- アーティスト:Rundgren, Todd
- 発売日: 1990/10/25
- メディア: CD
しかし、自分が死んだらこの千枚を軽く超えるCDはどうなるんだろう。子どもが聴いてくれればいいけど、やっぱりただのゴミということになるんだろう。
それでトッド・ラングレンのCDだ。多重録音による一人アカペラ作品。録音は1986年だという。多重録音によるアカペラ作品は我々の世代には山下達郎の「On the corner」が親和的。あれを最初に聴いた時には驚いたものだし、達郎の音、コーラスへのこだわり、才気には感動したものだ。あれは確か1980年だったか。達郎は自分が聴いてきたルーツともいうべき、ドゥ・ワップをアカペラで一人再現した。何かで読んだが、なぜ一人多重録音をしたのか、一緒にやる奴がいなかったからと言っていたようにも思う。
それに対してトッドはというと、これも音への拘り、コーラスへの拘りがこれでもか、これでもかという感じである。達郎との違いは全編オリジナルによるというところか。少しだけ才気に走り過ぎかなという感じもする。じっくり聴く上では達郎に軍配が上がるかとも思う。トッドは少し音を盛りすぎたというか、重ね過ぎという感じもする。
しかし中には珠玉ともいうべき一品がある。「Lost Horizon」これはもう名曲。曲が素晴らしく、またコーラス・アレンジもまた究極とでも言えるかもしれない完成度だ。この一曲だけでこのアルバムを聴く、買う価値があるのではないかとさえ思える。トッドやるなと、ほとほと感服した次第だ。この曲、多分トッド本人もお気に入りのようで、ライブでもけっこうな頻度で演っているようだ。YouTubeでライブ映像をいくつも拾うことができる。太ったトッドがカラオケによるコーラスをバックにしっとり歌っている。