思い出の地らしい美ヶ原高原美術館へ行ってきた。
「らしい」というのは、実をいうとまったく記憶がない。行ったらしいと妻に言われればそういうものかと思うのだが、同じ系列の箱根彫刻の森美術館と記憶が一緒になってしまう。
ただし写真が残っているので、多分行ったことは間違いないようだ。こういうことってよくある話で、まったく覚えていないことがらも、写真とかが出てくると「行った、行った」みたいに記憶が作られていくみたいなこと。
その写真のいくつかこんな風である。


結婚してから今年で30年くらいになる。そしてこれは結婚する前のことなので、おおよそ32~33年前になる。あの時僕は、君は、若かったか。
そのころはアートなるもの、特に彫刻、彫像系にはほとんど興味もなかったので、どんなものがあったかも覚えていない。そこでこんな羊とツーショットしている。

若作りではないが、実はこの時すでに30代の後半である。今も昔も軽薄さが外面に現れている。そしてこの羊は今も健在だ。
時期もよくわからないのだが、芝生が枯れているので秋とか春先とかそんな頃だろうか。標高2000メートルなので、冬は閉館になっているという話らしいし。

「君は変わらないね」
「こっちはすっかり、ジジイになってしまった」
などと言葉を交わすこともなく。
ということで記憶を蘇らせるというか、記憶を改めて作るために訪れた的な場所がこの高原美術館だ。
道中、車がくねくねとしたロング・アンド・ワインディング・ロードを上るにつれ、車の中の温度計が少しずつ下がっていく。関東では30度超えだったのが、さすが信州である。下界でも25~6度となり、それが1度ずつ下がり、美術館の駐車場兼ねる道の駅に着くと、なんと20度を切り18とか19度。天気も曇りのせいか、半袖では正直寒いくらいである。もっとも自分の場合、その後車いす押しての苦行が待っているので、20度切りの気温は楽といえば楽だった。
そうこの屋外美術館はほとんどが傾斜地でできている。それはまあ同じフジサンケイグループが運営している箱根彫刻の森美術館も同じといえば同じ。
受付の女性から、最初に園内の地図を渡されて、車いすで回ることができるところには点線が示されている。ただし、そのコースもかなり斜面がきついですよとは説明される。
実際、回ってみるとアップダウンの連続で、とくに斜面の斜度がかなりキツイ。これって、場所によっては、車いすの場合は介助者2名必要とか注意書きされてしまう感じだ。実際、水戸の偕楽園にはそういう注意書された看板があったりもした。もちろん一人で押して上りましたけど。
さらにこれは車いすコースではないが、当然のごとく砂利道や階段のコースもある。
しかし改めて思う。以前訪れた頃は、まだ結婚する前だし、二人でいて一番楽しかった頃かもしれない。それが30数年後、車いすを押してここを巡ることになるとは。といっても、それでも「昔はこんなに展示作品なかったよね」とか「これって昔あったっけ」みたいなことを話しながら、こうやって再訪できるのは一種の行幸かもしれないとも思ったりもした。
次また来るだろうか。「また来たいね」と妻が言うので、「また30年後かな」と返事をしてから、「それじゃもう100歳だ」と笑いあう。ということでおそらく次回は来世になるのではないかと思ったり。
とりあえず記憶にとどめるためにもろもろ作品群を。

















曇り空の中、少しだけ陽がさしてくる。そして下界の景色も少しだけ鮮明に見えてくる。


