大塚国際美術館

なぜ毎年往復1600キロもかけて南淡路に行くのか。出版建保が契約しているためチープにホテルに泊まれる。そこで美味いものを食べ温泉にはいってゆっくりできる。それだけでは苦行のようなロングドライブはできない。南淡路から海を隔ててすぐのところに日本最大級の常設展示スペースをもつ世界の名画を陶板複製画にした美術館、大塚国際美術館があるからだ。
http://www.o-museum.or.jp/character/
ここで系統展示された世界の名画を一日かけて眺め続ける。陶板複製画なので写真に撮るのも自由、触ることさえできる。原寸かつ色褪せないそれを、普通の美術館であれば絵画の魅力を半減させてしまうような照明の影響を受けることもなく見ることができる。
この美術館の魅力に取り付かれてすでに10年近くが経過している。たぶん行った回数も両手ではきかないくらいだ。
この美術館で既知の画家の名画に触れ、また未知の画家とその作品に接する。そしていつかそのオリジナルに触れ感動を新たにする。そしてまたこの美術館を訪れオリジナルに接した記憶を蘇らせる。その繰り返しによって名画への鑑賞を深めていく。
昨年後半に行った六本木新国立美術館でのオルセー展では、大塚国際美術館で見た印象派の名画をこれでもか、これでもかというくらいに目にすることができた。
モネ「かささぎ」
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モネ初期の傑作、一面の雪景色と青みを帯びた影、画面左にワンポイント、黒いかささぎ。雪景色を描いた作品としては絵画史上もっとも有名な作品だ。オルセー展でオリジナルを観たうえで改めて陶板絵画を目にしたとき、思わず目がウルウルとしてしまった。
シスレー「ルーヴシェンヌの雪」

ブーダン「トルーヴィルの海岸」

海岸風景画として著名な作品。想像以上に小さい小品だ。ブーダンはモネに影響を与え彼を屋外写生へと誘い出したことでも有名である。のちにモネは「わたしが画家になったとすればそれはウジェーヌ・ブーダンのおかげだ」と語っている。
ピサロ「赤い屋根、村のはずれの冬の印象」

印象派グループでは年長者でリーダー的存在。後には若いスーラやシニャックの影響を受け点描画にも取り組むなど進取気鋭な部分ももっていた。セザンヌマティスらとも親交をもった人格者でもある。その絵はモネやセザンヌに比べれば凡庸な感じをするが、どこか暖かい画家の眼差しが投影されているようにも思える。
ブルトン「落穂ひろいの女たちの招集」

堂々たる存在感を感じさせる絵。労働に勤しむ農夫たちを詩情をもって描いたミレーに比べるとブルトンのこの絵の押し出しはは凄い。ここにはリアリスムを超えた貧しい農婦たちの実在が強く語りかけてくる。