平泉に来るのは三度目。一度目はおおよそ40数年前。年末の時期で夜行に乗って早朝にたどり着いたのでただひたすら寒かったことだけを覚えている。買ったばかりの天山という中国のメーカーのダウンジャケット着ていたような記憶がある。まだダウンジャケットは登山者のアイテムで、ファッションジャケットじゃなかった頃だったか。その時の中尊寺本堂や金堂の記憶もない。ただ能楽堂だけはなぜか鮮明に覚えていた。次は2012年のオヤジ旅行。月見坂をオヤジたちがダラダラと登ったことだけ覚えている。
今回の東北旅行は、妻が中尊寺に一度行きたいとずっと言っていたので企画した。でも車椅子で月見坂を登るのはちょっと無理だろうと思っていたので、中尊寺は難しいということを話していた。でも調べてみると、車を月見坂下の町営駐車場に止めるのではなく、かなり上の方まで行けることが判った。坂の上駐車場というところで、本堂や金色堂に割と至近なところらしい。ここに止めれば車椅子を押してもワンちゃんいけるかもしれない。多分、土日はこの坂の上駐車場、下の町営駐車場もいずれも混むだろうから、行くならウィークデイだろうということで、いきなり初日に訪れることにした。
まずナビには坂の上駐車場の住所「岩手県西磐井郡平泉町平泉衣関76」を入力。その案内の通りに進む。月見坂下のあたりに来ると、町営の第一、第二の駐車場がすぐに見つかるが、そこに坂の上駐車場の看板も実は出ていた。自分の車の前にも1、2台坂を上っていくのでその後ろについていく。ほんの少し上ったところ、道路の右側に有料の坂の上駐車場がある。時間は11時半頃で、砂利の駐車場にはまだ余裕がある。身障者用のスペースはないが、出来るだけ左側にスペースがとれるところに止めた。
駐車場を出て左に行くと本堂の方に行く道がある。ただし本堂の直前に階段があるとは事前に調べておいた。そして右に行くとやや坂道ながら車椅子を押してなんとか登れる。登りきるとそこは右手に宝物館、左手に金色堂のところに出る。着いた時は小雨模様で、妻には傘をさしてもらい、自分は濡れながら車椅子を押す。
天気予報によると1時過ぎには雨が止むということなので、まずは宝物館に入ることにする。ちなみに宝物館の左側に土産物の売店があり、その横に車椅子用のトイレがある。一般参拝客用のトイレはその右の階段を下りたところにある。
宝物館は正式には「宝物館讃衡蔵(ほうぶつかんさんこうぞう)という。館内に入るといきなり見事な仏像丈六仏(じょうろくぶつ)が迎えてくれる。中央に阿弥陀如来、左右に薬師如来という3体だ。
展示物の中でもっとも驚いたのが国宝の《金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅図》(こんこうみょうさいしょうおうきょう きんじほうとうまんだら)。紺地に金泥で写経され、その写経によって描かれた宝塔である。写経であり、曼荼羅であり、芸術作品でありながら、ある種の工芸品でもある。写経に秀でた僧侶の作品なんだろうか。なにか中世ヨーロッパの教会でえんえん描き続けられてきた美しい写本を思わせるような感じがした。芸術と宗教の親和性を改めて思ったりもした。
とにかく金泥に描かれた仏塔がすべて写経であるという細かさ。ある意味、オブセッションのように空間を埋め尽くす欲求に従って経文を連ねたような、そんな感じさえした。
国宝-絵画|金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅図[中尊寺大長寿院/岩手] | WANDER 国宝
宝物館を出ても雨は霧雨がずっと続いていて、時折少し強くなったりする。とりあえず本堂の方に回ってみる。本堂には靴をぬいで普通に中に上がることができるので、こちらでも雨宿りすることにした。
その後は参道を戻って金色堂に。参道の紅葉はまだ緑が濃く、中尊寺の紅葉はまだまだのよう。
ウィークデイの昼時、しかも小雨が降る空模様だったけれど、けっこう観光客も多い。自分たちのような高齢者、外国人観光客、特に中国系のバスツアーの人たち、さらに私服ながらおそらく高校生の修学旅行かなにかの集団などなど。やはり中尊寺は人気観光スポットなんだなと、自分たちもその一員だけど、改めて観光客の多さに驚いたりした。そして高校生たちの一群の後に従うような感じで金色堂に。
その後は能楽堂や白山神社の方に回る。以前来た時は展望スペースがあったが、そこは観山亭というレストランが建っていた。
中尊寺では10数か所でそれぞれ御朱印が頂けるようだ。なにか前進するごとに御朱印みたいな感じだろうか。とりあえず宝物館讃衡蔵、本堂、白山神社の三か所で頂くことにした。