差し歯が抜けた

 カミさんと二人でラーメンを食べていたら差し歯が抜けた。

 なんとなく違和感を感じたら口の中で麺の間に異物的な感覚。

 やれやれというかなんというか。明日から小旅行に出る予定なのにである。一気に暗い気持ちになる。

 定期的に診てもらっている歯医者はお茶の水にある。先週歯周病のチェックをして、虫歯については別の医師に診てもらうということで来週治療に行く予定。すぐに電話して予定を聞くと、別の医師だが明日10時なら診ることができるというのでお願いする。

 旅行の前なので車で行くとなると、駐車場をどうするかとかいろんなことがある。

 差し歯は上の前歯に三本入れている。いずれも二十代の後半から三十代にかけてだ。かれこれ30年から40年。それを思うと随分ともっているということになるか。今回抜けたところはたしか去年、根に少し病巣があるのできちんと治療した方がいいとは言われていた。でも無理に取ると土台が割れる可能性があるから様子をみようと、そんな話だったか。

 もうだいぶ前になるけど、今回のとは別の差し歯が取れたことがある。そのときはGWの旅行中だったか。たしか東名を走っているときに取れて、急遽高速を降りて静岡の歯医者に飛び込んだんだったか。菊川というお茶が有名なところだったか。GWのあいだのウィークデイで随分と空いていた。おしゃべりな美人の受付の中年女性から、このへんは茶摘みのシーズンになると午前中は暇なのだとかなんとかいろいろ話をしてくれた。今、雑記の記録をみると2009年のことで、もう14年も前のことになるようだ。

ゴールデンウィークと歯の治療 - トムジィの日常雑記

 そこで応急処置的に付け直してもらった差し歯はいまだに健在である。腕のいい歯医者さんだっただろうか。

 今回の差し歯も多分30年以上のものだから、最低でも作り直しになるのだろうと思う。土台な歯根の状態によってはいよいよインプラントになるかもしれない。それを思うと憂鬱になる。歯の病気は本当に憂鬱だ。今回は痛みはないがそれでもどんどんと暗くなっていく。インプラントになればかなりの金額が飛んでいく。前の差し歯が三本、それがこれから数年のうちに全部インプラントみたいなことになれば、それこそ心象的には天文学的な数字である(あくまで心象的に)。

 もはやこの年になって・・・・・・。数年前に奥歯をまとめて治した。土台を残してなので何本かを差し歯にしたのではないか。片側の上の方で一本12万とか、それを2本やり、さらに下の歯も。なにか前進するたばに倍々ゲームのごとくに。

 最後に一本土台が割れたというのでインプラントを進められたが、一番奥だったのでそのまま放置することにした。前歯でもなく一番奥の歯である。多分、あまり使わないし前歯でもないからなくても見映えも関係ない。歯がないとかみあわせの問題で、下の歯に影響が出ますといわれたけれど、年齢的に考えても費用対効果は薄いと判断した。その時懐具合も、それまでにかかった費用を考えると、さらにインプラントはというところで消極的になった。まだ子どもも学生だったしとかなんとか。

 今回はというととりあえず前歯なので、最悪を想定して多少の覚悟は必要だ。

 今のところ痛みはないが、憂鬱である。費用を考えると心が痛い。歯の話になると本当憂鬱である。これは昔からずっとそうだったし、多分これからもずっとそうだろう。

 鏡で見てみると、当然のごとく歯抜けのジイさんは滑稽である。

 滑稽なる憂鬱。

 そういうものだ。