ダイアン・シューア

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 ここのところダイアン・シューアのこのアルバムに大ハマりしている。ことの発端はというと例によってYouTubeの周遊していてスティーヴィー・ワンダーのライブを観ていたとき。ケネディ・センター名誉賞での受賞式ライブの動画だったか。この名誉賞、功労のあったビッグ・ネーム、大スターを功労するもので、受賞者をトリビュートして、ゲストアーティストが受賞者の曲を演奏するというショー。

 大統領が臨席する厳かにしてけっこうファンキーなライブが繰り広げられる。ここ最近だと圧倒的にオバマ夫妻臨席というのが多い。直近はどうかというと、アーティスト側からの反対の声が多くトランプは出席しないということらしい。

 でもってダイアン・シューアのパフォーマンスはというとこんな感じである。


Diane Schuur performs at Kennedy Center to Honor Stevie Wonder

 正直ぶっ飛びものの圧巻なパフォーマンス。本当にこの人歌が上手いなと思った。そしてこのジャズ・ボーカリストが盲目ということでスティーヴィー・ワンダーの名誉賞ライブに呼ばれることには、ちょっとだけ違和感を感じた。

 実際のところ、この人はキャリアの中でもレイ・チャールズホセ・フェリシアーノとの共演とかもあったりする。盲目同士の共演みたいな本当にベタな紋切り型の発想なのがとても残念。

 この人は盲目であるとかいう以前に本当に上手な、稀代のボーカリストだと思う。コトバンクによるプロフィールをそのまま引用。

1953.12.10 -

米国歌手,ピアノ奏者。
ワシントン州オーバーン生まれ。
生まれて間もなく失明。9歳の時から歌を、16歳で作詩作曲を始める。マウント・フードコミュニーティ・カレッジで学んだ後、1970年代中頃カントリー&ウェスタン系のシンガーとしてレコードデビューを果たし、TV番組のオーディションにも合格。’79年自己のバンドでモンタレー・ジャズ祭に参加し、’82年ゲッツと共演する機会を得る。デイブ・グルーシン、ラリーローゼンと専属契約し、’87年カウント・ベイシー・オーケストラと共演する。

出典 日外アソシエーツ「20世紀西洋人名事典」(1995年刊)20世紀西洋人名事典について

  1953年生だから今年68歳。もう大御所みたいな存在だね。スタン・ゲッツに見出されたというのは初耳。この人とかをまったく知らないかというとそんなことはなく、多分80年代の後半くらいにちょっとは聴いたことがあると記憶している。ちょうどその頃、新進気鋭女性ボーカリストみたいの流行った時期だった。

 記憶を巡ってみると多分、80年代に新生ブルーノートが復活して新しい若手スターが台頭した。その中で女性ボーカルの新人としてダイアン・リーブスやカサンドラ・ウィルソンがスポットライトを浴び、少し遅れてノラ・ジョーンズとかが出てきた。ちょうどその頃にダイアン・シューアも期待の若手みたいな形で取り上げられたんだと思う。

トーキング・バウト・ユー

トーキング・バウト・ユー

 

  このちょっとお洒落なジャケットのアルバムはよく覚えているし、多分レンタルCD借りて当時だとまだカセットにダビングしてウォークマンとかで聴いたように記憶している。盲目の女性ボーカルとはその時に知ったけど、そういうの別にして歌上手いな、若くてテクニックがある凄い人たちが次々に出てくるなと思ったもんだ。

 しかし、今調べてみるとダイアン・リーブス(1956年生)、カサンドラ・ウィルソン(1955年生)。みんな自分と同世代でやんの。そしてダイアナ・クラール(1964年生)、ノラ・ジョーンズ(1979年生)。この二人はもう完全に21世紀の人で若手も若手という印象だけど、56歳と41歳はもう中堅以上だな。

 ジャズはもう故人となったジャズ・ジャイアントが多いから大変だと思う。もうすでに巨匠の域にあるウィントン・マルサリスだっていまだにトランペット 小僧だと思っている人多いと思うから。

 話を戻そう、このダイアン・シューアのアルバム「PURE SCHUUR」である。1991年発表の作品で、ダイナ・ワシントンへのトリュビュート・アルバムだという。全体的に当時流行ったアダルト・コンテポラリー風のアレンジの中でダイアン・シューアののびやかなボーカルが広がる。収録曲は以下のとおりだ。

01 ノウバディ・ダズ・ミー
02 オール・コート・アップ・イン・ラヴ
03 ディード・アイ・ドゥ
04 縁は異なもの
05 タッチ
06 ベイビー・ユー・ゴット・ホワット・イット・テイクス
08 アイ・クッド・ゲット・ユースト・トゥ・ディス
09 ユー・ドント・リメンバー・ミー
10 ホールド・アウト
11 ウィ・キャン・オンリー・トライ

 1曲目の「ノウバディ・ダズ・ミー」から一気に引き込む。なんかもう聴いているうちに自然に目頭が熱くなってくるようなエモーショナルなボーカルである。


01 Nobody Does Me

 そしてこのアルバムでも自分的には一番のお気に入りの4曲目「WHAT A DIFFERENCE A DAY MAKES(恋は異なもの)」。この曲は1959年にダイナ・ワシントンがヒットさせた曲でもあり、ダイナ・ワシントンへのトリビュート・アルバムの白眉となる曲だ。


What A Difference A Day Makes

 この曲は本当に聴いているうちに目がうるうるとしてくる。どことなく懐かしさを感じさせる曲調。ダイアン・シューアのボーカルは、クールとエモーショナルを同居させ、のびやかに歌い上げる。途中でピアノと彼女のスキャットの掛け合いも見事だ。クールさと重厚さ、時に若い娘の嬌声のような華やかさもありと、この人の声は自由自在だ。この若々しい華やかさは、往年のエラ・フィッツジェラルドにも通じるような気がする。彼女もまた七色に変化するボーカルだった。

 とにかくこのアルバムはあたりだと思う。長く愛聴すると思う。