川を流れ下り蛇行しながらゆったりと平野を流れる川の姿を表現していて、池は海に例えられているのだとか。

 

 

 水底には玉石を敷き詰めて、流れに水切り、水越し、横石などの意志を配している。『作庭記』に記されているこれらの技法を今に伝える貴重な遺構なのだとか。この遣水の遺構で、毎年5月の第4日曜日に平安時代の遊びである「曲水の宴」(ごくすいのえん)が開かれるという。遣水に鳥の形をした小さな舟の上に盃を載せて流し、小舟が通りすぎるあいだに和歌を詠む遊びだという。

 今、放映されている大河ドラマ『光る君へ』の中で、藤原道長が主催した曲水の宴が優雅に行われているシーンがあって、けっこう興味深く思ったものだ。NHK大河ドラマはこれまでまったく見ていなかったのだが、なぜか『光る君へ』はかかさず観ている。これも歳とったせいかもしれない。

 でもテレビで興味を覚えたことを、リアルにどういうところで行われているのかを見るというのも、なかなか面白いことでもある。『光る君へ』の影響もあってか、5月には滋賀の石山寺や京都の宇治に行ってみたりもした。こういう楽しみ方もあるということだ。