時の面影

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 これもNetflix制作映画で2021年公開という最新作映画だ。しかしNetflix制作独占配信映画の質の高さには本当に驚く。自分は昨秋からの視聴ユーザーだが、長く愛好している人にとってはもうこれは当たり前のことなのかもしれない。

The Dig (2021 film) - Wikipedia

 映画は第二次世界大戦前夜のイギリスで発見された7世紀アングロサクソン時代の船葬墓サットン・フーの発掘にまつわる話。

サットン・フー - Wikipedia

 場所的にはイギリス、サフォーク州で、映画の中でもその州都イプスウィッチという名称が盛んに出てくる。イングランド・サッカーに興味がある者としては、イプスウィッチというとサッカーチーム、イプスウィッチ・タウンFCを思い出すのだが、その場所がロンドンの北東の北海に面したあたりであるというのは、今調べて知った。北海を東に直線で結ぶ地点にはオランダのハーグがある。これはまあどうでもいい話だ。

 サットン・フーのある場所の女地主がエディス・プリティーが初老のアマチュア発掘人バジル・ブラウンを雇うところから始まる。プリティーは長く父親の世話をし、晩婚で一児をもうけるが夫と離別。広大な農地を管理している。考古学に興味があり自分の土地にある古墳に遺跡があると直感して私財を投じて遺跡発掘を行う。そこで雇われたのが父親と共に長く発掘作業を行っているが学歴のないバジル・ブラウンである。

 遺跡発掘はイギリス考古学の定説を覆す大きな発見につながるが、バジル・ブラウンの功績が認められるのは近年になってからだという。考古学もまた学歴がものをいう世界である。

 映画はエディス・プリティーとバジル・ブラウンの交流、アカデミズムの介入、そして船葬墓の発見へと展開するが、考古学の発掘という点では極めて地味な内容でこの映画も静的な物語である。その分、心理描写、心の機微みたいなものが役者の演技に求められる。エディス・プリティを演じるキャリー・マリガンはまだ35歳と若いが、中年にさしかかろうとする、まだ小さな子どもを育てながら不治の病に侵される未亡人の孤独をしっかりと演じている。

 バジル・ブラウンを演じているのはレイフ・ファインズ、あまりきちんと観ていないのだがヒット・シリーズ『ハリ・ポッター』で敵役のヴォルテモート役として有名らしいが、もともと舞台俳優で演技力に秀でた俳優さんである。その他、若い女性考古学者として発掘に参加するリリー・ジェームズも好演している。ただしこの女性考古学者とエディスの従弟のロマンスが挿入される部分はちょっと本筋にあまり関係なく、これって必要なのかなと思ったりもする。

 この女性考古学者のモデルはペギー・スコットといいこの映画の原作小説を書いたジョン・プレストンはその従弟にあたるという。ペギーはイギリス考古学会においても独自の発掘方法を見出すなどかなり著名な人のようで、そういう意味ではこの映画のキーになる存在でもあるようだ。とはいえロマンスシーンを含めて事実とはだいぶ異なる脚色がされてはいるようだけど。

 とにかく静かにして地味な映画だが、けっこう面白く観ることができる。遺跡発掘というある意味単調なテーマでも、きちんとしたストーリーとしっかりとした役者さんの演技があるときっちり成立するものだと感心した。

 監督はサイモン・ストーン。ただクレジットをみると制作責任者アン・シーハン、製作者キャロリン・マークスブラックウッド、エリー・ウッド、脚本モイラ・バフィーニなど女性スタッフが多数参加している。なんとなく主役のキャリー・マリガンリリー・ジェームズを含め女性映画みたいな印象がある。女性映画ってなんなのっていわれるとちょっと定義は難しいんだけど、雰囲気とかそういうところが。