訪問看護 駐禁に泣く

一週間近く前になる、28日の朝日社会欄に載っていた記事。
http://www.asahi.com/national/update/0127/TKY200801270125.html

訪問看護 駐禁に泣く 容態急変でも規制除外されず
自宅で療養する末期がん患者などを支える訪問看護ステーションの車が、訪問先で駐車違反とされるケースが相次いでいる。06年6月に導入された民間の駐車監視員制度などの取り締まり強化が背景にあるとみられる。現場の看護師からは「現状では違反覚悟で行くしかない」との声も上がっており、全国訪問看護事業協会が実態調査に乗り出した。近く結果を公表する方針だ。(及川綾子)

なんとも心暗くなるニュースである。お役所の縦割り行政の弊害がある意味ここまで突出してしまうのかというのが率直の感想だ。さらにいえば、民間活力導入ともいうべき駐車監視員制度も結局のところ、お役所仕事がそのままより先鋭化されて行われるだけということで、まあ悪しき見本の典型みたいなことだ。こんなことなら民間導入などしないほうがいいんではないかね。
訪問看護厚生労働省が推し進めている、施設ケアから在宅ケアへという国策的福祉政策のある意味根幹に位置するような性格もあるのだ。こういう警察からの嫌がらせ的な対応には断固とした反応があってもよさそうにも思う。現場に問題押し付けてしかとこいているのではないかと思うとむかついてくる。
記事の中では千葉県松戸市の例がリポートされているのだが、駐車規制の除外対象は人命救助や消防活動など「不特定の場所を対象に公共性や緊急性が高い場合」に認められるが、訪問看護は除外されないという。それについての千葉県警の説明は以下のように報告されている。

県警は「(訪問看護は)契約した患者の所に行くもので、不特定の場所を対象としていない。もともと病気の人のところに駆けつけるのは緊急とも言えない」

それでは訪問看護師は、まず駐車場を探すべく時間をかけて、そのために患者の症状が悪化してもしょうがないということか。あるいは看護師を呼ぶべき患者は、自助努力として駐車場を予め用意しておかなくてはいけないということか。
私なんぞは妻が障害者のため、駐車規制除外対象のカードをもらっている。とはいえほとんど使ってはいない。障害者に認められる駐車規制除外対象が、訪問看護師の福祉業務には認められないのか。悪用される恐れがある?それを行ったら障害者だって同じことだよ。容態急変等への対応でも駐禁規制されてしまうようでは、訪問看護制度などやってられないだろう。
結局のところ在宅ケアとかいっても、訪問看護師の数が極端に少ない、そのうえ訪問看護師の待遇もこうした規制対象にされるなど、まあ様々な意味でのインフラが遅れているということなんだろう。
でもこうなったらだよ、全国訪問看護事業協会なるものは、訪問看護対象者、在宅ケア対象者の中から警察官、警察官の家族はお断りくらいのしっぺ返ししてもいいんじゃないの。縦割りの弊害には縦割りで対応しましょうよ。あっ、これに当然民間駐車監視員とかも当然そういう対象にしてみましょう。公然とやるといろいろあるでしょうから、ここは非公然として「今、ちょっといっぱいですぐには看護師の空きがないんです。あっ、そちら警察の方のお父さんですか、それはそれはたいへんですね」みたいな感じ。
基本、これは法改正等も含めた制度的な問題だと思う。訪問看護師の業務は駐車規制の場外対象にするということを法あるいは条例等で規定してしまえばいいだけのことだ。でもね、いちいち法とかにもっていかなくても運営上のことで事足りるんじゃないのかなとも思うわけだ。民間駐車監視員が駐禁のキップ切っても、それが訪問看護師が業務上のことだったら、キップ破るくらいの現場対応があってもいいんじゃないのかなとも思うだよ。そういうのが血の通ったお役所仕事ってものじゃないのかな。