WEB「社会学」の試験終了

 明け方まで社会学試験の答案作りをしていた。問題は5問あって、実際に出るのは1問だけ。それぞれの問題は1200字程度の論述式。1問か2問ヤマはるかと思ったが、今回は律儀に全部の問題の解答を作ってみた。

 すべて終了してからWEBサイトの科目の試験を開く。制限時間は1時間。実際の問題はというと、一番文章的にはこなれていないというか、散漫な感じのするやつだったけど、まあ仕方がない。シンプルノートで作っておいた論述をコピーして貼り付けるだけ。時間にして10分も経っていない。試験も様変わりしたものである。

 提出ボタンをポチってサイトをとじて終了。窓のカテーンを開けると、なんと雪が降っている。3月の雪というのも珍しい。

 社会学はテストの前にレポートを提出している。5つの設問をそれぞれ650字程度で論述。最後の1つは1400字程度。そのうえで試験は1200字だから、たった2単位の一般教養科目とはいえけっこうな分量だ。こういうのを普通にこなすとなると、今の大学生も大変だなと思ったりもする。

 50年近く前の自分の学生時代のことを思うが、そんな学習したような記憶がほとんどない。授業もほとんど出ず、雀荘と部室を行ったり来たりしてたし、試験はほとんど一夜漬けだったか。荒れた大学だったので、そもそも試験があったのは2年だけ。あとはレポートだけだったような記憶がある。

 それを思うと還暦大学はなんと勤勉なことか。つくづく思うのは学生時代にもっと勉強すべきだったとか、30代、40代にもっとさまざまな学びを体験すべきだったとか、まあその手の繰り言だ。

試験問題は以下5問中1問。

  • 社会で男女が期待されている役割、並びにその役割のために生じている問題についてまとめる
  • SNSにおけるコミュニケーションについて、新聞との違いをふまえその特徴をまとめる
  • ポストトゥルースとはどのようなもので、それに対していかなる対策をとることができるのか、自身の考えをまとめる
  • 「生/死の管理システム」の利点と問題点を、具体例に即してまとめる
  • 「連関の社会学」の考え方を理解した上で、身近な事例について考えまとめる

 そして書いた答案は以下。正直出来が悪いが致し方ない。「ポストツゥールース」や「連関の社会学」といった聞き慣れない言葉に困惑し、それを調べたりするのに時間がかかり過ぎた。まあ普通に考えれば高齢化社会という状況のなかで一番出やすいのは「生/死の管理システム」一択だったかもしれないか。

 生/死の管理システムのもとになる考えは、ミシェル・フーコーが提起した「生権力」という考え方による。それはもともとは近代以前の古い王政などの強権力が、民衆に対して有する死に対する権利(殺す権利)に対して、近代以降の政治権力が民衆の生を管理・統制することを主眼とした生権力に転換されてきたという主張にある。その生権力の一つとして、出生・死亡率の統制、公衆衛生、住民の健康への配慮などの形で、生そのものの管理を目指すことにある。この生権力による生/死の管理は、主に医療として行われてきた。
 医療の進歩により超高齢下社会となった日本では、健康寿命を超えた高齢者の生/死は基本的に医療によって管理されてきている。具体的には病院医療が生/死の管理を担っているといっていいのではないか。
 厚労省の調査では、住み慣れた自宅での在宅死を希望する人は7割近くにも及ぶが、実際の在宅死、病院死の割合では最近でも7割の人が病院死しているというデータもある。また病院医療は患者を治す=延命することが目的とされており、健康寿命を過ぎた高齢者が安らかに死を迎える場としてはそぐわない部分もある。
 超高齢化社会の中で医療費の増加、医療資源のひっ迫などもあり、また介護を受ける高齢者を支える在宅医療や在宅介護をすすめるため、国は2004年に医療介護一括法を制定し、病院や施設の負担を軽減し、医療と介護を地域で一体となって進める「地域包括ケアシステム」の構築が推進されてきた。これにより、医療、介護、生活支援などの各種サービスによって、可能な限り住み慣れた地域で、自宅で、人生の最期を迎えられるような方向性が示されている。
 これはある意味で、国家による生政治的な生の管理から、人の死の管理をも行う意味合いもある。それにより病院での過度な延命治療の末の病院死から、本人の希望にそった形での在宅死を可能にするインフラを整備していくという部分だ。
 一方で地域包括ケアシステムは、国にとっては医療・福祉コストを抑えるという思惑もある。高齢者人口の増加が予想されるなかで、現在の医療保険介護保険制度をなんとか維持していこうということである。また地域包括ケアシステムが十分に確立されていないため、実際のところでは在宅医療や在宅介護が、本人(患者=高齢者)やその家族に大きな負担を伴っている。それは経済的な負担とともに、介護を担う家族の物理的負担にもなっている。特に少子高齢化社会にあっては、後期高齢者の両親を高齢者の子どもが介護するという老々介護の問題も指摘されている。
 さらに在宅で対応できない場合は、介護をメインにした介護施設への入所となるが、低額で入所できる特別養護老人ホームは満杯状態にあり、受け入れ可能な有料施設は入所費用が高額となっているため新たな負担増が強いられる。さらに介護労働の賃金の安さなどから、介護労働者の不足や、その質の問題もあり、十分なサービスが提供できないといったことも生じている。
 病院での生の管理、そして在宅や施設での死の管理、いずれも満足のいくものになっていないなど、生/死の管理システムは道半ばというのが実相でもある。