トッド・ラングレン「ア・カペラ」

A Cappella

A Cappella

  • アーティスト:Rundgren, Todd
  • 発売日: 1990/10/25
  • メディア: CD
 ネットをつらつら眺めていて、トッドのアカペラ作品を見つけて、中古盤の安いやつをアマゾンでポチっとしたらすぐに送られてきた。1000円以下だとすぐに買ってしまうな。CDは今やitunesに取り込んだらお蔵入りになってしまうのに、やっぱり年取ってそこそこに余裕があるからなんだろうかね。とはいえボックスもののウン万円を買っている訳でもなし、2000円以下のものを買ってるんだから可愛いいものだろうという誰にするでもない言い訳。
 しかし、自分が死んだらこの千枚を軽く超えるCDはどうなるんだろう。子どもが聴いてくれればいいけど、やっぱりただのゴミということになるんだろう。
 それでトッド・ラングレンのCDだ。多重録音による一人アカペラ作品。録音は1986年だという。多重録音によるアカペラ作品は我々の世代には山下達郎の「On the corner」が親和的。あれを最初に聴いた時には驚いたものだし、達郎の音、コーラスへのこだわり、才気には感動したものだ。あれは確か1980年だったか。達郎は自分が聴いてきたルーツともいうべき、ドゥ・ワップをアカペラで一人再現した。何かで読んだが、なぜ一人多重録音をしたのか、一緒にやる奴がいなかったからと言っていたようにも思う。
 それに対してトッドはというと、これも音への拘り、コーラスへの拘りがこれでもか、これでもかという感じである。達郎との違いは全編オリジナルによるというところか。少しだけ才気に走り過ぎかなという感じもする。じっくり聴く上では達郎に軍配が上がるかとも思う。トッドは少し音を盛りすぎたというか、重ね過ぎという感じもする。
 しかし中には珠玉ともいうべき一品がある。「Lost Horizon」これはもう名曲。曲が素晴らしく、またコーラス・アレンジもまた究極とでも言えるかもしれない完成度だ。この一曲だけでこのアルバムを聴く、買う価値があるのではないかとさえ思える。トッドやるなと、ほとほと感服した次第だ。この曲、多分トッド本人もお気に入りのようで、ライブでもけっこうな頻度で演っているようだ。YouTubeでライブ映像をいくつも拾うことができる。太ったトッドがカラオケによるコーラスをバックにしっとり歌っている。