『夜の訪問者』とチャールズ・ブロンソン

夜の訪問者 [DVD]

夜の訪問者 [DVD]

  • 発売日: 2018/05/25
  • メディア: DVD
 

  これもいつ録画したのか判らないのだが、多分BSプレミアムで取ったもの。実はこれも初めて観た。多分、若い頃はチャールズ・ブロンソンものはさほど食指が動かなかったんだと思う。ウィキペディアによると1970年の作品。この年はチャールズ・ブロンソンの当たり年みたいなもので、この映画とルネ・クレマンの『雨の訪問者』とがほぼ同時期に公開されているのでは。さらにいえば例のマンダムのCMも1970年で、日本でチャールズ・ブロンソンのブームが起きていたと。

 『夜の訪問者』は舞台がマルセイユで、釣り船クルーザー)のオーナーで観光客相手の商売をしている主人公が、かっての囚人仲間に襲われる。彼はドイツ駐留のアメリカ軍人で、上司を殴って服役している時に囚人仲間に誘われて脱獄に加わる。しかし仲間が警官を殺害したため一人だけ逃走。仲間は捕まり服役していたのが、再び脱獄し逃走した彼に復讐し、さらに麻薬の密輸の手助けに加わるよう強要する。

 元軍人で釣り船のオーナーという役柄はブロンソンにはそこそこあっているのだが、セリフがフランス語なのがまず馴染まない。ブロンソンほどフランス語があわない俳優もいないのではと思わせるくらい馴染んでない(個人の感想)。武骨、男臭さが売りのブロンソンエスプリというのがちょっとなのだ。そのへんは『雨の訪問者』も同様なのだが、あれはルネ・クレマンフィルム・ノワールっぽいミステリーなのでちょっと違うような感じがする。

 それに対してこの『夜の訪問者』はというと、監督が007シリーズのテレンス・ヤング。そう、この映画のアクションはなんとなく007シリーズっぽい雰囲気で、舞台がマルセイユで明るいリゾート地の雰囲気がなんとなく『サンダーボール~』とかの感じ。映画の中でロングワイディング・ロードでのカー・アクションなんかもあるんだけど、あれもなんか007風である。

 ストーリーは割とハイテンポなのでけっこう普通に観てしまえるのだが、正直しんどい映画といえるし、多分二度は観ないと思う。観た後で速攻消去しましたね。

 俳優陣もなぜか脱獄囚のリーダー格が名優のジェイムス・メイスン。さすがにそれなりの雰囲気出しているんだけど、ちょっと仕事選べみたいな感じか。さらにブロンソンの妻役をリブ・ウルマン。彼女は名女優でたしかベルイマンによく使われていた人。上手い人なんだけど、このアクション映画に彼女必要みたいな疑問符も。さらに脱獄囚の愛人役でブロンソン映画にはきってもきれないブロンソンの妻ジル・アイアランドも出演している。なんか知らないがブロンソンの出演契約にはアイアランドの共演がオプションになっていたのかってくらいに彼女はいつもなんかしら出てくる。

 てなことで久々に70年代アクション・ミステリーを堪能(?)させていただきました。しかしチャールズ・ブロンソン、当時なんであんなに人気があったのだろう。もともとはアクション系、肉体系の脇役さんで、60年代の半ばからはB級映画の準主役ポジションを確保していたように思う。この人を最初に認知したのはバート・ランカスターの『ベラクルス』あたりか。まあ印象に残る悪党っていう定番ポジションだったか。さらには『荒野の七人』、『大脱走』では印象に残る役柄だったと思う。

 そういう風に脇役、悪役というイメージを子ども心に持っていたので、マンダムのCMは面食らった部分もある。でもあのジェリー・ウォレスの歌と同様けっこうはまりましたね。あの曲はギター弾きながら歌ったりもしたし、「う~ん、マンダム」のセリフは学校なんかで言ってふざけていた。

 70年代一大ブレイクしてチャールズ・ブロンソンは国際人気俳優の地位を確立し、特にフランスでの活躍ではアラン・ドロンとの共演映画などもあったと記憶している。80年代もそこそこ主演作もあったようだが90年代になると一気に出演作も減り、2003年に81歳で死去しているという。そうかもう40年近く前に亡くなっている人なんだね。1921年生まれだからもし存命なら100歳ということになる。まあそういうものだ。

 20世紀ハリウッドのちょっと風貌の変わった肉体派、男臭さ、マッチョが売りの性格俳優、アクション俳優というのがチャールズ・ブロンソンを形容する言葉になるんでしょう。そう、そういう役者さんもいましたねという形で記憶され、いずれ忘れられてしまうのでしょう。

チャールズ・ブロンソン - Wikipedia