仕事を辞めるにあたって

 5月に体調を崩した子どもは8月から復帰したはずなのだが、次の案件が決まらないのでずっと待機中である。IT業界でこういうのが普通なのかどうかわからない。でもこのままでは経験も積めないし、子どももSSEという派遣型での勤務には不安もある。そういうことで現職を辞め転職することになった。

 

 そこで現職の会社に一応辞める意向を示し、有休残もあるので退職日をいつにするかという相談に出向いた。すると翌日になって先方の会社社長から、出向いた日付で退職手続きをしたというメールが来た。まあ小さな会社なので総務的なもろもろも全部社長がやっている。

 子どもにいわせると社長は圧が強く、人の話を聞かないと常々言っていた。しかし退職の相談にいったら、その日のうちに退職受理して退職の手続きを行うという。子ども的には当然、即日退職などという話もしていない。聞けば有休残も一月近くあるという。

 即日退職手続き、これではまるで解雇である。ということで昨日は子どもといろいろ話合い、労基署にも電話をした。労基署の相談員は、社員の側から即日退職を申し出る場合もあるが、会社側が有休とかを無視して即日退職手続きに入るのは解雇そのもので、解雇であれば30日前に予告しなければならないという。もう完全にブラックである。

 子どもには、即日退職については同意していないこと、本人の意向を無視して即日退職手続きに入るのは解雇にあたること、労基署に相談して、相談員からもそういう見解をもらったこと、早期退職できるなら月末付けにしたい旨のメールをうたせた。

 その後はひっきりなしに社長から電話をしてくる。子どもはメールに記録も残るので電話でのやりとりは避けたいとも書き添えたのだが、とにかく電話してくる。きけば書面でのやり取りもあまりせず、なんでも口頭で処理するタイプの社長だという。さらにいえば労働契約書も渡すといったきりで4年近くになるのにもらっていない。就業規則もきちんと見せてもらってもいないという。

 まあそういうブラックな会社に入ってしまった子どもにも問題はあるのだろうが、それにしても。

 そこで電話相談した労基署に子どもと二人で行ってみることにした。午後3時近くだったので、労基署は空いていた。自宅から近いということで会社を管轄する都内ではないのだが、相談員は親切に対応してくれた。自分はまあ会社経営していたので、就業規則の改正などで、何度も労基署には行っているけど、子どもは初めてのことでけっこう緊張していた。まあ何事も経験だ。

 今、労基署の労働相談窓口にいるのは、だいたいが定年延長組のひとたちか、リタイアした社労士さんなどだ。対応してくれた相談員も年配の方だった。もっとも多分自分とはさほど年齢は変わらないか。

 こちらの話を聞いたうえで相談員は、基本的には会社の所轄(都内)の労基署でないと対応できないとのこと。そのうえで即日退職手続きは解雇そのものだが、それを受け入れるともう有休等はすべて使えなくなるので、出来るだけ早くに所轄の労基署に行くべきということ。悪質な経営者は、即日退職については本人も了承したと言い張るに決まっているので、撤回する可能性は低いという。

 そこで月曜日にすぐ所轄の労基署に出向くようにしますと言って外へ出た。

 駐車場に乗り込むとすぐにまた子どものスマホに電話がかかってくる。子どもは話をしたくないというので、自分が出た。父親だと名乗ると、メールで月末付けでの退職という希望なのでそれに沿って対応すると社長が言う。恩着せがましく「やってやる」的な感じである。そこで退職について相談しに行ったのに、即日退職手続きに入るとというのはあまりにもヒドい対応であること、今労基署で相談してきたところで労基署の駐車場にいることなどを話した。

 すると先方は、即日退職はお子さんの希望です。それに沿って対応してますという。スピーカーにしているので、横で聴いている子どもは首横に振っている。子どもは即日退職を希望していないし、了承もしていないというと、お互いの祖語ですねとしらっという。こうやって口頭でのやりとりを見解の相違的にスルーして、あとは強引に圧をかけて自分の思った方向にもっていく。特に弱い立場(社員)には、そうやってきているタイプだなと思った。

 そこで即日退職となると、有休残はどうなるのかと聞いてみた。

「有休が20日以上残っているけど、即日退職手続きとなるとそれはどうするんですか」

「有休については私は何も言ってませんが、お子さんもそのことには触れてません」

「話の中にでていないのに、有休残が残っているのに即日退職手続きはおかしい。普通は退職の相談に来たら、何日有休が残っているから退職日はいつ頃みたいに説明するのが会社じゃないのか。少なくとも自分が経営している会社ではそういう対応してきたけど」

「とりあえず退職金もわずかですが出ますし」

「退職金と有休休暇の扱いはまったく別問題じゃないですか」

「有休残には、厳密には違法ですが買上げということも・・・・・・」

「そういうことではなく、有休残とかもあるのに即日退職手続きに入ったというのがおかしいと言っているんですが」

「それはお子さんがそう言ったから、その意向に沿っているだけで・・・・・・」

 結局、ループのように本人の意向に沿って、そんなことは言ってない、お互いの認識の祖語での繰り返しである。

 とりあえずもうこのブラック会社と早く縁を切った方がいいと思い、10月末付けの退職届を郵送するのでそれに沿って手続きをしてくれといって電話を切った。

 一応、いきなり退職届を出さず、退職について相談したのが多分間違いだったのだと思う。紙を提出していればよかったのだが、それなしだったので口頭で即日退職を申し出た、なので受理した、民放上は特に紙(退職届)は必要ない。お互いが了承すれば口頭でのやりとりでも成立する。そういうことを思い切り都合よく会社が利用したのだと思う。

 辞める人間、引き留めもできない社員、だったら解雇と同じ扱いにしてしまう。口頭で相手が了承した、了承したしないは口頭でのやりとりの理解の祖語で押し通す、こういう相手である。

 自分もいちおうは会社経営をしていたこともあるが、まさか世の中にこういうタチの悪い、退職者に対して意趣返しをするようなタイプの経営者がいるとは思わなかった。いや実際のところである。

 

 これから会社を移ろうと思っているみなさんには経験則のお話です。辞める会社に対して恩義を感じたり、いちおう迷惑のかからないように事前に退職日について相談とか、そういうへりくだった態度をとると悪用する経営者が少なからずいるということ。これは労基署の相談員も仰っていたことだけど、早期に辞めたいのであれば、二週間まえまでにきちんと退職日を明記した届を提出することです。退職日については二週間以上先の期日であれば、希望日を書いて提出すればいいし、会社は原則としてそれを受理しなければならないということ。これは民法上の規定です。

 今回のように届の前に相談という形をとると、口頭でお互い了承した場合には届(書面)は必要ないという形で悪用し、退職を実質的な解雇のように悪用する経営者もいるということです。

 しかし世の中にはなかなかハードな中小企業の社長もいる。きけば20年以上やっているのだとか。でも20人足らずの会社でここ数ヶ月で5人くらい退職者がいるとも聞く。 

 さもありなんと思ったりもした。