ポーラ美術館補遺②

 今回のポーラ美術館で観た絵について。

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『白い貝殻』(古賀春江

 たぶん古賀春江の絵で一番好きなのがこの作品。図録の解説ではこの女は空中に浮遊しているらしい。

この白い<貝殻>では、マネキン人形のような顔のない女性が空中を浮遊し、まわりには科学への興味をほのめかす幾何学的なモティーフ、そして貝などががフォト・モンタージュ風に配されている 

  グラフィック・アート的で無機質な科学への傾倒というアプローチで説明されているようだが、自分にはこの女性が海底の底浮遊しているように思える。そこには何かいいしれぬ孤独があるようにも。

 だいぶ前にこの絵を観たときに連想したのは実は西岸良平の『鎌倉物語』に出てくる魔物だった。それは湖水の奥底にいる孤独な魔物で、人間世界にあこがれている。あるとき投身自殺した若い女性に乗り移り、人間社会で生活をはじめ幸福な結婚生活をおくるが・・・・・・。そんな話だったか。絵はこんな感じである。まあ適当な思いつきではあるのだけど。

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のっぺらぼう-『鎌倉物語』(西岸良平

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『あやめの女』(岡田三郎助)

 岡田三郎助は日本の洋画において、美人画の第一人者かもしれない。多分、先輩筋の黒田清輝を凌ぐ画力がある。写実性と絵画表現がうまく融合している。黒田と同じくラファエル・コランに師事したというが、コランの画力に迫るものがある。半身をさらした背中のスベスベ感はアングルやブグローのそれに比するものがある。やっぱり絵描きは画力があってこそかもしれない。

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『樹下裸婦』(満谷国四郎)

 装飾的かつ平面的な写実と異なる絵画表現。ナビ派やシャヴァンヌらの影響にどことなく万葉的な雰囲気もある。油絵に描かれた土田麦僊みたいなと適当に思いつく。

 

 今回のポーラ美術館では展示の妙をつとに感じた。この美しくもそこそこに緊張感のある空間がよく活かされているように思った。

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美しいルノワール

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ルドン、シニャック、スーラ

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マティスデュフィ