兄と市役所に行く

 兄の国保の保険証の期限が切れている。入退院のたびに病院から指摘されているのだが、新しい保険証が見つからない。兄に聞くと70になったので申請しないともらえないみたいなことを言う。健康保険証は基本的に自動更新で新しいものは送られてくるはずなのに。念のため市役所に電話してみると、当然のごとく送っているはずだという。

 市役所では紛失の場合でも、本人が来ればすぐに再交付してくれるというので、会社を半休して兄を連れて行くことにした。駐車場から庁舎まではさほど遠くないのだが、兄はだいぶ足腰弱っているので、歩くとかなり時間もかかる。なので車に積んである妻の車椅子を出して兄を乗せた。しかしまさか7歳上の兄を車椅子に乗せて押すことになるなんて、50年前には思いもしなかっただろうと思う。

 兄は車椅子に乗っていてもきちんと座って体勢を維持できないみたいで、だんだんと体がずれていく。もうそのへんは完全に高齢者、それも80近い後期高齢者みたいな感じだ。まだ70になったばかりなのにと思う半面、様々な病気により老いは加速しているのかもしれないと思ったりもした。

 国民健康保険課では担当の女性が親切に対応してくれて、すぐに再交付してくれた。それから介護保険の係のところへ行き、老人ホームについての情報をもらってきた。といっても特養は介護度が3以上でもないと入れないことと、有料老人ホームについては役所ではあまり情報がないようで、地域の包括支援センターに相談してみてはということだった。こちらで窓口対応したのも女性だったが、割ときちんとこちらの話を聞いてはくれた。でも、言外に何もできませんねという感じもあったか。

 役所を出てから兄の家の近くのファミレスに入って少し早い昼食をとった。ふと兄の顔を見ると眉間のあたりに傷がある。どうしたのかと聞いてみると、月曜日に買い物で川越に出たときに、ファミレスに入ってから低血圧で倒れて怪我をしたのだという。なんでも立ててあったメニューの角で傷つけたという。当然、意識不明になり救急車で搬送されたのだと。

 もう、こういう話ばかりなのである。幸い、いつも通っている病院に搬送されたため、すぐに処置してもらい入院には至らなかったという。こうやって入退院を繰り返し、頻繁に救急車で運ばれる。こういうことがこれからも続くのだろうと覚悟していく必要があるのだろう。とはいえ、こういう話を聞いたり、病院から呼び出されたりということが続くのは、こっちにとっても心が暗く、重くなることばかりでもある。