次なる危機は雇用と金利

 今日の朝日新聞の経済欄に「物価高同水準 40年前の社会は」という記事があった。

物価高同水準、40年前の社会は 第2次石油危機末期、授業料・入浴料も値上げ:朝日新聞デジタル (閲覧:2022年11月22日)

 その後半に今後の予測として森永卓郎へのインタビューが載っていた。その通りになるかは判らないが、なかなか興味深い内容だった。メモ代わりに引用する。

次なる危機は雇用と金利

森永卓郎独協大教授

幅広い品目が値上がりする中で、どのように生活を乗り切ればいいのか。経済アナリストの森永卓郎独協大教授は、物価高が続くのはあと半年で、その後の危機に備えるべきだと話す。別の危機とは何なのかを聞いた。

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 いまの物価上昇は資源高と円安による外的要因です。物価高騰が続くのは年内までで、来年中にはマイナスに逆戻りする可能性がある。つまり、歯を食いしばらないといけないのはあと半年くらいだと思います。

 日々の買い物の順序を変えて、安いモノを買って、何を作るか考えるようにすれば出費を抑えることができます。家電など家庭用耐久財もこれから下がり始めるので、無理していま買い替える必要はないでしょう。

 物価高の危機が去ったあとは、雇用の危機、生活全般の危機になります。日本銀行のトップが来春に代わって金融引き締めを始めれば、中小企業の倒産や個人の住宅ローン破産も出てきて、不動産価格が大きく下がる恐れがある。来年は大激動の経済になると見ています。

 デフレになってまず職を失うのは、非正規労働者フリーランスの人たちです。正社員は安易な転職をしないこと。非正規の人は、早めに安定雇用に移ることを考えて欲しい。米国株などへの投資も危ない。為替はいったん潮目が変わると一気に動くので、大きく円高に振れても不思議ではない。もう潮目は変わったと思います。

 住宅ローンも、リスクを避けるには早く固定金利に切り替えた方がいい。変動金利が上がり、返済に耐えられなくなって家を手放す人も出てくるでしょう。(聞き手・北川慧一)

 物価上昇は資源高と円安によるもので物価高騰は年内まで。来年にはマイナスになると。果たしてどうだろうか。ウクライナ情勢が泥沼状態にあり、資源高はまだまだ続くのではないか。とはいえいったん物価高騰が沈静化すると、森永氏のいうように雇用の危機、生活全般の危機が訪れるのかどうか。

 黒田東彦日銀総裁の任期は来年3月まで。次に誰がなってもすぐには今の異次元緩和に手をつけることはないかもしれない。市場は敏感に反応するはずだからだ。とはいえ今のゼロ金利をいつまで続けられるかというと、やはり日銀総裁の交代を節目に政策転換が図られるかもしれない。しかし相当に緩やかな形で行わないと、とんでもないことになるかもしれない。

 それこそ金融引き締めに転じれば、森永氏のいうように中小企業の倒産、個人の住宅ローン破産も出てくるかもしれない。さらに不動産価格の下落も。

 森永氏はここでは触れていないが、異次元緩和が終われば当然株価にも影響が出る。金融引き締めで市場にダブついた金が今は株式市場と不動産に流れている。この金の蛇口がすぼまれば当然のこと不動産価格の下落だけでなく、株式市場も暴落する可能性もある。ただでさえ日銀のETFと年金のGPIFによる大量の株式買い入れによって支えられてきた官製市場であり、実体経済と乖離し続けている。

 不動産と株式の暴落、もしそれが同時に、しかも一気に訪れることになれば、日本発の世界恐慌みたいなこともあるかもしれない。まあそうならないよう日本と各国の政策担当者による調整が図られるのだとは思うけど。

 しかし森永氏の予想するようなデフレ局面は避けられないかもしれない。低金利で金を借りて不動産や様々な投資を行っていた場合は、早目に対処する必要があるかもしれない。そして雇用である。現在の物価上昇局面でも賃金は上がらない。アベノミクスで雇用が増えたといっても、結局非正規雇用が増えただけであり、それは基本的に雇用の調整弁である。不景気、デフレとなれば最初に職を失うのは間違いなく非正規労働者だ。

 さらに雇用流動化を旗印に解雇規制の緩和も検討されている。デフレ局面での企業防衛のため、名目は雇用流動化を理由として解雇規制緩和が行われるかもしれない。そうなれば正規社員も簡単に首が切られるようになる。今、テレビCMでは盛んに転職サイトやヘッドハンティングが喧伝されている。でも、転職して賃金が上がるのはごく一部のキャリアや顧客を抱える人間だけだ。

 森永氏の語る労働者の防衛策は多分正しい。

正社員は安易な転職をしないこと。非正規の人は、早めに安定雇用に移ることを考えて欲しい

 円安局面で資産を円からドルに変える人が多いという。しかし森永氏はこうも警鐘を鳴らしている。

米国株などへの投資も危ない。為替はいったん潮目が変わると一気に動くので、大きく円高に振れても不思議ではない。もう潮目は変わったと思います。

 そしてだ、すでにリタイアしている自分のような年金生活の高齢者はどうするか。多分何もせずじっとおとなしくしていること、嵐が過ぎるのをただひたすら待つこと、それ以外にないのではないかと、なんとなく思っている。